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Kurasuがフランチャイズでグローバル展開を目指す理由

京都を拠点に、国内外でスペシャリティコーヒー文化を広げるKurasu。現在国内外あわせて11店舗を展開し、2025年末までに合計18店舗のオープンが決定しています。

なぜ今、海外展開に力を注ぎ、しかもフランチャイズという手法を選択するのでしょうか? そこには、Kurasuが創業当初から抱いてきた「サステナブルなコーヒー文化を世界へ広めたい」という揺るぎない想い」があります。この記事では、Kurasuがフランチャイズモデルを活用してグローバルに挑む理由、そしてその背景にあるストーリーをお伝えします。


1. 海外店舗展開の背景

シンガポール:挑戦の第一歩

Kurasuの海外展開は、2017年にオープンしたシンガポール店から始まりました。京都店に次ぐ2店舗目が、まさかの海外だったのは“偶然のつながり”がきっかけ。しかし結果的に、Kurasuの海外展開を後押しする大きな成功体験となりました。

当時、スペシャリティコーヒーが急速に広まろうとしていたシンガポールで、Kurasuはコミュニティビルディングに成功。リモート運営にもかかわらず、現地パートナーやお客様との強い信頼関係を築けたことで、「Kurasuは海外でも通用する」という自信を得ることができたのです。

バンコク:さらなる挑戦と教訓

ンガポールの成功を追い風に、2019年にはバンコクに直営店をオープン。東南アジアでの存在感を高める次なるステップでしたが、ここで直面したのが“ローカライズの難しさ”でした。

シンガポールでは運よく恵まれた環境に助けられた面が大きかったのに対し、バンコクではそうはいきません。現地文化や市場特性を深く理解し、チームビルディングやコミュニティ形成に力を注ぐ必要がありました。特にリモート運営には限界があり、「海外で成功するには、強力な現地パートナーが不可欠」という認識をより一層強めることになったのです。

コロナ禍と新たな広がり

世界中を襲ったコロナ禍により、海外プロジェクトは一時停止を余儀なくされました。しかしその後、香港やインドネシアでの展開を再開し、新たにフランチャイズモデルを試み始めます

インドネシアでは、有力なネットワークを持つパートナーとの出会いが成功の鍵となり、文化やレギュレーションの壁をスムーズに乗り越えることができました。一方で、香港では同じ契約条件でもパートナーシップの質の違いに苦戦を強いられています。こうした経験から、現地パートナー選びの重要性をKurasuは身をもって学んできたのです。


2. フランチャイズモデルを選ぶ理由

直営とフランチャイズの比較

直営店の運営には多くのメリットがあります。自分たちで完全にコントロールできるため、ブランドの統一性や品質を確保しやすく、利益も直接確保できます。しかしその一方で、リスクも伴います。直営店ではすべての運営を自分たちで行うため、資金や人的リソースが多大に必要となり、特に海外市場ではその負担が大きくなります。

実際、Kurasuはフランチャイズモデルを本格的に導入する前、シンガポールで2店舗、バンコクで2店舗の直営店を運営していました。その経験を通じて、海外市場では日本国内のような成長を再現することが非常に難しいことを痛感しました。同じ額の投資を行っても、文化や市場の違い、リモート運営の課題などによって成長が鈍化してしまうケースが多々ありました。

フランチャイズの強み

一方で、フランチャイズモデルは、現地パートナーのサポートによってこうした課題を克服することができます。資金、ネットワーク、ローカル市場への深い知見を持つパートナーと協力することで、より効率的に市場に適応できるのです。

例えば、インドネシアでの店舗展開では、地元パートナーの存在が欠かせませんでした。特に印象深いのは、最初の店舗を開業する際に起こったトラブルです。住宅街の中に店舗を開けようとしたところ、地元住民から「人が来すぎるからやめてほしい」と反対され、さらに地元政治家とのつながりによって開業が阻止されそうになりました。しかし、パートナーが国政の議員とつながりを持っていたおかげで、この問題を解決し、無事に店舗をオープンすることができました。

こうしたトラブル対応の例は、フランチャイズモデルの強みを象徴しています。自社単独では解決が難しい課題も、現地パートナーの力を借りることで乗り越えられることを改めて実感しました。


3. グローバル展開の意義

サステナブルなサプライチェーンの構築

では何故Kurasuは積極的に店舗展開を進めるのでしょうか?その理由の一つに、持続可能なサプライチェーンの構築があります。
現在、私たちは世界中の生産者とパートナーシップを結んでいますが、これをさらに強化し、生産者たちのコーヒーを日本だけでなく世界中で楽しめる形にしていくことが目標です。

店舗展開によって仕入れ規模を拡大することは、生産者との持続的な関係を築く上で非常に重要です。安定したボリュームの購入は、生産者にとって収益の安定化につながり、彼らが安心して高品質なコーヒーを生産し続けられる基盤を作ります。これにより、生産者とともに歩むサステナブルな関係性を実現していきたいと考えています。

新しい市場への挑戦

Kurasuのグローバル展開は、現在東南アジアを中心に進めていますが、東南アジアの市場はまだまだ発展途上であり、新しい挑戦の場でもあります。この地域では、低価格で大量生産されたコーヒーが主流であり、テクノロジー企業や大規模な資本を背景にしたブランドが市場を席巻しています。しかし、それらが提供する製品は必ずしも持続可能性や品質を重視したものではありません。

このような市場で、Kurasuが持続可能なコーヒーや抹茶を提供し、本質的な価値を持つ選択肢を示すことは非常に意義深いことだと感じています。例えば、インドネシア・ジャカルタでは、Kurasuが提案するコーヒーや抹茶が、消費者に新しい選択肢として受け入れられつつあります。これにより、単なる商品提供ではなく、文化的な影響を与える存在として地域社会に根付いていくことを目指しています。

日本から新しいスタンダードを発信

Kurasuは日本のブランドであることを最大の強みとし、日本が持つスタンダードをグローバルに発信しています。京都で培われた独自性を活かしながら、新しいコーヒー文化を世界に届けることが私たちのビジョンです。

これまでの東南アジアでの成功を踏まえ、今後は中東、ヨーロッパ、アメリカへの展開を計画しています。これらの地域では、コーヒー文化がすでに成熟している一方で、日本の独自性を生かした持続可能なコーヒーの提供には大きな可能性があります。「日本だからこそ伝えられる価値」を通じて、現地の文化や消費者のニーズに根ざした形で新たなスタンダードを築いていきたいと考えています。


4. フランチャイズ展開の挑戦と未来

資金調達とフランチャイズモデルの選択

事業拡大のための資金調達には、大きく分けて以下の2つがあります。

  1. エクイティ調達やM&Aで外部資本を取り入れる

  2. 銀行からの借り入れ(デットファイナンス)など、自分たちで調達して展開する

その枠組みの中でKurasuはフランチャイズモデルという選択肢を選択しています。このモデルは、外部資本に頼らずに展開を進めるだけでなく、現地パートナーと協力してリソースを活用することで、持続可能な成長を実現する方法として最適な解決策となっています。

例えば、ブルーボトルやスタンプタウン、インテリジェンシアといったサードウェーブのロースターたちはエクイティ調達やM&Aを活用して成長を遂げてきました。しかし、それによって生じる問題点も少なくありません。実際、ブルーボトルがネスレに買収された後、長年取引していた農園との取引量が減少したという話も聞きます。こうした背景には、ネスレのサプライチェーンに組み込まれた結果、品質や理念よりも利益ベースの判断が優先されてしまったことがあるのでしょう。

Kurasuでは、このような外部資本に依存しない選択をしています。それは、自分たちの理念やビジョンを守り続けるためです。私たちは、日本本部を合同会社として運営しているのもこの理由によるもので、外部のステークホルダーを入れずに自らの手でブランドを育てていくことを大切にしています。

理念を守るためのパートナーシップ

フランチャイズ展開を成功させるカギは、「理念の共有」と「役割分担」

  • フランチャイズパートナー:投資による利益を重視してお店を運営する

  • Kurasu:ブランド理念や品質・サステナビリティ基準をしっかりと守る

具体的には、Kurasuが絶対に譲れない部分(品質やサステナビリティ、トレーサビリティなど)を契約に明記し、一切の妥協を許さないようにしています。投資と理念、両方がWin-Winの関係を築くことで、ブランドを維持しながら持続可能な成長を実現しているのです。


フランチャイズモデルが導くKurasuの未来

Kurasuが目指すのは、単なる店舗数の拡大ではなく、コーヒー業界にポジティブな変化をもたらすこと。サードウェーブ以降のコーヒーが抱える課題を、サステナブルな価値観でアップデートし、新たなスタンダードを生み出すことがゴールです。

この挑戦の中で、Kurasuは直営店とフランチャイズモデルのベストバランスを模索し続けています。日本やシンガポールの直営店を基盤に、フランチャイズパートナーとの協力を通じて新しい市場を開拓し、私たちの理念を共有する仲間とともに、コーヒー業界の新しいスタンダードを築くことを目指しています。


■ Kurasuでは、一緒に働く仲間を募集しています!

Kurasuと共にスペシャリティコーヒーの未来を作りたい
と思う方を、私たちはいつでも歓迎します。コーヒーを通じて人々の暮らしを豊かにするという共通のビジョンを持った仲間とともに、私たちはこれからも挑戦を続けていきます。私たちの挑戦の先に広がる未来を、一緒に切り拓きましょう。

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