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舞台 「ただやるだけ」 観劇レビュー 2020/12/06

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公演タイトル:「ただやるだけ」
劇団:good morning N°5
劇場:シアター711
作・演出:澤田育子
出演:澤田育子、入江雅人、藤田記子、千代田信一、弘中麻紀、藤原祐規、中村中、平井亜門、久保田南美、武田裕子、高久瑛理子
公演期間:11/19〜12/13(東京)
個人評価:★★★★☆☆☆☆☆☆


19年10月の「どうしようもなくて、衝動」以来2度目の観劇となる、good morning N°5さんの舞台を観劇。
とにかく90分間、11人のキャストが体全体を張って恥を捨てて挑む熱量溢れるドタバタコメディに、終始呆気にとられていた。年末に放送される「ガキ使」に近いコメディ作品と言えば多くの人に伝わるはず。勿論、笑ったらアウトというルールは存在しないが笑
この劇団の公演は非常に異色で、上演中携帯の電源を切らなくて良い、通話OK、飲食OK、途中退室OKというルールの緩さなのだが、今回はコロナ対策もあり通話と飲食はNGだったが、その代わり観客全員にクラッカーが渡されて好きなタイミングで鳴らして良いというルールが非常に面白かった。このクラッカーによって非常に場が盛り上がったし、ここで鳴らすのかよというタイミングで鳴らしている観客が逆に笑いを作ったりと非常に他の公演ではあり得ない参加型演劇で楽しかった。
藤原祐規さん、平井亜門さんといったイケメン俳優が殻を破ってぶっ飛んだ芝居をする点が非常に見応えあり。こんな彼らの芝居はここでしかお目にかかれないだろう。
そして中村中さんの歌唱力が光るシーンや、全員で歌って踊るシーンも観ていて非常に愉快だった。
ぶっ飛んだドタバタコメディが好きな人にはオススメ。


【鑑賞動機】

good morning N°5という劇団自体は、19年にドラマで主宰の澤田育子さんを知ってから興味を抱き初観劇した。前回の「どうしようもなくて、衝動」で、他の劇団公演とはまるで違うぶっ飛んだ演出がツボだったので、今回も観劇しようと思った。また、入江雅人さん、藤田記子さん、藤原祐規さん、平井亜門さん、中村中さんといったキャストも自分はよく知っていたので、キャスト視点でも非常に楽しみな作品だった。


【ストーリー・内容】(※ネタバレあり)

この作品はストーリーを楽しむというよりは、場の雰囲気を楽しむ系の舞台であり、正直ストーリー構成はめちゃくちゃで私自身もしっかり把握出来なかったので、舞台上で起こった出来事をつらつらと書き記しておく。

まずは客入れでは、キャストが全員舞台上に登場しており、澤田さんのアドリブによるマシンガントークで場が繋がれていた。トークの内容は、コロナ対策でこんなことしてますとか、グッズありますとかそういったこと。
暗転して上演が開始される前に、スクリーンが降りてきて下北沢にある居酒屋が一件動画で紹介される。各回で紹介される居酒屋は異なるらしく、私が観劇した回は「雷や」というお店だった。藤田さんが食レポをする。

明転すると、オフィスに会社員(入江雅人)と卓上に座る緑色の服を着た女性(澤田育子)が存在する。その後ろにタキシード姿で頭に黒い受話器を載せた男性(藤原祐規)が後ろ姿で立っている。
会社員は、女性が足を組み換えるたびにチラ見出来る白いパンツに目がいってしまう。そして女性がヒールを片方落とすと「このガラスの靴がぴったりハマれば恋に落ちる」と呟くが、会社員は「ガラスの靴でもないし、今までずっと履いていたんだからピタリとハマるに決まっている」と反論する。そして靴にかけてこのオフィスを「屈辱不動産」と称す。
そこへ黒い受話器を載せた男性が「リリリリリリ」と叫ぶ。女性が電話に出て場転。

バイク(千代田信一)に乗った黄色いへそ出しのセクシー女性(中村中)は、ピストルでヘリコプターを打つ。
そこへ運動着姿の青年(平井亜門)がやってくる。その後ろに彼のことを好きでいる女学生たち(藤田記子、弘中麻紀、武田裕子、高久瑛理子)が運動着姿でキャーキャー言いながらやってくる。
その光景を見ていたへそ出しセクシー女性は、女学生の一人とMISIAの「Every Little Thing」でのど自慢対決をする。
そこへ、自称天皇の息子を名乗るダメ人間(藤原祐規)が登場し、散々暴れ回った後へそ出しセクシー女性に告白する。青年も女学生の一人に告白する。
そこへゾンビ姿の男性(入江雅人)も乱入してくる。

場転して、着物姿で風を切りまくった後に着物を脱ぎ捨てて再び緑の服になった女性(澤田育子)は、タキシード姿(頭に受話器がある)の男性(藤原祐規)との二人のやり取りになる。
緑の服をゴルフの人工芝と見立ててそこで男性がゴルフをしたり、二人は距離を縮めていきキスをする。

そこへ青いふんどし一丁の、入江さん、千代田さん、平井さん、マッチョTシャツを着た藤田さん、そしてタキシード服を脱いでふんどし一丁になった藤原さんが登場する。彼らはこれから水泳を行うらしい。指揮官のような人(久保田南美)によって水鉄砲で水を引っ掛けられるふんどし一丁の一行。
そこへ再び女学生たちが登場する。彼女たちはカエルの歌を歌っている。
ふんどし一丁の一行が泳ぎ出すと同時に、客席の頭上から洗濯バサミで留められたカエルの人形がぶら下がって降りてくる。

都知事選に立候補して選挙活動をする立候補者(久保田南美)が演説をしている。
彼女がハケると、澤田さんと藤田さんが舞台中央の前方に立って、今年4月の公演が通し稽古の最中に中止の連絡が一斉メールで送られるという事実を語り出す。正直辛かったと本音を吐露する。いつかその公演を実現させてお客様の前で上演するという意気込みに対し、観客から多くのクラッカーが鳴らされる。
その間にずっと後ろで準備されていた、「ニセコ」という暖簾のかかったお店が完成したのでストーリー再開。
最後は全員集合して歌って踊って物語は終了。

正直物語はなんの脈絡もなくぐちゃぐちゃだったが、かなりセクシュアルで過激なシーンも多々あったような内容。
今作品は澤田さんの出番がそこまで多くなかった印象。澤田さん、藤田さん、入江さんといった主力キャスト以外で場を盛り上げるシーンが多かったのは凄く良かった。
それと、ロングランの公演の中盤だからか、キャスト陣も舞台に慣れてしまって新鮮さがあまり感じられなかった気がした。言葉がただの台詞になってしまって、初めて観る人を置いてけぼりにする場面が多々あったような気がした。
千秋楽とか初回とかと比較して観てみたかった。


【世界観・演出】(※ネタバレあり)

good morning N°5の舞台は突飛な演出ばかりを詰め込んだ作品になっているが、その中でも私が今回の作品でとても印象に残っている演出を書いていく。

まずは上演開始直後にスクリーンに流れた、下北沢の居酒屋を紹介するコーナー。客入れ中キャスト全員がずっと舞台上にいたので着替えもあってこのタイミングを設けたのだと思うが、コロナ禍で飲食店も経営難にある中このような企画を持ってくるという発想が素晴らしい。
実際に映像で流れた生牡蠣とか焼酎とか物凄く美味しそうで、つい行きたくなってしまう。こういう他の公演ではあり得ないような企画を入れてくるワクワクが、この劇団の作品には存在する。

そんな企画の中で私が一番絶賛したいのは、観客全員に4つのクラッカーを無料で配布したことである。勿論このクラッカーは、劇中どこで鳴らしてもよく、勿論鳴らさずに持ち帰ることも出来る。このクラッカーによって、観客が声を出して叫べない代わりにクラッカーを鳴らして感動を表すことが出来るのである。
今回の作品を観ていて非常に良かったのは、澤田さんと藤田さんが4月に延期となってしまった公演をいつか上演したいという想いを訴えた時に、多くのクラッカーが客席から鳴り響いたシーンである。観客も演劇に参加しているという感覚もありますし、それによって澤田さんが「ありがとうございます」と受け答えしてくれていたシーンが、なんとも演者と観客で双方向にやり取りがあってとても面白かった。
また、各観客が自分の応援しているキャストの登場シーンでクラッカーを鳴らす場面もあって、きっと役者からしたら嬉しいだろうなとホッコリしながら舞台を楽しんでいた。
さらに、なんでここで?という場面でもたまにクラッカーが鳴っていて、それによって会場に笑いが起きるという状況も面白かった。
このクラッカーは、今後のgood morning N°5の舞台でも継続して取り入れて欲しい。

それ以外の演出ですと、平井さんの白いTシャツにみんなで水をぶっかけて乳首が透けるという面白い演出や、客席の頭上から洗濯バサミで吊るされたカエルの人形が降りてくる演出も面白かった。
斬新だったのが、 舞台上に砂を降らせる演出。後片付けが大変そうだとも思ったが、そういう攻めた演出を打ち込んでくる姿勢が好き。
また、澤田さんの緑色の衣装がゴルフ場の芝に変わる演出も面白かったり、女学生のカツラで髪を縛っている部分がすっぽり取り外せる仕掛けも面白かった。


【キャスト・キャラクター】(※ネタバレあり)

キャストの個性がみんな強すぎて、全員触れて書き記したいところだが9人もいるので、特に印象に残った役者だけをまとめておく。

まずは、作・演出でもある澤田育子さん。前回「どうしようもなくて、衝動」を拝見した時はこんな作品を作るのかと度肝を抜いたが、今回はぶっ飛んでいることは覚悟の上だったので、ある程度許容できた。
特に面白かったのは、序盤の足を組み換える際に白いパンツが見えるシーン、あそこは個人的にツボだった。中盤で藤原祐規さんとガチでキスしていたシーンは衝撃的だった。後方席だったので確実ではないが、おそらく唇がくっついているように見えた。

次に、イケメン俳優の藤原祐規さん。まさかここまでぶっ飛んで芝居をするとは笑。でもそのギャップが物凄く良かった。
彼がぶっ飛んだ役として登場するのは、タキシード姿の電話男と、天皇の息子役の時だが、個人的には電話男の方が好きだった。「リリリリリリ」とか叫ぶあたりは最高、印象に残っている。これはキャラクター的にという意味でもそうなのだが、天皇の息子役の時は何を喋っているか分からない箇所が多々あった気がした。ただ、三鷹からの高尾の降りは好きだった。

次に、同じくイケメン俳優の平井亜門さん、彼の生の芝居を拝見するのは初めて。彼は藤原さんほどではなかったが、これまでにないほど自分の殻を破り捨てて演技をしていたという印象。特に水泳のシーンは青いふんどし一丁というなかなか攻めた格好。彼は細いがなかなか筋肉があって女性ファンからしたら、かなりのファンサービスになるのだろう。
水泳の時のナルシスト役は物凄くイメージと合っていたし、凄く印象に残った。
平井さんは、こういうぶっ飛んだキャラクターではなく、もっと普通の役でも芝居を観てみたいと思った。

最後に、へそ出しセクシー女性を演じた中村中さん、彼女の存在はこの舞台の中でもかなり異質なものだったが、しっかり力強いオーラが滲み出ていて良かった。正直、個人的には一番役を観ていて安心感があった。そしてなんと言っても凄くセクシー。
今回特筆したいのは、彼女の歌唱力。MISIAのELTを歌い出した時は鳥肌が立つくらい上手かった。彼女の芝居は他でももっと観てみたいと思った。


【舞台の考察】(※ネタバレあり)

前回のgood morning N°5の「どうしようもなくて、衝動」と比較して今作品を考察していこうと思う。
正直な感想、個人的には前回の作品の方が総合的に満足度は高いかなという印象である。勿論、今回は作風に対する抵抗はなく衝撃度も低かったので、その影響もあって満足度は下がった部分もあるかもしれないが、それだけが要因ではないのでそちらについて書いていく。

今作品は、割とキャストの熱量という部分にフォーカスが置かれていた印象である。藤原さんの熱量、平井さんの熱量、中村中さんの熱量、客演チームの演技のレベルは今回の方が高いと思ったし、彼らがシーンを作り上げている箇所が多々あったため、澤田さんや入江さん、藤田さんの役回りが前回よりも少なかった印象である。
これはこれで良いのだが、個人的には笑いのツボ的な部分がこの客演の方が演じる部分には響かなくて、どちらかというと澤田さんや入江さんの芸の方が好きだったからなのかもしれない。
例えば、前回の「どうしようもなくて、衝動」だったら、澤田さんのETはツボだったし、入江さんの「I'm paper driver」やハゲをネタにする歌もツボだったし、藤田さんの沢庵で乳首を隠す姿もツボだった。しかし、今回は熱量みたいな箇所が多かったのであまりゲラゲラ笑えなくて、後半は特に飽きてしまった点が少し残念だった。
勿論、コロナ対策ということで新しい企画が沢山あったのは評価したい、クラッカーとか居酒屋の宣伝とか。でも総合的には、笑い要素という部分が少し不足していた気がするので個人評価は少し厳しい点数となっている。期待値も大きすぎたのかもしれない。


【写真引用元】

good morning N°5 公式Twitter
https://twitter.com/gmn5

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