百花繚乱!従来型の一般選抜ではできなかったさまざまな新しい入試がAO入試で花開く
紆余曲折を経て、大学入試に新たな可能性と期待を託されることになった
AO入試と、その後継の総合型選抜。
長きにわたる入試の歴史になかで、いわば型にはまりきった一般選抜では、試すことが難しかった新たな実験的な取り組みが、AO入試、総合型選抜で次々と繰り広げられることになりました。
それぞれの大学が創意工夫を凝らし、オリジナリティを打ち出して・・・
まさに、百花繚乱のごとく、です。
図書館入試と実験室入試
お茶の水女子大学(東京都)が平成29年から導入した「新フンボルト入試」もその一つ。
お茶の水女子大学は、Q&Aのなかで、名称の由来と、この入試に込めたポリシーを紹介しています。
(そういえば、大学のゼミナールは、そもそもベルリン・フンボルト大学から始まったとされていますね)
第1次選考では、大学が行うプレゼミナールを受講し、セミナー受講時に作成するレポートや、出願時に提出する志望理由書・活動報告書・外国語試験成績等による選考が行われます。(理系学科志願者は、プレゼミナールは任意参加)
そして、第2次選考は、上で紹介したポリシーに則り、文系学科は「図書館入試」、理系学科は「実験室入試」と銘打って、実施されます。
文系学科は1 日目は、附属図書館の図書などを自由に参照しつつ、課題についてのレポート作成。2 日目は、グループ討論と面接。
理系学科は、それぞれの学科の特性を生かした丁寧な選考が行われますが、たとえば、理学部化学科は、あるテーマに関する実験を行い、実験結果をまとめ、考察する課題が課され、さらに面接では、実験に関する質疑応答を行い実験内容の理解や思考力が試されます。
お茶の水女子大学のアドミッション・ポリシーで謳われる、「知的好奇心と探究心を抱き、勉学意欲に富んだ学生の入学を期待」するという姿勢が、この入試にはストレートに表れていますね。
新たなミッションに基づく選抜も
建学の理念やアドミッション・ポリシーだけでなく、時代に即して打ち出された新たなミッションや方針に基づいて行われている総合型選抜もあります。
早稲田大学の新思考入試(地域連携型)もその一つ。
2022年度 早稲田大学 新思考入学試験(地域連携型)入学試験要項
法、文化構想、文、商、人間科学、スポーツ科学の6学部が合同で行うこの選抜は、「グローバルな視野と高い志を持って、社会的・文化的・学術的に地域へ貢献する人材を育成・輩出することを目的」とし、地方や地域の発展に貢献したいと考える人材を幅広く発掘することが狙い。
これは、近年、首都圏出身の学生比率が高まってきていた早稲田大学が新しく打ち出したミッションでもあります。
しかも、
「出身高校所在地や居住地は問いません。なお、地域性を重視し、
全ての都道府県からの受け入れを目標」
とすることも謳っています。
生まれ育った場所とは違う地域社会に貢献したい、というチャレンジングな意欲も歓迎しています。
9月の出願からはじまり、1次選考、2次選考、そして共通テストも課され、
2月中旬の最終合格発表まで、非常に長い時間をかけて行われるマラソン入試。
この新思考入試には、そこまでしても、意欲的で優秀な学生を獲りたいとする、大学側の並々ならぬ熱意が伝わってきますね。
(ちなみに、この新思考入試(地域連携型)は2024年入試から「地域探究・貢献入試」に名称することが発表されました。)
コンクールやコンテストが接点となって
昨今、高校教育と大学教育との連携をはかる高大接続が重視されていますが、大学が主催する高校生対象のいろいろなコンクールやコンテストを活用し、AO入試や総合型選抜と絡めることで、入学者選抜にリンクさせる試みも行われています。
AO入試元祖の慶應義塾大学のSFCでは、AO入試を受ける際、同大が主催する「小泉信三賞全国高校生小論文コンテスト」や「福澤諭吉記念全国高等学校弁論大会」で一定の成績を収めた受験生には1次選考を免除することになっています。
慶應義塾大学 総合政策学部・環境情報学部 2022夏秋AO募集要項
学費免除や減免も
総合型選抜に限った話ではありませんが、上智大学(東京都)では、すでに10年を超え実施されている全国高校生英語弁論大会「ジョン・ニッセル杯」において、上位に入賞した高校生が、同大に入学した場合、4年間の学費免除や減免をする制度を導入しています。
創意工夫が凝らされた多彩で多様な総合型選抜には、それぞれの大学が求める人物像や、自校にできるだけふさわしい学生を獲得したいという情熱がじかに伝わってきますね。
次回は、入試区分の垣根を超え、総合型選抜や一般選抜がクロスオーバー
する可能性を秘めた取り組みにも触れてみたいと思います。
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