古典と現代のクラッシュ、『カクシンハンのシェイクスピア』 1

舞台演劇を見てきました。シェイクスピアの戯曲『ヘンリー六世』です。

クラシックバレエや英文学が好きな妻に誘われ、半ばついていこうくらいの気持ちで見に行った舞台芸術シロウトな私。はじめは、「古典だし、きっとよくわからなくて眠くなっちゃうのかなぁ」と、夏休み初日を半ば昼寝しにいくくらいの感覚で見に行ったのですが、その感覚が見事に裏切られる衝撃の作品でした。4時間半に渡る長時間の大作でしたが、舞台芸術シロウトな私でもその世界観にどっぷりと浸りきり、鑑賞後1日経過した今でもその舞台のパワーと人間ドラマに心釘付けとなっており、やっと少し冷静になってきたところでこの体験を言葉として綴ってみようと思ってここに筆をとっています。

人間の放つエネルギーとパワー:
人間の放つエネルギー・パワーにどっぷりと没入させられ、「鑑賞する」というよりは「没入する」体験を味わうことができました。すっかりとその魅力に惹きつけられて、1日にして舞台芸術のファンになってしまいました。

当たり前の事かもしれませんが、舞台芸術というのは、生の芸術です。ステージという一つの場所で、俳優たちが様々なキャラクターになりきり、演じます。テレビやyoutubeと違い、カットがありません。その場のリアルな体験として、観客たちは俳優たちとともに一つの時間を共有します。

そこで放たれる人間のエネルギー・パワー。これが、とてつもなく強くて、「鑑賞する」などという行為が許されなかった。私自身、舞台芸術の中のひとりの人間として同じようにエネルギーを保たなければ、その作品を十分に味わうことができない。1部〜3部まで、それぞれ90分ほどの作品でしたが、そのたびにどっとエネルギーを放たれ、一歩も動いちゃいないのに体力を使っていることに気が付きました。

総勢18名の俳優たちの放つエネルギー。
美しい言葉の数々。
飛び散る汗。
発声のたびにスポットライトに反射して輝く唾。
キャラクターごとに異なる一瞬一瞬の表情。
大胆な動きとジェスチャー。

これら一つ一つの要素が、デジタル中心の体験からは決して味わうことのできない、その場の臨場感として体現され、観客たちを魅了する。
体験中、体験直後、そして一日たった今でも、観客たちをひきつけてやまない最大の魅力は、この人間の放つエネルギーをパワーにある。

『人間はこんなにもエネルギーを放ち、輝くことができる生き物なのか。』


そういった素朴な体験と感動が、舞台芸術たる演劇の最大の魅力だと感じます。






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