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また、本の悦びを知る

本の悦びを知る時とは

例えば、電車に乗っていて
気づいたら何駅か過ぎていた時(東野圭吾「秘密」にて体験)

寝る間も惜しいほど、物語の続きが気になって
朝4時になっていた時(三浦綾子「氷点」にて体験)

否 

原作が映画化した際
脳内キャスティングした登場人物と同じ女優が起用され時(向田邦子「阿修羅のごとく」) 

長編を読み終えた時(司馬遼太郎「坂の上の雲」)

本編より、あとがきのほうがおもしろかった時(キング「ミザリー」)

否 否 否

どれも素晴らしい、忘れられない読書体験だったけれど
「悦び」とは少し違う。

さて、町田康。

「少年の改良」と「記憶の盆おどり」を読んだ。

どちらの主人公も、なぜか堺雅人が脳内でキャスティングされた。
少年の改良での少年は、若い頃のブノワ・マジメル。
どちらも、あまり外見の描写に忠実ではないけど、しっくりきた。

ようやく本題、ネタバレなし。

町田康を読んで、久しぶりに「悦び」を感じた。

それは、全身をやさしく爪で引っ掻かれているような感覚。
そういう奇妙で相反する、心地よさをもった不快感。

貴志祐介やスティーブン・キングのホラー小説や、清水潔や小野一光の事件ノンフィクションのように、心底えぐられる直接的な不快感ではなく、筒井康隆や星新一のような悪夢をみている感覚とも少し違う。

心はざわざわするのに、受け身で追い詰められるというよりは、むしろこちらにも主導権があって、反応の度合いを自分で調整できる心地よさがあった。これは、ヘンリー・ミラーや吉行淳之介を読んだ時も同じ感覚があった。

この本たちは、プライム会員ならKindleで無料。
短編で、30分もあれば読了可、ぜひ。

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