運命みたいな再会から腐女子ソウルメイトになった同郷の友人が引っ越してしまった2~覚醒篇
【本編は無料で読めます】
今日もお時間のある方、ビールとつまみを用意して、今日も私の思い出話を聞いてください。
前回の記事はこちらなので、最初から付き合ってくださる方は読んでくれたらうれしい。
運命みたいな再会から腐女子ソウルメイトになった同郷の友人が引っ越してしまった1〜学生時代篇
1、そしてママ友になった
里帰り出産をしていた私が名古屋に戻ってから間もなく、Mちゃんが第一子を妊娠した。
マンガは好きでもオタクをとうに卒業していた私たちは、以降何年かの間ママ友とも言える交友期間を過ごす。
育児に疲れ果てていた私たちは、児童館に行ったり、公園に行ったり、子ども同士を遊ばせて体力削れろと祈っていた。
気力を充電するのに一人の時間が必要な私と違って、Mちゃんは人と会うことで充電できるタイプだった。
同じ歳頃の子を持つママを見かけると自分から声をかけて友達になっていて、子ども同士を遊ばせる予定で毎日が詰まっていた。
学生時代、棘だらけの薔薇のようだった、あのMちゃんが。
昔の話をすると、Mちゃんはちょっと恥ずかしそうに笑いながら「あの頃はめちゃくちゃ尖ってたから」と言うのだった。
成績が上位だったのも、強そうに見えたのも、彼女には彼女なりの理由があった。
高校を卒業して15年ほど経ってから、私はようやくMちゃんの本当の姿を知ったのである。
学生時代のMちゃんは精神的な危うさを抱え、仲の良い友達にはとことん甘えていたらしかった。
当時の私はMちゃんを完璧だと思っていた。
その浅はかさは、中学生の私がMちゃんにとって心を許せる友になれなかった理由の一つかもしれない。
子どもを横で遊ばせ、コーヒーを飲みながらのおしゃべりに四苦八苦しているうちに、私は次女を妊娠した。
2、眠れぬ夜にかつての血が騒ぐ母たち
次女は寝ない子だった。
昼も寝ないが夜も寝ない。
抱っこしていれば寝るのだが、布団に降ろすとすぐに泣く。
ネットで調べてあらゆる手を尽くしたが、次女の背中スイッチの感度はとんでもなく高く、親側が勝利をおさめることは叶わなかった。
最終的に私は、真冬に座椅子で次女を抱っこしたまま横にならずに夜を明かすという戦国時代の武士のような日々を過ごすことになった。
今こそ戦のさなかと思えば腹も座るものである。
今宵も睡眠を諦めざるを得ないと悟った私の脳内には開戦を告げる法螺貝の音高らかに、ブオォ〜、ブオォ〜と鳴り響きし間に握りしめたるテレビリモコン刃のごとし。
泣き叫びたる赤子の小さき口に乳を含ませ、えいや、と夜通しでアニメ視聴を開始するのであった。
そして、同窓会で関係が復活したKちゃん(前回の記事参照)にピクシブなるサイトを教えてもらい、スマホで好きな少年マンガの二次創作を漁り続けた。
寝不足と産後のなんかよく分からんホルモンだか脳内物質だかが異常な感じでアレしている間に、見事私は腐女子に返り咲いたのである。
約15年ぶりに腐女子返りを果たした私は、使命感に駆られるまま名古屋のイベントに申し込み、産まれて初めての同人誌を作った。
そう、あの、Kちゃんに寄稿してもらったBL同人誌である。
そして勢いのままインテックス大阪で推しCPの前立腺開発本を発行したのだ。
余談だが、「やむを得ない事情で夫の尻にエ○マグラをぶっ刺した話」という記事で言及している薄い本がこれである。
夫氏が「前立腺をチョメチョメする薄くてやべえ本をどうやら描いていたらしいことを知っていた」のは、執筆当時に原稿作業の時間を捻出するため、夫氏に子供たちの世話をめちゃくちゃお任せしていたためである。
一方その頃、Mちゃんは某小説にハマっていた。
実は中学生時代のMちゃんは絵も字も書ける作家だった。
生徒会の友達とオリジナル創作の合同コピ本を作り、欲しい人に原価程度で販売していた。
それから20年ほど時を経た彼女はBLでこそないものの、ハマった小説の二次創作小説をいつの間にかピクシブに上げていた。
そして片手で数えるほどしかない作品数にも関わらず、類まれなる文章力を持つ彼女の小説には恐るべき数のブックマーク(お気に入り登録)がついていた。
中学時代に読書感想文で賞を取った文章力に、年齢と経験で培った深みが増し、元の作品を読んでいない私でも思わず「ふぉぉ…」と胸の高鳴りを覚えてしまうようなリアリティとときめきに溢れる文章がそこにはあった。
お互い、育児でストレスが溜まった中での創作活動だった。
ストレスの昇華である。
我々は健全に、不健全な行為を通して、少しずつだが確実に沼へと歩みを進めていた。
3、生まれながらにして腐女子
季節を何度か繰り返した後、Mちゃんは第二子を出産した。
育児ストレス緩和のためにコミックをレンタルしまくっていたらしいMちゃんから、ある日やや興奮気味のLINEが届いた。
某少年誌連載中のスポーツ漫画にハマったのだと言う。
男子高校生の青春が熱いと熱弁し、Mちゃんはその作品を全巻買い揃えた。
既刊を読破したMちゃんは当然のように、もはや誰に教わるでもなく、供給を求めてピクシブで二次創作を漁り始めた。
懸命な読者諸君なら既にお気づきだろう。
そう、Mちゃんもまた、第2子育児期に腐女子へと出戻ったのである。
それからのMちゃんの腐女子返り咲きスピードには目を見張るものがあった。
あっと言う間にピクシブでお気に入り作品を漁り尽くしたかと思えば、次に会った時には「電子書籍で商業BLを読み漁っている」と報告をくれた。
これはイケるぞと思った私は、自分の推し作品を布教してみることにした。
私がハマっているのはまた別の某少年誌連載中スポーツ漫画なのだが、実は一度布教に失敗していたのだ。
Mちゃん曰く「ちょっと読んだことあるけど主人公の性格が主人公っぽくないのが好みじゃない」とのことだったので「最初の数巻だけ我慢して」と言って、試しに30巻ほど一気に貸し渡した。
供給に飢えたMちゃんは一気読みしてくれた。
そして受け取ったLINEには、既にピクシブで推しCPを漁っていることが書かれていた。
さすがである。
人が沼落ちして行く様を側で眺めるのがこんなに楽しいものだとは知らなかった。
人生折り返し地点に来ても、まだまだ知らぬ楽しみというのはあるものだ。
私たちはウフフと笑いながら「楽しいことが日々にあるっていいね、幸せだね」と話をした。
会話だけ見たら完全なるキラキラママである。
「腐女子は『なる』ものではない、腐女子とは生まれた時から腐女子なのである」と、いつかツイッターで見た名言を紹介すると、Mちゃんは同意して
「そうだよ、これが本当の私なんだ」
と自己啓発ワークショップを受けた直後の受講生みたいなことを言うのだった。
ーーーその3(最終回)へ続く
○一杯奢ってくれる方へ向けた余談
「しょうがねえ、一杯奢ってやんよ」という神様みたいな方、本題に関係ないかなと思って削った、大したこともないエピソードをどうか聞いてやってくだせぇ。へへっ(もみ手)
Mちゃんと私が沼った作品(明言はしてないけど有名作品なのでたぶん分かる)と、それにまつわるしょーもないエピソードです。
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