シャバは美しい所 檻の中
留置部屋に足を入れてすぐに、檻の扉を雑に閉められた。外から鍵を閉める担当は、溜まったゴミ袋の上を縛る時の様な顔をしていた。
これがこの世の正しい対応なのかもしれないが
”人間が人間を閉じ込める”光景はあまりにも滑稽過ぎる。
ガシャンと音が鳴って一瞬、食用・家畜や殺処分される動物達の感情が私の中に入って来た気がした。
思わず鍵を持っている人間を睨んだ。せいぜい睨む事しか出来ないのは、被疑者の立場で感情的な事など言えば全て記録され、さらに問題とされるからだ。
言いたい事がまるで言えない関係も、支配的な人間と抵抗不可の動物とによく似ている。
振り分けられた六畳の部屋には、既に三人の女被疑者達が居た。全員同じグレーのスエットを着ている。
私が最年少という事はすぐに分かったが檻の中で年齢なんて一切関係無い。
彼女達は挨拶と同時簡潔に、何故ここに居るのかを明かしてきた。
一人目は数百円の惣菜の万引き、二人目は親族のキャッシュカード利用、三人目は長めのオーバーステイ、
とのこと。
数十分前 中に入ったら自分の罪は他言するなと言われた気もするが。
「新入りは?」と聞かれた。
”パッチギ!LOVE&PEACE〜” である。
罪の重さ別に部屋を分けているのかと思った。しかしそんな訳でも無いらしい。この時点でマジでヤバい奴は同部屋に居ないと分かり、ホッとしたのを覚えている。
夜 薄ぺらで硬い敷布団の上で、何時間も罪とは…と考えるも思考があちこちに飛びまともに答えが出ない。就寝時間帯も檻の周りを見張りの歩く音が響いている。
初めて入った檻の中は、想像を超えて居心地が悪い。
肉体が圧倒的権力から物理的に囚われている状況は「苦」そのものである。
しかしまぁ、私はこの国の法に触れる事をしてしまい、今の状況があり、苦を感じるのは当然だとも思えた。むしろ居心地が良い空間に作られていたらそれはおかしい。
ただ、動物達は、何も罪を犯していないのに檻に誘導され人間に支配される。これを言い出したらキリが無いが、罪の無い生き物の自由を奪う事は罪じゃ無いのか、
人間は人間なだけで愚か 人間は人間なだけで愚か、、、、とひたすら思いながら起床時間約二時間前 やっと眠りにつけた。