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やってしまった中井君の、噂の真相(仮)

 最近巷で騒がれている芸能ゴシップから構想を得て、書き下ろし完全フィクション・ゴシップ短編小説を書いてみた。

題して「やってしまった中井君の、噂の真相」(仮)

 吉田一は65歳、フリーのジャーナリストで政治家のスキャンダルや芸能界のゴシップを日々探索している。
 今日も記事のネタはないかと蛆テレビ内をうろうろしていると、局内の食堂で若手社員が、
「なんかさー、中井広正とうちの桜田がもめてるらしいぜ。」
「えー、そうなの。なにを?」
と言う噂話しを始めたので、(中井と言えば、あの国民的アイドルグループ元「マップ・マップ」の一員で且つリーダー。蛆テレビ昼の看板番組「泣いてもよかろう。」の水曜レギュラーを務め、各局のバラエティー番組で今もMCも任される超大物じゃん)、これは知っとかなければならないと思い、側に寄って聞き耳を立てた。

 その話の要約をすると以下の如くである。

 新番組企画の打ち合わせで、プロデューサーの内山、ADの川村、女子アナの桜田が中井の家に呼ばれた。
 ところが、内山と川村両人が別案件のため急遽欠席。桜田のみが企画書概要を届けるためだけに訪問。事前に知らせを受けていなかった中井はこのドタキャンに不機嫌であった。と言うのもこの打ち合わせのために有名店から仕出し料理を仕入れていたためだった。

「桜田さんだけでも食事付き合ってよー。」と言う中年中井の甘ったれた誘いは桜田にはキモかったが、社に確認を取ると「局としても長年世話になったタレントだし無下にはできないので、適当にあしらって。」と言う意向であった。
 桜田としてもMCのアシスタントを任されるわけだし、親交を深める為にも渋々了解した。
 初めは番組進行など企画を建設的に話し合っていたが、酒が進むにつれ中井の目は淀み、セクハラまがいの発言を繰り返し、ついには胸や股間に手を伸ばす愚行に及んで桜田は遂に切れた。

「いい加減にしてください !」

 そう言い残して退出した。
 桜田は局に戻って一部始終を笹木境子部長に相談すると、
「それは大変だったわね。ごめんなさいね一人で対応させて。今すぐ中井さんと所属事務所に謝罪を求めます。」
と、対応は迅速だった。

 翌朝早々中井広正、マネージャーX、事務所専務小倉三者は蛆テレビを訪れ、桜田に対しての謝罪を申し入れ、虎屋の9000円もする羊羹 3本入を差し出した。
 好物の羊羹をもらっても桜田の怒りは収まらず。

「今後一切中井さんとの共演はNGとさせてもらいますし、局内で私の目の届くところに現れないでください。」

 中井サイドも了解し、示談が成立した。

 吉田一はこの内容を記事にし、懇意にしている出版社「週刊文醜」に持ち込んだ。
 若手編集長の新井は
「ねえ吉田さん。こんなゆるい痴話げんかみたいな記事載せられませんよ。うちはスクープしか取り扱いませんからね。先々代からの付き合いで吉田さんを出入りさせてますが、お歳を召してらっしゃるのでそろそろ引退されたらどうですか?」とけんもほろろな対応であった。

 打ちひしがれつつも吉田一は女性自慢にもこの記事を持ち込んだ。裏がとれているならばと編集長小野寺は吉田に確認すると、
「実際の虎屋の竹皮包羊羹 3本入「おもかげ(黒砂糖)・新緑(抹茶)・夜の梅(小倉)」は9396円(税込)ですが金額の誤差は396円ですし、桜田の羊羹好きは有名ですので間違いありません。」
と記事の信憑性を約束した。

 年末発行の女性自慢にこの記事が掲載された。

 さあ、当たり前のようにまずネットが食いついた。と言うのも本来の見出し「示談金は羊羹三本9000円」と書かれるところ、何故か「示談金9000万円」に代わっていたからであった。
 印刷会社の印刷ミスなのであろうか?

 さあさあ、それからと言うもの、週刊文醜も食いついた。週刊慎重も食いついた。スポーツ放置も食いついた。各テレビ局も食いついた。かくいう私、三文シナリオライター三木谷も食らいついた。


 と言う架空のシナリオですら続きの経緯は今現実起こっている騒動に導かれる可能性は十分あり得る。
 

#ほろ酔い文学

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