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「劉森記麺家」の撈麺@香港_深水埗

 香港はすっかり様子がかわってしまった、という人がいる。そのいっぽう、集英社の女性編集者にして、ヘヴィな旅好きが高じて何冊も著作を出版してしまった、ひとりっPさんのように、香港はこれくらいでかわってしまうほどやわなトコロじゃない、いまもかわらずダイヤモンドなんだから、とおっしゃる人も。うーん、どっちなんだ、ずっと心のどこかにひっかかりがあるような状態だった私も、この2月の連休を利用して香港にきている。
 2019年以来の香港、おもえば世の中も個人的にももいろいろあった5年間だったなあ。自分についていえば長く勤めた出版社を定年退職し、第二の仕事をしている。香港にくるのは何回目だろう、10回を過ぎるころ数えなくなって、たぶん20回くらいかなあ。今回はせっかくなので(?)カオルーンシャングリラに泊まることにして、中心部からすこし離れた街々をぶらぶらするのを日中のアクティビティにしようと考えている。
 昨日到着して2日目の今日は、尖沙咀からMTRですこし北上、深水埗、油麻地あたりに出没した。小吃のターゲットは、調べてあった深水埗の自家製麺がうまいという人気店「劉森記麺家」だ。昔ながらのかわらない風情いっぱいの街並みを歩き、通りに面した古くて雑然としたビルの窓から洗濯物が満々に突き出ているのを見上げたりしながら麺家に到着。お店はそこそこの広さで、内装もまあきれいだが、とにかく混んでいる。窮屈なチビの丸テーブルに案内されて当然相席。待たされるよりいいか。メニューがわりと多くてすこし迷ったが、人気のえび撈麺にすることにし、さらに欲ばって牛腩牛筋ものっかっているのをチョイス。撈麺は香港では一般的な「汁なしあえ麺」でプチプチのえび卵と合わせるのもよくみかける。食感がよくてけっこうクセになる系だ。細いけどコシがある独特の麺と具がばっちりなじんでいて名店劉森記さんのお味に大満足。
 MTRで移動しつつ深水埗、油麻地あたりを数時間歩いた。このあたりは、露天にところ狭しと商品を広げた店や、乗りつけたクルマでそのまま商売している店や、大きな生鮮食品市場があったり、台所道具屋街があったりで、それはそれは雑多でエネルギッシュなエリアである。あちこちから大声の広東語が聞こえてくる。のみならず、インド系や中東系と思われる人々もたくましく商売をされている。小さなローカルフードの店々がびっしり軒を並べていて、店の外の赤いプラスチックの椅子で食べている人もいる。これこれ、これが私が好きな香港だ。歩くうちこちらの気分まで上がって、62歳もすこし元気になった気がする。香港はちっともかわっていない。本当にダイヤモンドのままだった。
 何回かまえの旅で作ったオクトパスカードを持参した。SuicaやPASMOのように、乗り物やコンビニ、ドラッグストアなどでも使えて便利なやつだ。最後の利用から3年で使えなくなるが、MTRの窓口で復旧してくれると、ひとりっPさんの本に書いてあった。尖沙咀駅の「客務中心」に朝さっそく行ってみる。簡単に使用可能になり、うれしいことに56元ばかり残高があった。なんだか古い友人にひさしぶりに会ったような気がした。

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