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プロセスから考えるコーヒーの未来

SCAJの出展に向けた社内勉強会があり、チームとコーヒーの知識を共有する良い機会となった。

その中で、ウォッシュド、ナチュラル、アナエロビック、ハニーといったコーヒーのプロセスについての話題になった。これらのプロセスがそれぞれ環境に与える影響について、僕なりに考えを深めており、今日はそれを共有したい。

スペシャルティコーヒー業界は、クリーンで安定した味わいが特徴的なウォッシュドコーヒーを長く愛用してきている。ウォッシュドはその効率性と品質の安定感から、世界中のスペシャルティロースターに好まれており、クリーンでバランスの取れたカップが提供できるのが特徴だ。

しかし、サステナビリティの観点から見た場合、このウォッシュドプロセスが環境に大きな負荷をかけている点を考え直す必要がある。ウォッシュドコーヒーのプロセスでは、産地にもよるが1kgのグリーンコーヒーに対して40リットルの水を使用すると言われている。最新のエコパルパーなどの技術で水の使用量は削減できるが、依然として水資源の消費は避けられない。

また、ウォッシュドプロセスからは大量の排水が発生し、その廃水は酸性が高く、有機物質を多く含んでいるため、適切に処理しないと環境汚染を引き起こすリスクがある。ウォッシュドコーヒーの廃水は、家庭の排水の18~20倍の汚染力を持つとされている。

ラオスのボラヴェン高原でのWWFの報告によると、ウォッシュドプロセスのために毎年約2,300万リットルの未処理のコーヒー廃水が河川に流れ込んでいるとのことだ。世界中の生産国を考えると想像もつかない量になる。

一方で、ナチュラルプロセスはほとんど水を使用しないため、水の使用量が圧倒的に少なく、環境負荷も低い。近年、環境面の懸念からウォッシュドのコーヒーからナチュラルのコーヒーに切り替えるスペシャルティコーヒーロースターも増えた。

とはいえ、ナチュラルプロセスにも別の課題がある。

天日干しによる乾燥には時間がかかり、天候の影響も受けやすい。乾燥には2〜3週間かかるため、雨や湿気が続くと、カビや発酵のリスクが高まり、品質が低下する可能性がある。また、広いスペースを必要とし、均一に乾燥させるためのレイズドベッドや乾燥台の設置には高額な投資が求められる。さらに、チェリーを定期的にひっくり返すなどの労働力も必要で、生産者にとっては大きな負担となる。

単に消費国の都合だけで「ナチュラルがいいからナチュラルに変えよう」というのは現実的ではなく、産地の状況をしっかり理解した上での対話が重要だ。

私たちKurasuも、環境負荷を軽減しながら、持続可能なコーヒーの取引をどう進めるかを考えなくてはならない。ウォッシュドプロセスでも、浄水技術を導入し水の再利用を促進するなどして環境への負荷を軽減できる可能性がある。日本にはその技術が進んでいる部分もあり、それを産地に導入することが持続可能な未来への解決策となり得る。

消費国と産地が共に協力し、最適な方法を見つけ、持続可能な未来を築いていくための対話を続けることが今後のカギとなる。

引用元: 



このnoteは、Kurasuの社内向け日報を公開したものです。

Kurasuは、京都を拠点とし、シンガポール、ジャカルタ、バンコク、香港にも展開するスペシャルティコーヒーブランドです。現在、国内外で11店舗を運営し、コーヒーを通じて人々の生活に豊かさをもたらすことを目指しています。

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