[ 読了 ] 「世界はまさしく地獄にほかならない。そして人間は一方ではそのなかでさいなまれている亡者であり,他方では地獄の鬼である」(梅田孝太「ショーペンハウアー」 講談社現代新書))
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A. ショウペンハウエル (著)「自殺について 他四篇」 (岩波文庫)
ショーペンハウアーによれば,わたしたちには世界の本当のありようを知ることはできない。わたしたちが知っているのはわたしたちが作り上げた世界だけで,本当の世界ではない。その世界のなかで私たちはただ生きようという意志だけもって,生きようという身体だけをもって生きているという。
恐ろしいことには,わたしたちは世界の本当のありようを知らないから,生きる意味も知らずに,ただ生きよう生きようとのたうち回っている。
このショペンハウアーの入門書で書かれていることは,人生は根本的に苦悩であるということである。多くの自己啓発本であれば,その苦悩をどう取り除くかというはなしになるが,ショーペンハウアーもショペンハウアーの入門書である本書も,そんなことは考えない。わたしたちが人間であるからこそ,苦悩があり,苦悩は避けられない。
できうることは,生きる意志を否定することだという。
ここまでが本書「今を生きる思想 ショーペンハウアー 欲望にまみれた世界を生き抜く」 (講談社現代新書) の内容である。
梅田 孝太 (著)「今を生きる思想 ショーペンハウアー 欲望にまみれた世界を生き抜く」 (講談社現代新書)
ここからが,本書を読んで思う疑問。
ショーペンハウアーは三哲のひとりにブッダを挙げている。ブッダの思想に共鳴するところがあったのだろう。たしかに,ブッダも似たようなことを言っている。しかし,ブッダはショーペンハウアーよりも,もっと謎めいている。
金剛般若経がある。そのなかでブッダはこういう。
中村 元 (翻訳)・紀野 一義 (翻訳)「般若心経・金剛般若経」 (岩波文庫)
ブッダだったらこういうだろう。
ショーペンハウアーは金剛般若経を本当に読んだのだろうか?
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