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常識を覆し、唯一無二の「宝石」を生み出した「金魚真珠」のブランドストーリー

こんにちは。ジャスミンです!
今回は、2024年11月に発売した新書「売れる値上げ(https://amzn.asia/d/aHxmBz8 )」の中で紹介している、値上げしても売れ続けているメーカー事例をジャスミンの独断と偏見でピックアップしてご紹介するシリーズになります。

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“金魚真珠”の愛称で知られる
真珠ジュエリーブランド「SEVEN THREE.」。

本事例の「値上げ」しても売れ続けているポイント

◎  規格外真珠に新たな価値を付与したブランドストーリー
◎  すべての真珠の個性と職人さんの技を守るビジネスモデル
◎  多くの人の心を動かす、直感的なネーミングとストーリー

ぜひご覧ください。

「あこや真珠」ひとつひとつの個性を見つめる。

高級品として知られる「あこや真珠」といえば、真っ白でゆがみのない球形で真円に近いほど価値があるとされています。
SEVEN THREE.では、この「あこや真珠」からできたジュエリーを展開しています。しかしWEBサイトを見てみると、すべて真円とは程遠い形の真珠たちが散りばめられています。

バロック真珠(=ゆがんだ真珠)

バロック真珠と呼ばれるゆがんだ形の真珠は、流通に乗ることすらできなかったり、乗ったとしても加工業者などに破格の安値で取引されるようなものです。

「ゆがみ」を“美しい個性”として見つめる着眼点

SEVEN THREE.のジュエリーは、この「バロック真珠」がつかわれていて、
しかも、訳あり商品としてではなく、真円の真珠と同価格帯の金額で売られています。

従来の真珠業界の「常識」では、厳しい基準で品質を保ち、産業を成り立たせてきた歴史と伝統があります。そのうえで、「金魚真珠」という形で美しい個性を可視化し、伝統にとらわれない新しい価値を生み出したのです。

しかし、なぜ、SEVEN THREE.を生み出した(株)サンブンノナナの代表である尾崎ななみさんは、真珠一つ一つの個性に気づき、「金魚真珠」という発想に至ったのでしょうか?その真相に迫ります。

祖父の仕事を見ながら感じた「真珠の個性」

尾崎ななみさんは、三重県伊勢志摩出身で、祖父は真珠の養殖業者を営んでいました。小さな頃から祖父の仕事を間近で見ながら、真珠に対して興味と親しみをおぼえていました。
しかし、家業を継ぐことは全く考えておらず、高校卒業後は状況してモデルやタレントのお仕事をしていたそうです。

しかし、ある時、尾崎さんは祖父の仕事を手伝う機会があり、人生のターニングポイントを迎えます。

自然の恵みの美しさと衝撃

あこや貝から真珠を取り出し出荷するまでの過程で行われる選定、形・色・大きさなどの基準から仕分けする作業を手伝っていた時、彼女は衝撃を受けました。

同じ手間暇と歳月を費やしても一粒ずつ色も形も異なる。
それぞれの個性を持ってうまれてくること、そのすべてが「自然の恵の美しさ」を讃えるべきものであること。

尾崎さんにとって美しく、愛おしく思える真珠も、出荷できる基準を満たさないものはすべて取引されないという現実を思い知るのです。

真珠ができるまでの歳月と職人さんたちの愛

母貝の中で静かに育まれる真珠は、成長するまでに、気が遠くなるほどの手間と3〜4年という長い歳月がかかります。職人さんたちが手塩にかけて大切に育てて、生み出される結晶です。

「真珠の個性」を活かす「金魚真珠」の着想

そんな職人さんたちの愛に溢れた真珠は、本来すべて愛されるべきものであるはずです。取引されず、職人さんたちの労苦が無に帰してしまうということに心を痛めた尾崎さんは、ある日、突起のようなものがついた真珠を目にします。

「まるで金魚みたい・・・。」

さっそく金魚真珠という愛称をつけてそのままの形で売り出すことを思いつきました。

伊勢志摩の真珠と職人を守るブランド
SEVEN THREE.

尾崎さんは、伊勢志摩の真珠を守り、職人の支援につながることをしたいという思いから、SEVEN THREE.というブランドを立ち上げました。

どんな姿形の真珠であっても、すべてが自然の造形美。

真白、真円だけでなく、持って生まれた色や形はそのままで美しいという信念のもと「金魚真珠」をはじめとした多種多様な色や形の真珠の個性をいかして無着色、無加工でジュエリーに使用しました。

職人さんを守る仕入れの仕組み

養殖業者さんからの仕入れ価格は業者さんの希望価格で買取を実施しています。決して「訳ありだから値引く」ということはしません。
これは、職人さんの手間暇、育む歳月の価値を守っていることになります。

これまで取引すらされなかった「個性的な真珠」を価値化

これまで価値のないもののように扱われてしまっていた「個性的な真珠」たちにチャーミングな名前をつけてもらうことにより、価値あるものへと変換することができたのです。

本来、すべての真珠の個性は唯一無二の造形美なのですから、これまでの伝統的な基準で選定されていた真珠も「金魚真珠」も、まったく同等の価値なのです。価格差をつける理由は何もありません。

直感的なネーミングとストーリーが
多くの人の心を動かした

「金魚真珠」が人々を惹きつけるのには、その名前もひと役買っています。
尾崎さんが外観から「金魚みたい」と思ったそのままを商品名にしたことがわかりやすさと愛らしさを生み出し、親しみやすく多くの人の心を動かしました。

「常識」を疑い、「本質的価値」を見失わなかった

真珠は「真白」で「真円」に近ければ近いほど美しく価値が高い

これは、世の中的な「真珠」の常識ではありますが、尾崎さんは職人さんの仕事を間近でみて、真珠が生み出されるまでの過程のなかにある「手間暇」「歳月」をみた時に、「すべての真珠は同じ価値がある」「個性は自然が織りなす美である」という本質的な価値を決して見失いませんでした。
そして、この本質的価値を伝えるために、生活者へストーリーを丁寧に語りかけていくことができたのが、このブランドの秀逸な点だと思います。

さいごに

書籍「売れる値上げ」では、より詳しいブランドストーリーの解説がなされています。また、SEVEN THREE.ブランド以外にも全部で17事例を解説しているので、ぜひ、お手に取って読んでみてください。
きっと、今後、ブランド価値を構築したいと考える方にとって、有意義な書籍になると思います。