JAやさと主催のシンポジウムに登壇しました
先日、JAやさとが主催するシンポジウム「地域の未来を食と農と交流から考える集い」に、パネラーとして参加しました。
他に登壇したパネラーが豪華メンバーすぎて、本当に私でいいのかと思ってしまうほどでした。
八郷は全国でも有機農業のメッカとして知られていますが、その八郷の有機農業界でも四天王と呼ばれるような方達です。
食と農と交流。
八郷留学を運営する私は、ここでいう "交流" の部分を受け持ちました。
それぞれどんな方で、どんなことを発表されたのか、順番にざっくり紹介していきます。
柴山進さん(NPO法人アグリやさと代表)
柴山さんは元JAマンで、現在は朝日里山学校を運営するNPO法人アグリやさとの代表でいらっしゃいます。
JAやさとが進めてきた、地域総合産直と就農支援研修制度についてお話しされていました。
地域総合産直と聞いてもピンと来ないですよね。。
産直というのは、コープとか生活協同組合の類です。
組合もしくは会社?が、農産物や畜産品を仕入れて、組合員もしくはユーザーに配達する仕組みですね。
産直を運営する側とすれば、特定の地域から単一作物を大ロットで仕入れることができれば楽です。
輸送・管理コストを抑えることができるからです。
しかしある地域が単一作物栽培に走ると何が起こるか、想像に難くないと思います。
もしその作物の需要が減ったら、もしその作物に条件の悪い気候になったら。。。
そういう考えのもと、当時JAやさとと付き合いのあった東都生協さんは、「単一作物生産は地域を破壊する」との危険を理解しており、八郷という地域全体で多品種生産をしてもらい、総合的な産直システムを作ろうとしてくれたのです。
サステナブルなんて言葉は誰も口にしていなかった、1980年代の話です。
当時JAやさとで担当していた柴山さんは、その東都生協の思いに応えるべく、JA内でどんな困難に立ち向かい、どう解決していったのでしょうか。
その話は、残念ながらシンポジウムでは時間が足りず聞けませんでした。
私は以前からこの八郷の地域総合産直の話を調べて知っているので、もし気になる方は私がお教えします。
就農支援研修制度というのは、移住して就農を希望する方(八郷の場合は夫婦以上の家族に限る)に、決まった期間農地や農機具を貸して、営農技術を教え、卒業後にはその地域で就農してもらう制度です。
柴山さんはこれを1990年に始めました。
「ゆめファーム」という制度です。
移住者は突然広大な面積の畑を持つことが難しいですし、いきなり事業規模の大きい慣行農業に取り掛かるのはリスクが大きすぎます。
さらに、当時から消費意識の高い層で少しずつ注目が高まっていた有機農業の需要に応えるためにも、ゆめファームでは有機農業の技術習得を目指しています。
この制度は毎年1組の夫婦を八郷に移住&就農させ、今では24年目になります。
卒業生のうち95%が、現在も有機農業を続けているそうです。
1995年には東都生協で八郷のグリーンボックス(今で言う野菜セットのサブスク)が始まり、
1997年にはJAやさとに有機部会が設立され、
2016年にはゆめファームに加えて朝日里山ファームの制度も開始され、これにより毎年2組の夫婦が移住&就農するようになりました。
2023年にはこれらの組織を挙げた有機農業への取り組みが評価され、日本農業大賞を受賞するまでに至ります。
八郷には日本全国からこれらの取り組みに対して視察の依頼が来るそうです。
さすが有機農業のメッカ八郷です。
有機農業は事業規模こそ小さいけれど、だからこそ、豪農ではない、地元の兼業クラスの農家が、代替わりで農地を手放す選択をせざるを得ない時に、小さくて使いづらい中山間地域の畑を、ちょうど良く使えるのです。
慣行なら諦めるしかない、ソーラーパネルにするしかない畑を、有機なら守れるのです。
八郷には、柴山さんの作った研修制度の卒業生だけをみても、既に31組の移住者がいることになります。
彼らは農地と空き家を荒廃から守り、八郷の里山の景観も守ってくれ、良質で安心安全な食料を毎日生産してくれています。
さらに最近では、これらの有機野菜を地元の学校給食に使おうという動きも出てきています。
なんと素晴らしいことでしょう。
地域の未来を食と農から考える。
まさにそのタイトルに相応しいお話でした。
さて、この記事はシンポジウム全体を振り返ろうと思って書き始めましたが、柴山さんが凄すぎて、ボリュームが大きくなってしまいました。
他の登壇者の内容はまた別の記事で書こうと思います。