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情報Ⅰ【共通テスト新設科目】どう対策すべき⁈2025年度入試まるっとポイント解説

「今日から使える!2025年度入試まるっとポイント解説」略して「まるポ」。第2回は新設科目として共通テストで課されることとなった「情報Ⅰ」について取り上げます。

受験生をお子さんに持つ保護者の皆様。一緒に入試知識についてアップデートしていきましょう!

*第1回もぜひご一読ください*



共通テストにおける様々な変更点の中で一番目を引くのが「情報Ⅰ」の新設です。

▶「入試のギャップ」保護者の受け止めは…?

センター試験実施時に受験生だった私からみても「情報」を課すことに驚きを感じました。そうか時代はここまで進歩したのかと。

今まさに高校3年生をお子さんに持つ保護者の皆様であればなおさら「自分が経験した入試とお子さんが経験する入試とのギャップ」に驚いているのではないでしょうか。

2024年2月。ある高校で高2生保護者向けに講演を行った際に、2025年度新課程入試について心配なことはあるか聞いてみました。

①新課程入試で変わる内容がわからない
②「情報Ⅰ」が追加になる
③過去問がない
④共通テストの大問数・試験時間が増える
⑤心配なことは特にない

①~④までの質問にフロアにいた80名程度の保護者の方のほとんどが挙手。
⑤については1人もいませんでした。
特に「情報Ⅰ」についてはひと際挙手される方が多い印象でした。

お子様の大切な大学受験。「ちょうど大きな変更の年にあたるなんて…!」と皆様ご心配の様子でした。こと「情報Ⅰ」については過去問もない状況ですからそう感じるのは自然です。

本記事では、「情報Ⅰ」について、
・なぜ新設されるにいたったのか
・どのような対策をすることで自信を持って試験に臨めるのか
・保護者ができることは何か
についてご紹介していきます。皆様の不安解消の一助となれば幸いです。

▶「情報Ⅰ」新設の背景

ここ数年で、AI・データサイエンスという言葉が多く聞かれるようになりました。
また、仕事の中で日常的にパソコンを使う方も多いのではないでしょうか。
今まで以上に様々な情報技術に囲まれて私達は生活しています。

このような情報社会のさらなる発展に向けて第5期科学技術基本計画では「Society5.0」が提唱されています(2016年1月閣議決定)。
これは「サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会」です。
Society5.0は超スマート社会の実現に向けた一連の取り組みを指します。

第5期科学技術基本計画の概要 (cao.go.jp)

超スマート社会って何ぞや???という皆様の心の声が聞こえてきそうですが、内閣府の定義は以下の通りです。

「必要なもの・サービスを、必要な⼈に、 必要な時に、必要なだけ提供し、社会の様々なニーズにきめ細かに対応でき、あらゆる⼈が質の⾼いサービスを受けられ、年齢、性別、地域、⾔語といった様々な違いを乗り越え、活き活きと快適に暮らすことのできる社会」であり、⼈々に豊かさをもたらすことが期待される

第5期科学技術基本計画の概要 (cao.go.jp) p.1

今でも必要なもの・サービスが必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供される社会ではあります。
ですが、超スマート社会ではサービスや事業のシステム化やその高度化、複数のシステムの連携がめざされます。
産官学・関係府省が連携し、ひとつのプラットフォームを構築することが構想されています。より高度な情報社会を想定しているわけです。

Society5.0を創造するのは誰?

他でもなく現代日本を生きる私達であり、子ども達です。

第5期科学技術基本計画が発表された2年後。2018年6月に、「未来投資戦略2018-「Society 5.0」「データ駆動型社会」への変革-」が閣議決定されました。

そこでは、Society5.0を担う人材の育成とその活用についての記述があります。

AI 時代には、高い理数能力でAI・データを理解し、使いこなす力に加えて、課題設定・解決力や異質なものを組み合わせる力などのAIで代替しにくい能力で価値創造を行う人材が求められることに鑑み、教育改革と産業界等の人材活用の面での改革を進めるとともに、「人生100年時代」に対応したリカレント教育を大幅に拡充する。

miraitousi2018_zentai.pdf (cas.go.jp) p.14

また、具体的な取り組みとして以下が挙げられています。

義務教育終了段階での高い理数能力を、文系・理系を問わず、大学入学以降も伸ばしていけるよう、大学入学共通テストにおいて、国語、数学、英語のような基礎的な科目として必履修科目「情報Ⅰ」(コンピュータの仕組み、プログラミング等)を追加するとともに、文系も含めて全ての大学生が一般教養として数理・データサイエンスを履修できるよう、標準的なカリキュラムや教材の作成・普及を進める。

miraitousi2018_zentai.pdf (cas.go.jp) p.15

共通テスト「情報Ⅰ」の新設は、社会的な要請に基づく人材育成の一環として位置づけられています。
理数能力の高さはPISA※の結果において科学的リテラシー、数学的リテラシーが高かったことを示していると考えられます(2018年調査では前者が2位、後者が1位)。
※PISA:OECDが主催する、世界各国の15歳を対象とした学力到達度調査。3年に1度実施される。

そして、入試だけにとどまらず大学入学後においても、すべての大学生が一般教養として数理・データサイエンスを履修できるよう求めています。

ここでキーワードとなるのが、「基礎的な科目として」「文系も含めてすべての大学生が」この2点です。

教科「情報」で学ぶ内容は、すべての人が知っておくべき内容であると位置づけられています。情報リテラシーの獲得はこれからの社会を生きていくうえで無視できない素養であるという問題意識から、大学入学共通テストにも導入されたのです。

▶共通テスト「情報Ⅰ」を徹底解剖!

「情報Ⅰ」で学ぶこと

共通テストにおいては新設科目ではありますが、旧学習指導要領で学んだ多くの高校生たちも「情報Ⅰ」に類する授業をうけていました。
旧学習指導要領において学ばれていた「社会と情報」「情報の科学」は新学習指導要領における「情報Ⅰ」と対応します。

新学習指導要領「情報Ⅰ」で取り扱う内容は
(1)情報社会の問題解決
(ア) 情報やメディアの特性を踏まえ、情報と情報技術を活用して問題を発見・解決する方法
(イ) 情報に関する法規や制度、情報セキュリティの重要性、情報社会における個人の責任及び情報モラル
(ウ) 情報技術が人や社会に果たす役割と及ぼす影響

(2)コミュニケーションと情報デザイン
(ア) メディアの特性とコミュニケーション手段の特徴、その変遷
(イ) 情報デザインが人や社会に果たしている役割
(ウ) 効果的なコミュニケーションを行うための情報デザインの考え方や方法

(3) コンピュータとプログラミング
(ア) コンピュータや外部装置の仕組みや特徴、コンピュータでの情報の内部表現と計算に関する限界
(イ) アルゴリズムを表現する手段、プログラミングによってコンピュータや情報通信ネットワークを活用する方法
(ウ) 社会や自然などにおける事象をモデル化する方法、シミュレーションを通してモデルを評価し改善する方法

(4) 情報通信ネットワークとデータの活用
(ア) 情報通信ネットワークの仕組みや構成要素、プロトコルの役割及び情報セキュリティを確保するための方法や技術
(イ) データを蓄積、管理、提供する方法、情報通信ネットワークを介して情報システムがサービスを提供する仕組みと特徴
(ウ) データを表現、蓄積するための表し方と、データを収集、 整理、分析する方法

旧学習指導要領の2科目を組み合わせた内容となっています。
高校の先生方のお話を聞いていると、1年生のうちに履修してしまうケースが多いようです。「情報Ⅰ」に続く「情報Ⅱ」は選択科目であるため、履修しないとしている学校もあるようです。

大学ごとの利用状況と配点

国公立大学の一般選抜では共通テストの受験が必須となりますが、「情報Ⅰ」を課すかは大学によりまちまちです。

代々木ゼミナール調べ
代々木ゼミナール調べ

旧7帝大は全ての大学で受験必須ですが、北海道大学については点数化しないとしています。受験資格としての「情報Ⅰ」の利用にとどまります。

一方で「情報Ⅰ」を課さないとしている大学のほとんどが公立大学です。国立大学については国立大学協会より「情報Ⅰ」は原則受験必須とする通達が出ていますが、公立大学についてはその限りではありません。しかも、国立大学においても学部・学科によっては選択科目の扱いにして受験しなくてもよい大学もあります。

私立大学においては共通テストの受験が必須ではないため、利用状況は多様です。

配点についても大学によってまちまちです。工学部・データサイエンス学部・理学部などで情報系の学問を扱う学科で配点を高くしているケースもありますが、共通テストの配点に占める「情報Ⅰ」の割合は10%未満がほとんどです。

現段階で活用状況は全国公立大学から公表されていますが、配点については6月末以降に公表する選抜要項に記載するとして、発表していない大学も存在します。

「情報Ⅰ」を既存の入試の枠の中でどう扱っていくのか、大学側としても決めかねている様子が見て取れます。

過去問≒試作問題・サンプル問題

当たり前の話ですが、新設科目の「情報Ⅰ」には過去問がありません。
どんな問題が出題されるのか、どういう対策をすればよいのか、分からなくて当然です。
特にプログラミングについて不安感を抱いている受験生が多いのではと感じます。

しかし大学入試センターは、「試作問題」や「サンプル問題」という形で、共通テストでの出題方法についてヒントを提供しています。
さらに「問題作成方針」という文書を公開し、どのような問題でどういう力を試そうとしているかの意図も明らかにしています。

ここで皆さんにも「情報Ⅰ」試作問題の問題を解いていただきたいと思います。

問1a
 SNS やメール、Web サイトを利用する際の注意や判断として、適当なもの を、次の ①~ ⑤のうちから二つ選べ。

⓪相手からのメッセージにはどんなときでも早く返信しなければいけない。

①信頼関係のある相手と SNS やメールでやり取りする際も、悪意を持った者がなりすましている可能性を頭に入れておくべきである。

②Web ページに匿名で投稿した場合は、本人が特定されることはない。

③SNS の非公開グループでは、どんなグループであっても、個人情報を書き込んでも問題はない。

④一般によく知られているアニメのキャラクターの画像をSNS のプロフィール画像に許可なく掲載することは、著作権の侵害にあたる。

⑤芸能人は多くの人に知られていることから肖像権の対象外となるため、芸能人の写真を SNS に掲載してもよい。

6-2-1_試作問題『情報Ⅰ』※令和4年12月23日一部修正.pdf (dnc.ac.jp)

正解は……
①、④です。いかがでしたでしょうか。正解した皆さんは2点獲得です。
この設問の難易度についてどう感じたでしょうか。
普段からSNSやメール、Webサイトを利用する現代人にしたら「当たり前」と思える内容だったのではないでしょうか。

プログラミング問題についてクローズアップされがちですが、このように、身近な情報技術に関する問題も出題されています。情報リテラシーが身についているかを問う問題でした。

【参考】サンプル問題はこちらから。対策にお役立てください。↓
サンプル問題『情報』 問題.pdf (dnc.ac.jp)

試作問題やサンプル問題は大学入試センターから公表されている問題作成方針にのっとって作成されています。「情報Ⅰ」の項目をみると

・日常的な事象や社会的な事象と情報との結び付き、情報と情報技術を活用し た問題の発見・解決に向けての探究的な活動の過程、及び情報社会と人の関わりを重視する。
・社会や身近な生活の中の題材や受験者にとって既知ではないものも含めた資料等に示された事例や事象について、情報社会と人との関わりや情報の科学的な理解を基に考察する力を問う問題などとともに、問題の発見・解決に 向けて考察する力を問う問題も含めて検討する。

3 令和7年度共通テストの出題教科・科目の問題作成方針に関する検討の方向性について.pdf (dnc.ac.jp) p.12

「生徒の身の回りにある事象と情報の結びつき」
「問題の発見・解決に向けての過程や考察力」
といったメッセージがちりばめられています。
「情報Ⅰ」での学校の授業と自身の生活が無関係ではないことを出題者は伝えたいのです。

他の教科でも、授業に身近な題材を取り込もうとしています。ただし情報は、身近なものが授業の題材になるだけでなく、入試問題の素材になることさえあるのが大きな特徴です。

共通テスト「情報Ⅰ」に備えるポイント

対策をするうえで気をつけていただきたいポイントが3つあります。

(この先は、「情報Ⅰ」対策として、受験生にやってほしいこと、保護者ができること、を代ゼミ教育情報センター独自の視点から詳細にお伝えしています!)

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