ヤッパリ「まちづくりはひとづくり」でしょう〜その5『WAKAMONO大学始まる』
南アルプス市役所の保坂久さんの連載レポートです。前回はこちらです。
WAKAMONO大学「第0回」
平成25年度末は、人事異動が予想されました。事業予算が確定されると並行して、異動先の希望をアピールしなければなりません。事業予算が確保できても、自分ができなければ意味がありません。事業企画の時点で、予算付けは教育委員会生涯学習課か市民部の市民活動センターが想定されました。まちづくりの観点から市民活動センターが出来ました。幸いなことに「この事業はだれが実施するんだ」ということになり、手を挙げました。
平成26年度4月より市民活動センターに所長として配置されましたが、体制は所長の私1名と臨時職員のスタッフ1名の2人体制です。管理職とはいえ、予算建てから伝票処理、館内清掃までを行うのですが、なにせお目付役も居ませんから、かなり自由に行動できる環境でもありました。余談ですが、この時期にはたくさんの講演会や勉強会、先進地の視察など後で役立つ勉強ができたと思っています。
WAKAMONO大学のスタートは6月を予定していましたので、従前の「南アルプスコミュニティ」の仲間たちに事業の内容を説明して、参加と協力を求めました。しかしながら、反応がいまいちです。話を聞くと、これまでの人材育成も市や組織で経験しているが「決められたテーマで講師が一方的にしゃべり、決まっている結果に導かれる」ことにはもう関心がないとのことでした。何人にも聞きましたが、どうも同様な反応です。
そこで、事業を担当してくださる山梨県立大学の佐藤文昭先生と相談して、やり方を0(ゼロ)から考えた方が良いということになりました。「南アルプスコミュニティ」の仲間たちの反応をもとに、「今度の事業のテーマは押しつけではない。テーマも事業の進め方も参加者と一緒に作り上げていく」という点を前面に出して、参加者を募ることとしました。
広報等の募集とは別に、地域の青年団体や、農業後継者、職場等を巡り参加を呼び掛けるとともに、人づてで食事や飲み会で直接、事業の話をして参加を促しました。各種行政委員などにも声をかけ、市役所でも事業説明を行い、若手職員の参加を誘ったりしました。それでも、「何人来てくれるのか」、主催者の不安をたっぷり味わう時間でした。
参加者の募集工作を続けながら、WAKAMONO大学の「第0回」を実施することになりました。佐藤先生の発案で、「押しつけではない、参加者が主体となって事業を作っていく」という姿勢を分かってもらうために、「第1回」からではなく、「第0回」から始めることで、それを示そうとしたのです。そこでは、参加しようとする人のそれぞれの思いを聞くこととし、みなさんの思いはその後のカリキュラムを作るのに参考になったと思います。20名位の方が来てくださり、なんとか事業もスタートできそうだと確信できたのも、この回のおかげです。この回だけでは足りず、「第0.5回」も開いています。
WAKAMONO大学始まる〜新鮮な力を発信
力の限りの勧誘のおかげか、「第1回」には約60名の参加者が出席してくれました。会場の市民活動センターの研修室は満席となり、身動きするのも大変なくらいでした。「地域デザイン」や「デザイン思考」「コミュニティデザイン」と言った言葉が脚光を浴びていた時代ですので、感度の高い方々に感心をもたれたのかも知れません。既にそれぞれの分野で取り組みを進めている、既にリーダーの方々にもたくさん来ていただきました。
WAKAMONO大学では、佐藤先生から以下の様な理念が示されていたように思います。「自分の思いと地域の思いを重ねて、出てきたアイデアを磨いて、試して、実行する」。今になって振り返ると、この考え方の特徴的なところは、自分の思いの実現方法を学ぶのではなく、自分の思いと地域やコミュニティの課題やニーズとの調和するところを見つけることを学ぶというところです。まちづくりやコミュニティに関わり、何かしたいと取り組まれる方は多く、結構な行動力で実行できるのですが、せっかくの取り組みが地域に理解されなかったり、共感者が少なく持続できずに終わってしまったりする姿を多く見てきました。せっかくの取り組みですから、みんなに理解されたり、共感者が増えて取り組みが広がったりすると、姿を変えながらでも、地域への影響が続くように思います。自分の思いだけでなく、そこに地域の理解や共感を呼ぶことができる取り組みになるには、地域や周囲の人の気持ちを聞くことから始めることが肝心なのだと思います。佐藤先生のWAKAMONO大学はそこの部分を基本にしていたように思います。
だれでも人の話を聞くことは苦手だと思います。第3回以降、地域の人のインタビューや地域課題の発見を宿題になったところから、参加者が減り始めました。後に参加者に聞いてみると、仕事をしながら参加者仲間と連絡を取りながら、地域に出てインタビューするというのは、結構ハードルが高かったそうです。仕事をしている社会人としては時間も取れませんし、思いが強く、既に取り組みを持たれている参加者には地味な作業だったのかも知れません。
まじめにミッション(宿題)をこなした参加者と、しなやかにそれを凌いだ強者が残り(^_^)、約30名程度と、事業運営上に適当な規模になりつつ、前半の締めくくりとなる第5回の中間発表会が行われたのでした。発表は寸劇で行われましたが、参加者それぞれのグループごとの個性が豊かに表現されながら、新鮮な視点で地域を発見してきた様子が発信されたのでした。WAKAMONO達の新鮮なチカラを見せていただくことができました。
詳しくは、電子ブック「WAKAMONOたちの記録」をご覧ください。
http://wakamono-m-alps.com/wakamono-book/index.html
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