国内にいながら海外大学の学位も取れる「ダブル・ディグリー」の新しいカタチ
大学には、現在、さまざまな荒波が打ち付けています。
18歳人口減少、新型コロナウイルス感染症・・・
そうした様々な難局に抗うかのように、
全国の大学では、いろいろな取り組みや挑戦が繰り広げられています。
大学に関するいろいろな常識やルール、
あるいは、大学を取り巻く障壁、限界、あるいは常識、
これらを、果敢に乗り越えようとする試み。
そこに見える、一筋の光明、可能性。
ここでは、こうした取り組みを、探索してまいりたいと思います。
まずは、大学卒業の証、“学位”が切り開く新たな可能性、です。
大学卒業で得られる学位とは
9月。
秋が一歩ずつ深まりゆくキャンパスには、
後期の授業に向けて、学生たちの活気が徐々に戻ってくることでしょう。
卒業間近となった最終学年の学生たちにとっては、いよいよ卒業に向けて、ラストスパートの時期となります。
卒論や、課題研究の総仕上げに余念がないことでしょう。
ところで、「大学」を卒業すると、どういう学位が得られるのでしょうか?
あるいは、大学院との違いは?
大学は、「学士」という学位が得られると、『学位規則』という法律で定められています。
昭和二十八年文部省令第九号 学位規則
(出典:e-Govポータル https://www.e-gov.go.jp)
大学院について言えば、
博士前期課程(修士課程)は「修士」、博士後期課程(博士課程)は「博士」を取得するところ、となります。
4年間の間に所定の単位を取得し、晴れて卒業となれば取得できる「学士」という学位。
ここまでは、皆さんよくご存知かもしれません。
ところが、在籍した大学だけでなく、海外の大学の学位も同時に取得できるとなると、いかがでしょうか。
夢のような話しですね。
昭和女子大「ダブル・ディグリー」の新しいかたち
キャンパスの敷地内に、米国ペンシルベニア州立テンプル大学のジャパンキャンパス(TUJ)を誘致している昭和女子大学(東京都)は、報道発表(2022年7月)を行い、独自の留学制度「ダブル・ディグリー・プログラム」による初の卒業生が誕生したことを明らかにしました。
昭和女子大学は、1988年に米国ボストンに海外キャンパス「昭和ボストン」を開校するなど、早くからグローバル教育に力を入れてきましたが、2017年からはTUJとの間で、単位互換プログラムがはじまりました。
今回、このダブル・ディグリー・プログラムは、そうした長年の取り組みやノウハウが結実した成果と言えるでしょう。
なお、昭和女子大学は2022年9月6日、本年秋学期からTUJとのダブル・ディグリー・プログラムの対象を、グローバルビジネス学部ビジネスデザイン学科に広げたことを発表しました。
日本にいながら米国大の学位がとれる
在学期間については、通常の4年より少し長く、昭和女子大学で3年、TUJで2年、あわせて5年の期間を要することとなります。
一般的なダブル・ディグリー制度は、海外の大学への留学が必要とされます。しかし、昭和女子大学のTUJとのダブル・ディグリー・プログラムは、海外に行かずに米国大学の学位が取れるのです。
コロナ禍でなかなか海外の大学に留学しづらい状況では、これは大きな魅力となります。
同じキャンパス内にTUJがあることで、可能となるのです。
日本にいながら海外の大学の学位も取得できる
じつは、ほかにも注目すべき事例があります。
国内にいながら、英国一流大学に
日本にいながら海外大学の学位が取れる、という点では、武蔵大学(東京都)が2015年度より導入した「パラレル・ディグリー・プログラム(Parallel Degree Programme)」も見逃せないプログラムです。
導入当初は、経済学部の「ロンドン大学と武蔵大学とのパラレル・ディグリー・プログラム(PDP)」として始まりましたが、2022年度からは新設の国際教養学部国際教養学科経済経営学専攻に移行しました。
このプログラムは、武蔵大学に通いながらロンドン大学BSc (Bachelor of Science) を並行履修し、両大学の学士号を取得できる制度で、ロンドン大学およびロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)が、授業概要や教科書を提供し、武蔵大学の教員による丁寧な英語の講義を通して理解を深め、最終的にロンドン大学・LSEの試験に臨むプログラムです。
武蔵大学のプログラムは、「ダブル・ディグリー」ではなく、「パラレル・ディグリー」となっていますが、HPの中で、それぞれの違いや特徴についてわかりやすく解説しています。
武蔵大学のパラレル・ディグリー・プログラムは、昭和女子大同様、海外渡航を伴う留学をする必要はない点で、同じ範疇に含めてよさそうですが、ロンドン大学とLSEが直接提供するシラバスやテキストを自大学の教員が教える点がユニークな点であると言えます。
ウィズ・コロナ時代ならではの留学制度
昭和女子大学、武蔵大学、いずれのプログラムも、日本国内で海外の大学の教育を享受できる点で、ウィズ・コロナ時代にふさわしい、新しい海外大学の学位取得プログラムと言えるでしょう。
実は、国内の大学で海外大学の学位も取得できる「ダブル・ディグリー」制度を設けている大学自体は、すでにたくさんあります。
また、「ジョイント・ディグリー」という新しい取り組みもはじまりました。
次回は、文科省や中教審のスタンスや経緯や、「ジョイント・ディグリー」を含め、そのほかの取り組みについても見てまいりたいと思います。
#大学 #卒業 #学位 #ダブル・ディグリー #昭和女子大学 #武蔵大学 #テンプル大学ジャパンキャンパス #昭和ボストン #ロンドン大学 #ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス #パラレル・ディグリー #留学 #海外留学 #留学制度 #単位互換 #代々木ゼミナール #代ゼミ教育総研 #ジョイント・ディグリー