「大関」のおでん@金沢
2015年に北陸新幹線が金沢まで開業して、東京から金沢まで「かがやき」に乗れば2時間半でいけるようになった。それまでは空路、小松空港を利用するのが一般的だったので、東京に居住するものにとってはずいぶん身近になったと思う。コロナ禍までのインバウンド需要で市内各地の再開発もすすみ、お城や兼六園側に比べると地味だった金沢駅の港側の駅前にも素敵なハイアットセントリックがオープンしたりしている。
観光地としてとても人気が高く、旅番組などで取り上げられる頻度も高い。犀川と浅野川が市の中心部ではほぼ平行してゆったりと流れていて、清涼なイメージを醸し出している。その中心部に、金沢城、兼六園、21世紀美術館、四高記念公園などがあり、広い面積全体で大きな公園のようになっていて、なんとも贅沢な街だと思う。四高は「しこう」と読む。旧制高校のなかでも8つしかないナンバースクールのひとつだが、見事なレンガ作りの校舎が保存されていて、記念館としてさまざまな展示がなされている。見てまわると戦前のエリート教育の馥郁とした香りを感じて胸がいっぱいになってくる。井上靖も鈴木大拙もここで学んだのかと思う。
金沢はかつて担当をさせてもらった、年長のある作家さんが近年居を構えられて、「ごちそうするから遊びにおいで」という幸運に恵まれて訪れたのが最初で、その後数回行っている。金沢城からすぐのところに香林坊の繁華街があり、ここを中心にたいへんにレベルの高い飲食店が多い。さらに香林坊からすこし歩くとこれも人気の近江町市場があり、食の楽しみという点では、日本でも有数のデスティネーションではないかと思う。
招いていただいた作家さんには料亭でごちそうになるという僥倖に恵まれたが、自分では他の街と同様、カウンターでアラカルトのオーダーができるお店を、あれこれ調べてチョイスする。素敵な割烹や居酒屋を何軒かみつけた。「大関」は海鮮のベーシックな料理がうりで、吉田類さんの番組にも出ている家族経営の大衆酒場だ。金沢の人はおでんをよく食べるようで、香林坊周辺にも人気のおでん屋さんが多く、行列もみかけるくらいだ。「大関」で食べたおでんも絶品だった。だしはどちらかといえば関西系に近いだろうか、とがったところのないやさしい味だ。そして、車麩がこんなにおいしいものだということを、私は金沢のおでんで知った。
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