この春、教師になりたくて、家庭教師と塾でアルバイトを始めようとしている君へ。
この春、教師になりたくて、家庭教師と塾でアルバイトを始めようとしている"君"へ。
君は、かつての僕です。
僕は、大学までは教師になるつもりでした。
少しでも早く、黒板の前で上手に授業ができるようになりたくて、
未来の自分の生徒から信頼を得られるようになりたくて、
教員採用試験で不安なく模擬授業できるようになりたくて、
塾のアルバイトを大学1年生から4年生まで夢中でやって、1,000人を超える生徒に対して授業をしました。
僕自身は授業スキルが上がったり、人前でしゃべるのが少しうまくなったり、たくさんの生徒から感謝されたりと、いまでも忘れられない経験や出会いがありました。
だけど、いまの世の中の動きや、自分の周りの尊敬する教育者の方々と話した際に、もっと違う大学生活の過ごし方があるかもしれないと思っています。
いま、君には自分の通っていた塾や家庭教師の会社から、アルバイト募集のDMやメールがきていると思います。
そんな時期だからこそ、これから家庭教師と塾でアルバイトを始めようとしている、かつての僕に向けた「別の道」をそっと差し出すメッセージを書きたいと思います。
いま、教育業界で起きていること
教師になりたかった大学1年生の僕は、「教育業界でこんなことが起きている」なんてことは、正直全く知らなかったんです。
教師という職業が自分に向いているという少しばかりの不安の入り混じった想いと、この大学で教職課程を履修すれば教師になれるという事実だけがわかっていました。
君もそうかもしれないね。
だから、本当に本当に少しだけ、書いておこうと思います。
いま、教育業界で起きていることを。
①:個別最適な学びと協働的な学びの実現
今年から始まった新学習指導要領では,「個に応じた指導」を一層重視(高校は22年から)していきます。
「個別最適な学び」が「孤立した学び」に陥らないよう,探究学習や体験活動等を通じ,子供同士であるいは多様な他者と協働する「協働的な学び」を充実させていくのが、文科省の方針です。
大学入試も「思考力」や「知識を活用する能力」を重視する形に変化してきています。 AO・推薦入試の割合は全体の45%を超えてきており、変化の兆しは明らかです。スマホ持ち込み可の入試も始まっています。
②:ICT環境の整備の完了
「GIGAスクール構想」の名の下、「1人1台端末」と学校における高速通信ネットワークの整備が推進されました。なんと、小中学校では今年度中にタブレット配布完了。学校にWi-Fiも通るようになります。
※高校は方針を保護者負担(BYOD)で検討中。
一方で、タブレットを配った後に「どう活用するか?」といった根本的な業務改革は、多くの学校で進んでおらず、ICT支援員などの外部人材を活用をはじめています。ここはまだまだこれからといった感じ。
ちなみに、中国は技術を使った教育が世界的にも進んでおり、一斉講義はオンライン・進度や個性に合わせた学びはオフラインで実施していたりします。(下記の動画が中国の田舎の学校でおもしろい。)
③:旧来的な学校を代替する学校の台頭
様々な公教育に対するオルタナティブな学びの場が台頭しています。ごく一例ですが、軽井沢の風越学園や、日本中/世界中を旅をしながら学ぶインフィニティ国際学院、子どもの個性を重視するオランダのイエナプランスクールに通わせるために、移住までする親子も出てきています。
通信制高校では、約5年前にKADOKAWAが設立されたN高校/S高校がは今年約1.5万人の入学者数を記録しました。ARやVRを取り入れた授業に加え、麻生太郎氏による政治の授業や、村上ファンドの村上氏による投資部の活動など、個性的な活動が多いのも特徴です。
④:持続的で魅力ある学校づくりの起こり
N高に1.5万人の入学者がいるということは、それだけの人数の高校生が地元の高校に通わなくなった、ということ。
人口減少に加え、こういった外圧も相まって、全国で高校の統廃合が進む中、廃校寸前の島根県隠岐島前高校から、地域の大人も巻き込んだ、その土地ならではのカリキュラム設計など、地域と連携した魅力的な学校づくり(高校魅力化)が進んでいます。
また、高校普通科にも改革が起きています。「普通科」を、新たに、「学際融合(仮称)」と「地域探究(同)」に、早ければ令和4年(2022年)春にも再編を予定。普通科が、再編されるのです。すごい時代です。
⑤:連携・分担による学校マネジメントの開始
こんな多様な変化がある時代だからこそ、学校の中だけで変革を起こしていけません。
外部人材や専門スタッフ等,多様な人材が指導に携わることのできる学校の実現や、学校・家庭・地域がそれぞれの役割と責任を果たし,相互に連携・協働できる体制を目指しています。
それらの一部として、部活動の民間委託による外部化などの取組の議論が進んでいますね。
どうだろう?
僕らが受けてきた教育現場とは大きく変わっていくような、色んな変化が起きていますよね。
さて。ここまで読んでもらった君に、3つの質問をしたいと思います。
Q1:"教室の中で、上手に教える教師"になりたいですか?、"教室を広げて、一緒に学ぶ教師"になりたいですか?
僕らが受けてきた教育は、教室の中で上手に教えてもらう教育でした。
それをやりたいのは、わかる。とてもわかります。
だって、イメージが具体的に湧くから。自分が受けてきたから。
でも、ここまで書いてきたように、「それ"だけ"じゃダメだ」と、多くの人たちが考え抜き、多くの改革が進んでいるのです。
与えられた問いに答えられるようになるのではなく、一緒に問いをつくって、それに対して自分たちなりの納得解を創っていく時代になったのです。
僕だってまだ若いけど(笑)、僕の受けてきた学校生活と、これからの生徒達の学校生活は、全く違うものに変わっていこうとしているのです。
わかるけど、私はそういう先生になりたい?
残酷だけど、本気でそう思うなら、スタディサプリの講師や塾講師の正社員になればいいと思います。そういう職業は決してなくならないと思いますし、素敵な職業です。
だって、教師になろうとする人たちが、「変わる前の教育における教師」を目指して頑張ってしまったら、せっかく変わっていこうとしている教育のあれこれを、前世代に押し戻すことになってしまうかもしれません。
それは、本当に子どもたちのためになるのだろうか?
教師になろうとうする大人側から、変わっていきませんか?
経験したことのない「教室を広げて一緒に学ぶ体験」を、僕らが学びましょう。そして、胸を張って、子どもたちに「一緒に学ぼう」って言いましょう。
ごくまれに、スタディサプリの講師も、校長も、地域との懸け橋もやっているような超人みたいな方もいらっしゃります。取組やキャリアだけじゃなく、人格もステキで、本当に尊敬しております。こういう人に会ってみても面白いかもしれませんね。
"教室を広げて、一緒に学ぶ教師"になりたいなら、机の上でも、黒板の前でもなく、たくさんの人の前に出ていって、まず僕ら自身が学びましょう。
君も、自分の経験したことのないステキな教育現場をつくっている先生たちに会いに行きませんか?
Q2:自分の周りに、この人を自分の将来の生徒に会わせしたいと思う友人・先輩は、どのくらいいますか?
よく教師に対する否定的な言葉として、「教師は、社会にも出たことがないくせに…」的な言葉がありますよね。
僕は、この言葉が嫌いです。
そういう人たちには、「毎日生徒40人と向き合ったこともないくせに…」などとカウンターするといいでしょう。笑
生徒たちにとって、毎日話を聞いて、見てくれている誰かがいるということは、まぎれもない価値なのです。
それは、調査で明らかになっています。
コロナ禍での臨時休校期間中の立教大学の調査ですが、学習時間に大きく影響した要素は「教員とコミュニケーションをとれていたかどうか?」でした。ICT端末やオンライン授業をやったかどうか?ではなかったのです。
この意味において、教師は子どもたちを理解するプロです。
ただ、「教師は、社会にも出たことがないくせに…」という人が話す通り、教師が過度に"やりすぎてしまう"ことはあるのも実態です。
自分で全てやりすぎてしまうんです。
教師は、生徒達のことを一番理解しています。
しかし、教師は社会のあらゆることを理解してはいません。
だけど、生徒から相談を受けたら、その生徒のことを想って、調べて、ネットに書いてあることを自分の体験のように話してしまう。生徒を想うが故です。
でも、ここまで読んでくれた君なら、わかっているはず。
生徒の心を動かし、目を輝かせるのは、リアルな体験話だってこと。
だって、教師の言葉で覚えているのは、授業の間で話してくれた学生時代の失恋話だったり、その教師らしさがにじみ出るエピソードだったでしょ?
僕の尊敬する教育者は、「わからない」「知らない」と生徒に言います。
そこから、「じゃあ、誰のところに聴きに行こうか?」と生徒と相談するんです。そして、その誰かが生徒に対して、自分もわからない話をしてくれる。
それは、全く恥ずかしいことではないです。
むしろ、教師と生徒が真に対等に一緒に学び合う協働的な空間が、そこにはあるはず。
そんな時に、あなただけの「呼びたい人図鑑」があると、教師になったとき、もっと生徒が目を輝かす瞬間づくりのサポートができるはずです。
Q3:大学生にあって、教師にないものは何でしょうか?
これは、「時間」です。
教師だけの話ではないですね。
新しいことを学ぶには、多くの時間が必要になります。
都会で育った自分が、地域に根差した教育環境づくりに携わるにしても。
いろんな立場・地域・業界の「呼びたい人図鑑」をつくるにしても。
教壇に立った時に話せる自分の失敗談をつくるにしても。
これから大学生になる皆さんは、まだイメージできないと思いますが、大学生は、時間が本当にたくさんあります。
この時間が多大にある時期だからこそ、できる経験があります。
ここまで読んでくださったからには、君にも有り余るほどの、自分の時間の使い方を今一度考えてみてほしいです。
それでも、決めるのは、君だ。
ここまで塾に対して暗に否定的に書いてきました。笑
(塾で働いている人たち、ごめんなさい。)
しかし、最初に書いた通り、塾でのアルバイトから得られることは、とても多いです。
それらに対して、
本当にそれは、あなたの未来の教室にいる生徒たちのためになるのか?
自分の過去の体験を、未来の生徒にも過度に投影していないか?
いま、大学生の貴重な時間をつかって自分がやるべきなのか?
ということを、考えてみてください。
そして、誰に何を言われても、君が自分で決めてみてください。
教師は、教師になるまでの多くの道筋が、誰かに決められています。
自分で決めなくても、教職課程の授業を受け、教育実習を行い、試験を受けると、配属されるのですから。
だから、自分で選べる時間の使い道くらいは、自分で決めてみましょう。
そして、自分で迷って悩んで、決めて、自分の学生生活の過ごし方を考えてみてください。
ここで大事なのは、一度決めてもやめたり、やり直したり、すればいいということです。
部活や学校は、一度決めたら辞めてはいけないようなムードが漂っていますが、サークルやボランティア、アルバイトはいくつもやって、いくつも辞めればよいのです。
その中で、自分のしっくりくる過ごし方を考えましょう!
もし、君が札幌にいるなら。
そして、もし、君が札幌に居て、困っているのなら。
僕で良ければいつでも相談に乗ります。オンラインでもオフラインでも。
道内外関わらず、様々なボランティアやアルバイト、学生団体などを紹介できると思います。ぜひ、気軽にDMをください!
Twitterのアカウントは、「@yshimamoto0326」です!
札幌では、4/18(日)に、下記のような合同新入生歓迎会も行う予定です。
こちらの参加も、まだお受けしていますので、お待ちしております!
過去の僕と同じような少しでも多くの"君"の手許に、こういった想いが届くといいなぁと思い、文章をしたためました。笑
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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