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コラム:ダイバーシティ&インクルージョンを実現し、国際競争力を高める【東京大学・京都大学AtoZ】④ダイバーシティ改革への挑戦

SAPIX YOZEMI GROUP で毎年刊行している『医学部AtoZ』『東京大学・京都大学AtoZ』『早稲田大学・慶應義塾大学AtoZ』。

AtoZのネーミングの通り、各大学・学部の基礎知識から最新情報まで盛りだくさんの内容です。

本記事では『東京大学・京都大学AtoZ』の中から、「④東大・京大 ダイバーシティ改革への挑戦」をお届けします。

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東大・京大受験生の皆さま・保護者さま・指導担当の先生方に必要な内容をギュッと詰め込みました!ぜひご活用ください。


※本記事の内容は、2024年6月時点の情報です。最新情報は各自でご確認ください。


東大・京大 ダイバーシティ改革への挑戦

多様化(ダイバーシティ)や包摂(インクルージョン)の重要性が、社会の至るところで叫ばれる昨今、大学もその例外ではありません。とりわけ国際競争に打って出ようとしている東大・京大にとって、女性比率の向上は喫緊の課題となっています。

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京大 ついに「女子枠」導入へ

 2024年3月、京大が2026年度から理学部と工学部の「特色入試」において「女子枠」(正式名称は「女性募集枠」)を新設すると発表し、大きな衝撃が走りました。「女子枠」は工学部を中心に全国の大学に広まりつつありますが、最高学府の頂点に立つ京大もついに、いわゆる“アファーマティブ・アクション”に踏み切らざるを得なかったほど事態は切迫していた、ということです。今回の女子枠は39 名の募集となり、入試史上、一つのエポックメイキングとなるでしょう。【図表】参照

【図表】2026 年度 京都大学特色入試女性募集枠


 京大は、導入に至った背景について、「本学が世界と伍する大学として活躍するためにも、ダイバーシティ&インクルージョンを推進し、多様な視点を取り入れることは望ましい教育環境の構築のため不可欠」とし、国際競争を意識する中で何としてもダイバーシティを実現しなければいけない、という事情があったことを表明しています。

 今回の女子枠の募集人員が想定通り埋まったとしても大学全体では1.5% 程度の押し上げ効果しかありませんが、理学や工学への志を抱く優秀な女性に、これまで京大進学を躊躇させていた障壁を大学が少しでも取り除こうとする姿勢が広く伝わることで、今後大学と女子受験生双方にとって、事態が好転するきっかけが生まれることでしょう。

東大 学士・修士5年一貫の新コース

 一方、東大は、性別だけでなく、より高次元のダイバーシティやインクルージョンの実現を目指す姿勢を見せています。

 2024年2月に明らかにした学士・修士一貫の5年制コース、「カレッジ・オブ・デザイン(仮称)」は定員100 名。国際AO 入試のプロを配置して行われるグローバル入試を実施することによって、半数は海外から学生を迎え入れ、ブレイクスルーを起こすという、挑戦的なビジョンです。これは基本方針 UTokyo Compass に掲げた「新しい大学モデルの構築」に向けた取り組みの一つです。東大としては政府の10 兆円ファンド採択に向けた目玉でもありますが、「経済的・人道的に困難な状況にある国内外の学生」を迎え入れるという方針のもと、国籍、人種、文化、宗教なども射程に入れたダイバーシティの実現を想定しています。

 さらに、半分の50 名は国内の高校生を対象にした募集枠ですので、海外出身者対象のグローバル入試とバランスのとれた選抜がどのように設計されるのか、大いに注目されます。

改革は“不十分”との声も

 一方、遅々として進まないダイバーシティ改革に対して、厳しい声も上がっています。東大大学院教育学研究科の本田由紀教授は、国際女性デーに合わせて発表された『ジェンダー不平等の解消に向けて』の中で、「女性の政治・経済参画を促していくために、高等教育を担う大学にも責任があります」と、大学の責任に言及していますし、執行部の一員である矢口祐人副学長は、近著『なぜ東大は男だらけなのか』(集英社新書) のなかで、東大が「ブレイクスルー」を起こすべく、なんと「クオータ制」の導入を訴えています。

他を牽引していく役割

 大学に託された社会的役割を考えた場合、世界ランキングなどの国際的評価を高めることも大切ですが、学問的・学識的見地に立って未来に向けて、あるべきビジョンや方向性を世の中にサジェスチョンしていくことに、大学が存在する大切な意義があるはずです。こうした見地に立てば、大学はダイバーシティやインクルージョンの実現に対し率先垂範の姿勢で取り組み、結果を出すことは当然なのです。

 国内最高学府の頂点にある東大・京大は、他の大学を牽引する立場にあると言ってもよく、その責任は重大です。今後、両大学が進める改革の行方を、注意深く見守っていきましょう。


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