「そば処 庄司屋」の板そば@山形
ウィンタースポーツにまったく縁がない。大学生のころ、同級生に誘われてスキー場に行ったところ、ただただ全身痛い思いをするばかりで、それ以来いっさい経験がない。冬場の旅行は東京の乾燥した寒さを逃れるため、南国リゾートなどのあたたかいところをおもな目的地としてきた。その結果、北国や冬山のまとまった雪というものをまったく見ていないことに気づいた。よし、どこか寒いところに行ってやろうと思うにいたった。
行き先をいろいろ考えた。飛行機は最近けっこう乗っているので避けたいし、快適な宿がないと嫌だけれど、あんまり宿泊費が高いのもいかがなものかなどと思案するうち、山形市の駅前に2021年オープンのダイワロイネットホテルがあることに気づいた。国内を一人で旅するときよく利用するビジネスホテルで、シンプルで合理的なスタイルが気に入っている。よし、山形にしよう。
2月の初旬、上野から山形新幹線に乗る。福島でやまびことつばさが引き離される。連結器が外れる音が聞こえてきて、すこしだけわくわくする。つばさが福島県から山形県に入り、置賜地方の山間部にいたると車窓の風景が急に雪深くなる。赤湯やかみのやま温泉など、温泉地の駅に停車したあと山形に到着した。
東京で山形料理をだす居酒屋などに行ったことがあり、高畠などのワインを飲むこともけっこうあり、食べ物がおいしいところだというイメージがあった。2泊する昼夜の食事を、例によって事前に入念にプランニングする。そうだ、ラーメンも食べなくちゃ。ちょうど山形にいるタイミングで、総務省家計調査のラーメンにかける1世帯あたりの外食費において山形市が日本一という発表があり、地元は湧いていた。あっさり系人気店のラーメンや居酒屋メニューで芋煮などもおさえつつ、2日目の夜は老舗のそばにした。
「庄司屋」は創業が慶応年間ということで、本店は風情ある日本家屋、店内はゆったりと広く、よく手入れされていてなんとも居心地がよい。鳥海山の麓の地酒、東北泉とともにそば前に天ぷらなど楽しみ、そばを注文する。とてもフレンドリーで感じのいい女性スタッフと相談の結果、すこし多いかもしれないけれどという名物の「板そば」にした。いわゆる田舎そばというのだろうか、野生的で香りよく、喉ごしよく絶妙の味で土地の魅力を堪能できる一枚だった。残念ながら完食は断念。おねえさん、ごめんなさい。
山形は何を食べてもおいしく、仙山線に乗って出かけた山寺の立石寺はとても風情がありで、大満足で帰路に着く。ところで、山形にいた3日間は、寒波の谷間のようなタイミングで、降雪はなく残り雪はあるものの気温は高くやや拍子抜けをする。ダウンコートを着込んでツイードのハットや手袋も持参したのにあまり出番がなかった。やはりまとまった雪には縁がないのかも。
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