“オンラインならでは”のコミュニケーションのコツやインタビュー調査の可能性
こんにちは、YRK& マーケティングチームの越野です。
緊急事態宣言が空けて在宅勤務比率が減り、リアルでのコミュニケーションが少しつづ増えてきました。
しかし、Zoom等のWEB会議システムの一般化で距離的・時間的な制約からに開放された事により、オンラインでのコミュニケーションとハイブリッドで行っていくことが今後の企業活動のスタンダードになることは皆様も十二分に感じておられると思います。
そんな中、今回は「“オンラインならでは”のコミュニケーションのコツ」に関するコラムを紹介したいと思います。コラムニストは弊社グループ会社、「UCI Lab.合同会社」に所属する、所長補佐であり、エスノグラファーの
大石 瑶子です。是非ご期待ください。↓↓
#“オンラインならでは”のコミュニケーションのコツやインタビュー調査の可能性
私が所属するUCI Lab.は、主にメーカーなどの商品開発や新事業開発を個別にオーダーメイドされたプロジェクトを通じてサポートする(イノベーションを支援する)専門組織として2012年にスタートしました。「UCI」とは「User Centerd Innovation」の略で、私たちが掲げる信念でもあります。
つまりイノベーションを技術や企業側の都合ではなく、あくまでユーザー(生活者)のまなざしや彼らを取り巻く環境を起点に立ち上げることを目指しています。
そんな背景からより深く生活者に共感するために、これまでオフラインで数多くの定性調査(デプスインタビューや家庭訪問調査など)の設計及びインタビューを行ってきました。またインタビュー時に被験者から多くの有益な情報を引き出せるように、NLP(Neuro Linguistic Programming「神経言語プログラミング」)やカウンセリングスキルといったアプローチからコミュニケーションについて取り組んできました。
コミュニケーションについて日頃から意識している私ですが、実際にオンラインでのインタビュー調査や友人たちとのzoom会を体験してみて、オフラインとは違うコミュニケーションの必要性を感じています。
今回は、“オンラインならでは”のコミュニケーションのコツや“オンラインインタビュー調査の可能性”について、NLPや心理学の要素、オンラインインタビューの実体験を踏まえお伝えしたいと思います。
コミュニケーションの基本はラポール形成
まずはオンライン・オフラインを問わずコミュニケーションの基本についてのお話です。みなさんは、「ラポール」という言葉をご存じでしょうか?フランス語で「架け橋」を意味するこの言葉は、相手と自分の間に架け橋がかかるように心が通い合った状態をさします。
当然コミュニケーションを円滑にするにはラポールが築けていることがとても重要です。そしてラポール形成のテクニックとして「ペーシング」というものが存在します。
仲の良い人たちを見ていると何となくしぐさや言葉遣いが似ていると感じませんか?これは心理学でいう「類似性の法則」で、自分と共通点がある人には心がオープンになり親しみを感じやすいという現象です。
ペーシングはこの「類似性の法則」を逆手にとったもの。“意識的に”相手の言語、非言語に合わせていくことで「なんかこの人私と似ている。話していて心地よいし、安心する」というラポールの状態(=信頼関係)を生み出していくスキルなのです。
具体的には、「ミラーリング」といわれる主に視覚情報(相手の姿勢、しぐさなど)を合わせる手法、「マッチング」といわれる主に聴覚情報(声の出し方、トーンやテンポなど)を合わせていく手法があります。
当然これらの手法はオンラインでも有効ですが、オフラインでの手法をそのまま使えるというわけではありません。
オンラインとオフラインのコミュニケーションの違いとは
オフラインとオンラインのコミュニケーションのもっとも大きな違いは(当たり前ですが)「画面越し」ということが挙げられます。
目の前に相手がいたときには察することができた、相手の目線や体の動き、呼吸といったノンバーバル(非言語)情報は「画面」を通してではなかなか伝わりません。
それでも相手の状況を把握しようと画面に映る範囲での視覚情報、マイクで拾える音声情報に集中するため、オフラインの時より疲れてしまったりするのです。
また、アクセスするだけで繋がれる気安さがある一方、移動などの“クッション”となる時間がないため気持ちの切り替えが難しくなります。同居されている方がいる場合には、そちらにも気を使わなくてはなりません。移動時間がなかったり、ラストオーダーや終電がない気楽さからダラダラと続けてしまうと相手の日常生活に影響を及ぼしかねません。
では、それらの状況を踏まえてどんなコミュニケーションをすればよいのでしょうか。
簡単にできるオンラインコミュニケーションのポイント
①ジェスチャーはおおげさにする
オンラインコミュニケーションで見える相手は小さな画面サイズです。人数が多い会議ではそのサイズはますます小さくなります。だからこそ、いつもより大げさなくらいに「なるほどね」といううなずきや、「そうなの!?」といった驚きをジェスチャーで表現するのが有効です。また、私は「ミラーリング」も活用し相手と同じようなしぐさをさりげなく取り入れてみたりもします(露骨に真似するのではなく“さりげなく”が大事です!)。
②バックトラッキングを活用する
「バックトラッキング」とは、カウンセリングでいう「オウム返し」のことで、相手の言葉を繰り返す聴き方の手法です。
オンラインでは音声が途切れたり、他の人と発言がかぶって聞き取りにくいこともあります。そんな時に、相手の発言をそのまま繰り返すことで、話の流れをさえぎることなく情報を確認できます。また、きちんと話を聞いているということを相手に伝えることができるので、ラポール形成にも役立ちます。
③相手の名前を呼ぶ
名前を呼ぶという行為は「今まさにあなたと向き合っています」ということを伝える簡潔かつ最強の手段です。意識的に「○○さんはどう思いますか?」と名前を呼ぶことで、相手への関心を伝えることができますし、集中力が切れている場合は注意喚起にもなります。また、複数人でのコミュニケーションでは発話者の交通整理にも役立つでしょう。
④終了時間は厳密に管理する
オンラインコミュニケーションは集中力が必要です。また日常との境界線が曖昧な環境で実施されたり、気持ちの切り替えがしにくい状態だったりするため、オフラインの時以上に相手のプライベートに(空間的にも時間的にも)踏み込んでいると言えるかもしれません。だからこそ時間を区切る必要があります。初めから終了時間を決めておく、時間通りに終わらせるといったことが気持ちの良いコミュニケーションをする上で、思っている以上に大切なことになりそうです。
いくつかポイントをあげましたが、相手を尊重することが良好なラポールを築くことの大前提。それはコミュニケーションの場がオフラインからオンラインに移ったからといって変わるものではありません。「自分だったらどう感じるか」ということを忘れずにオンラインでのコミュニケーションも楽しんでいけたらと思います。
オンラインでのインタビュー調査の可能性
次に、実際にオンラインインタビュー調査を行うことで見えてきたオフラインとは違う良さや可能性についてご紹介します。
〈オンラインインタビューのメリット〉
①程よくリラックスするため本音がでやすい
被験者の多くが自宅からアクセスするため、リラックスした環境でインタビューに臨んでいただくことができます。さらに、物理的に目の前にインタビュアーがいないということで、圧迫感や緊張感を感じさせにくくなり、本音がポロリとこぼれるシーンが多々ありました。
画面越しというコミュニケーションの希薄さが逆に内省を促しやすい環境づくりに役立ったと解釈できそうです。
②これまでの制約から解放される
オフラインでのインタビューでは、被験者と直接お会いするため、必然的に訪れることのできる場所や人数に制約がありました。一方オンラインではネット環境があればどこにいる人とでもアクセス可能です。ネット環境が整っているかどうかという新たな制約はあるものの、これまで直接会うのが難しかったような方(共働きの方、介護をしている方、外出が難しい方など)にもインタビューする機会ができそうです。
③複数回の接点を持てる
オンライン上での長時間のインタビューは集中力を考えても避けたいものです。しかし移動の時間やコストがかからない分、被験者とのアクセスが容易で、一回当たりの時間を短めに設定して複数回の実施をすることができます。接触すればするほど好感度があがる「単純接触効果」をうまく活用し、ラポールが取れた状態で集中してインタビューを行えるのはオンラインならではといえると思います。
今後の可能性
さらに今後の可能性として活用の仕方を整理したいと思います。
■カジュアルなヒアリングを行う場として
短時間でのインタビューということを逆手に取り、聴く内容自体をライトなものにしたり、サンプル数(被験者の人数)を増やすことができます。カジュアルにヒアリングする場として、定量調査とオフラインの定性調査との中間という位置づけで活用できそうです。
■リクルーティングの一環として
「オンラインインタビューは短時間が理想」とはいえ、しっかりお話を伺わなければ分からないこともあります。
そこで、あらかじめ“候補”となる方を抽出し一度インタビューをしてみて、その中からもっと詳しくお話を聴きたい方を選定するという“リクルーティング”の一環にも活用できそうです。
■定期的に接触できる(定点観測の)場として
複数回の接点を持ちやすいのがオンラインの良さです。これを応用して定期的に同じ被験者にインタビューを行う「定点観測」を行うことで一人一人のCJM(カスタマージャーニーマップ)をリアルタイムで追ってみても面白いかもしれません。
オンラインでのインタビュー調査は今後もまだまだ進化が想定されます。最新の動向をキャッチして、より良い活用の仕方を探っていければと思います。