限界芸術論と鶴見俊輔
...鶴見の議論において「民衆」や「大衆」は、初期の研究における「ひとびと」という概念から連続している。「ひとびとの哲学叢書」と銘打っている『夢とおもかげ』は「思想の科学研究会」における大衆文化研究の最初の成果であると考えられるが、この「ひとびとの哲学」とは、鶴見和子によれば「思想の科学」に「はじめて雑誌にあらわれるのが、1946年12月号」であり、それは「日本の民衆思想にどうやって近付くか」という雑誌の方向であるという(『思想の科学会報』)。そして『夢とおもかげ』のころの「大衆娯楽」という対象は、88年に刊行された『戦後日本の精神史』における鶴見の「民衆娯楽」や『戦後日本の大衆文化史』においても反映されていると見ることができる。
この『夢とおもかげ』が再編集された『流行歌の秘密』に収録されたのが「流行歌の歴史」なのである。
『限界芸術論と現代文化研究』より
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