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「八楽」の若鶏甘ず六三風@京都

 7月最初の日曜日、京都南座の桂米朝一門会に、昨年に引き続き今年も出かけた。昨夏3年ぶりに復活した祇園祭の山鉾巡行が今年も近づいており、7月2日の日曜日には巡行の順位を決める「くじ取り式」が行われた。京都の街にコンチキチンの音色とともにはなやかな祭りの気分が満ち始めている。
 祭りの準備とともに圧倒的な勢いで増えているのが外国人観光客で、コロナ以前のレベルに戻りつつある。この時点で、中国メインランドからのいわゆる団体旅行客はまだ入ってきていないそうなのだが、もしもさらに加わるとどのようなコトになるのか。じつは今回ひさしぶりに嵐電に乗りたくなり、思い立って嵐山まで行った。駅周辺をすこしだけ歩いてみて心底びっくりした。月曜日だったせいか日本人の姿はすくないのだが、さまざまな国からの観光客でごった返していて、各国語の遠慮ない大声の会話が飛びかっている。ここは国際会議場かなにかかと思ったりする。京都特有の猛烈な湿度と暑さも加わってすぐに退散、嵐電で四条大宮にとって返し目についたうどん屋さん(これが当たり)に入りビールとうどんでほっと一息。京都のオーバーツーリズム、だいじょうぶか。
 さて、米朝一門会の後、知恩院さん近くの「ぎをん森幸」に入って京都の中華を楽しんだ話は去年書いた。めぐりあわせなのか今年も日曜の夜、同じく京都中華の名店「八楽」を予約していた。こちらも祇園エリアといえる立地だと思うが、高台寺さん近くのしっとりした路地のロケーション。カウンターだけのお店だがシェフと奥様の手際よくキビキビとしたリズムがなんとも心地よく、客に対しても過不足のないほどよい温度感のコミュニケーションをしてくださる。メニューを見ながらあれこれ話しつつオーダーをしていく。分量、個数少なめとかも遠慮なく言ってくださいね、などという配慮もうれしい。細く切って炒めた筍を使った和食の前菜のような「冷やし野菜」や、もやし炒めなどをいただきつつ、メインは「若鶏の甘ず六三風」にする。揚げた若鶏と酢の具合がちょうどよく、いかにも京都の中華の一品という気がする。メニューにシソ風味とあり、なるほどさっぱりといただけるのだが、このメニューも常連さんとのやりとりから生まれたとのことである。
 お店のジャンルとしては中華だが、これもよく考えられたお酒のラインナップからチョイスして料理とともに楽しんでいるうち、カウンター割烹にいるような気分になってくる。何度か書いているが、和食にしてもフレンチやイタリアンにしても、私はコース料理は分量が多すぎて苦手なのです。カウンターで好きなメニューだけをちょこっと選んでお酒に合わせるスタイルがベストで、各地でそんなお店を探し続けてきた。かならずしもどこの街でも見つかるわけではないのだけれど、京都でまたも好みの名店に出あったと感じていた。

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