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「新三浦」の鶏の水だき@博多

 日本の国会議員の行動パターンを昔から「金帰火来」(きんきからい)などという。金曜日に選挙区である地元に帰って火曜日に東京に来る、という意味合いで、週末には地元での活動に勤しむことになる。このふだんの政治活動が、いざ選挙のときにモノをいうのだそうだ。現在の内閣のみなさんは、どうもこの地元の活動でなにやら説明しにくいことをやってらっしゃるかたが何人かいらっしゃったようだが、いまはその話はおく。
 会社員でなくなって時間に余裕ができたのですこし長めの旅をしたいと思い、月曜日に目的地にでかけて金曜日に東京に帰る(月行金帰?)というパターンはどうだろうと考えた。ひとつの土地で、ある週の平日を通しで過ごしてみることで、その街の素顔のようなものを感じることができるのではないかという狙いだ。第一弾として福岡に来ている。繁華街をはずして比較的静かなエリアのホテルに部屋をとって、市内と周辺を見て歩く。
 日中、天神のあたりを歩くと平日にもかかわらず大変な人出とにぎわいである。地方の県庁所在地でときに見かけるような、いわゆる中心部の空洞化はまったく感じられない。ハイブランドを1Fに配置したいくつもの商業モールが競うようにそびえている。滞在中読んだ新聞の地域面によれば、再開発に対して行政の優遇措置もあるらしく、新たな大型施設と思しき工事現場も目立つ。このエネルギー溢れる感じは、私には香港のコーズウェイベイやシンガポールのスコッツロードなどを思い出させる。アジアの大都会だなあと思う。夜は中洲のにぎわいもチェックしてみる。
 さて、月曜日の夜、お店選びでおおいに悩む。ここでしぶめに狙いすぎて失敗すると、初日だけにダメージが大きい。さんざん迷った末、安全策をとることにする。老舗の「新三浦」が天神のビルに出しているブランチで鶏の水だき。電話を入れて、1人でもオーダーできる水だきのセットメニューがあることも確認する。ふう〜。
 予想通り満足の味だった。最初に小鉢が出て、地元の焼酎を調子よく飲んでいると鍋が登場。白濁した鶏のスープに鶏肉がゴロゴロ入った状態で出てくる。野菜や豆腐はどうぞご自分のペースでということで、これは具合がいい。コラーゲンたっぷり、老舗の安定の味を堪能させてもらった。
 酒器と別にぐい呑みくらいの食器があって、サラサラの塩と薬味の青ネギが添えてある。途中でも最後までいつでもお好みの味付けでスープをどうぞということなのだが、これが酒に合う。はまってしまってスープと焼酎を交互にエンドレスで飲んでしまう。いかん、雑炊の分がなくなってしまう。自分にブレーキをかける。
 考えてみれば私は、ビストロなどでもでスープをとってソーヴィニヨン・ブランを飲むのが好きだ。うーむ、お酒のアテに汁もの、すこし追求してみたいテーマである。

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