[ 木村さ〜〜ん!をより楽しむ ] 木村拓哉さんと「平常心」。剣道でいう平常心とは何だ?
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木村さんと平常心
木村拓哉さんの YouTube チャンネル「木村さ〜〜ん!」のなかで,木村さんが「平常心」という言葉についてこんな話をされています。
【木村さ〜〜ん!】準備運動で汗ダク!木村拓哉 真夏の稽古![視聴する]
これから一緒に剣道の稽古をする子どもたちにも,「平常心」という文字の抜かれた日本てぬぐいをプレゼントする木村さん。なぜ,木村さんは「平常心」という言葉を大切にするのでしょう。この記事では,「平常心」という言葉が剣道ではどのように使われているのか紹介します。この記事をお読みになったあと,もう一度,木村さ〜〜ん!の剣道回をご覧になられたら,またちがった感想をお持ちになるでしょうし,より木村さんが何を言おうとされているのか,新しい発見があるかもしれません。
なぜ剣道をするのか
剣道の理念は,昭和50年(1975年)に制定されました。剣道の理念とは,剣道をするとき,何を大切にするべきかということです。なんだと思われますか?
実は「人間形成」が目標なんです。「剣道は剣の理法の修練による人間形成の道である」とされています。剣の理法というのは難しい言い方ですが,刀の正しい使い方と,心の正しい使い方のことをいいます。このふたつを通して人格の形成を行うというのが剣道の目標なんです。これが他のスポーツと大きくちがうところです。なんだか格好がいいなと剣道をはじめることもあるし,勝負が面白くて剣道にのめり込むこともあります。しかし,何のために剣道をしているかというと人格の形成を行うためということなんです。
どうして剣道で平常心が大切なのか
剣の理法にはふたつあり,ひとつが刀の正しい使い方,もうひとつは心の正しい使い方だということは,さきほど言いました。簡単に言い換えると,技と心ですね。技や体の使い方といった技術を習得するときには,正しく心を使うことが大切だと剣道では昔から言われています。難しい言葉で事理一致と言ったりします。
それでは正しく心を使っている状態とは何か。それが,木村拓哉さんが大切にしている「平常心」なんですね。平常心というと,大舞台に立っても,あがったりしない,なにごとにも動じない強い心のことかなと思いますけど,剣道ではちょっとちがうんですね。ここのことがわかると,木村さんがなぜ平常心を大切にしているかということもよく腑に落ちるのではと思いますので,くわしく説明します。
一般にはあまり知られていませんが,剣道を含めた武道の武芸論に「不動智神妙録」という伝書があります。この本では,平常心は動じない心ではなくて,何事にもとらわれない心だとあります。竹刀で面を打突するにも,いろいろな体のうごきがスムーズに連動していなければなりません。常に自分の体の動きに敏感でなければいけませんし,同時にそれにとらわれすぎてもいけない。技術的に向上していくためには平常心が大切になります。対人稽古になると,自分は相手を打ちたい,けれども相手には打たれたくないといった自分勝手な気持ちもできてきます。そのため,怖くて動けなくなったり,打とう打とうという気持ちを相手に利用されたりしてしまいます。技術の向上のためには,なにごとにもとらわれない,「平常心」が不可欠なのです。
木村さんが剣道で大事にされている言葉に「平常心」をあげられるというのは,木村さん自身,剣道をされているときに,技術を習得するには,この心のはたらきが非常に大切なことを体感されていたからでしょう。
日常生活にも生きる剣道
動画のなかで,平常心という言葉が抜かれた手ぬぐいを子どもたちに渡しておられた木村さん。そのとき。子どもたちに「今はわからないけど(大人になるときには,きっと,この言葉の大切さがわかるよ)と言われていました。木村さん自身も厳しい芸事の世界で修行し,頭角をあらわし,活躍を続けてこられています。剣道だけではなく,その後の長い芸事の修行のなかでも,オンリーワンになるには。平常心,この心のはたらきが非常に大切なことを意識されてきたのではないかと思います。
何かで一番であるひとは,世界にひとりしかいません。剣道で日本一であるひとも,ひとりしかいません。それを目指すことはとてもすばらしいことです。けれども,それがゴールであったら,剣道をしているひとは,日本一である人以外,誰も自分を誇ることができません。勝ち負けはわかりやすいですね。一方,人格の形成はわかりにくけれども,ひとの成長をささえる大切なものです。ひとは自分の好きなことにしがみついて,生きていくしかありません。その好きなことがものになるかどうかは,平常心というこころのはたらきがとても大事なのではないかと考えています。
改めて思うに,木村さ〜〜んの剣道回には(もちろん,他の回もそうですが)とても大切なメッセージがあるように思います。
より学びたいひとに
剣道をしていなくても,日常の生活に役立つ考えが書かれています。おすすめ。
池田 諭 (翻訳)「沢庵 不動智神妙録」 (タチバナ教養文庫)
木村拓哉さんの魅力の源泉はどこにあるのかを考察しています。
武士の一分の考察もあります。
太田省一「木村拓哉という生き方」(青弓社)
剣道の所作について歴史的経緯などを踏まえてまとめてあります。
剣道をしているひとは必携でしょう。
馬場武典「剣道の礼法と作法」(体育とスポーツ出版社)
わかりやすく剣道具の置き方,付け方,持ち運び方などがまとめてあります。
剣道の稽古も段階的に系統立てて整理してあり,参考になります。
湯野正憲・岡村忠典「剣道教室」(大修館書店)
剣道の歴史,着想が詳しく書かれています。
残念ながら,本屋さんにはないようです。古本屋さんでみつけたら,買っておいて損はないです。
坪井三郎「やさしい目で見る剣道教室」(永岡書店)
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