救いと呪いは紙一重
思考は現実化する
いわゆる「引き寄せの法則」というのはスピリチュアルな話ではなく、体内を流れる微量の電気が、プラスならプラスのものが、マイナスならマイナスのものが引き寄せられてくる、と言う話らしい。
いい状態=プラス=嬉しい・楽しい・幸せetc
悪い状態=マイナス=嫌い・ムカつく・いやだetc
そのプラスマイナスの切り替えは、発した言葉により脳が "そういう状態である" と認識することで行われるらしい。
すべて聞いた話。
その真偽や科学的根拠はともかく、たしかにプラスの言葉を発していた方がよいだろうし、マイナスのことばかりを考えていると、ドツボにハマりそうではある。
姉を見送ったときのこと
棺を閉める直前、母が「嫌だ、離れたくない」といい、泣いてすがった。
そのとき、ふと私の頭をよぎったのは
「思考は現実化する」
「マイナスの言葉を言うと、マイナスなものが引き寄せられる」
ということだった。
なんだか母が姉についていってしまいそうで怖かった。
それに、姉も最後にマイナスの言葉を浴びるよりは、プラスの言葉で送り出された方が安心できるだろう、と思った。
「大丈夫。お姉ちゃんはちょっと離れたとこに住むだけ。またいつかは会える。お姉ちゃんは頑張った。いいお姉ちゃんだったね。」
私がそう言うと、母は
「そうだね、頑張ったね。えらかったね。お母さんたちの子供に生まれてきてくれてありがとう。」
笑顔を作ってそう言い、お別れをした。
救いが呪いに変わるとき
いい見送り方ができた気がして、救われた。
母も今はひとまず、姉は遠くに引っ越して、連絡がとれないのだと思おうとしているらしい。
そう思っても、どうせ我が子の死という現実から逃れられはしないとわかっているから、そう思って心を逃しているのだという。
「思考は現実化する」
そう思って、私も今ある幸せに目を向けて、感謝の言葉を口に出すようにしている。
なるべく普通に生活し、栄養をとり、笑い、いつもりよりマイペースに暮らしてみている。
それなのに、日に日に私は呪われている。
今ある幸せが崩れるときを思い浮かべてしまい、うまく眠れなくなってしまったのだ。
そんなことを考えても仕方ない
不安のほとんどは起こらない
今ある幸せを大切にするしかできない
不安に思うことで、幸せを台無しにするのはとったいない
こんなときこそ、明るいことを考えて、思考を現実化させなくては
そうグルグルと考えるほど、心の奥底に拭い切れない不安と恐怖がこびりつく。
「思考は現実化する」
その言葉が今度は呪いとなって、悲しい結末に導かれてしまうのではと恐ろしくなる。
表面的でいいから、思ってなくていいから、口に出して脳を騙そうとする。
私は幸せ
ありがとう
大丈夫
悪いことは起こらない
絶対に大丈夫
そう口にしても、気持ちは晴れない。
「思考は現実化する」
その言葉が呪いのように私を支配する。
マイナスのことを思っていても、プラスの言葉を唱えながら過ごせばいい。
そうしているうちに、いつか時間が解決するのだろう。
人はそんなに強くないし、弱くないから、暗い気持ちはそう長く続かない。
私だって38年生きてきたのだから、そう信じられはする。
ただ今は、救いの言葉に呪われながら、日々をやり過ごしていくしかない。
まだハッピーエンドで締めくくれないのが申し訳ないが、私の戦いの日々は続く。