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2019年の国際数学・理科教育動向調査(TIMSS) 子供の学力上がった?下がった?

国際教育到達度評価学会は12月8日、世界の小学4年と中学2年を対象に算数・数学と理科の学力を測る「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)」の2019年の結果を発表しました。

それについての各新聞社の見出しがこちら。

「理科楽しい」、でも平均点は低下 数学・理科の国際調査朝日新聞
小中の理科 順位下げる
国際学力テスト、平均5位以内維持 学習意欲の低下 なお課題【日経新聞】
4教科すべてで5位以内維持 国際数学理科調査 「算数・数学の勉強は楽しい」は平均下回る【毎日新聞
「脱ゆとり」日本の小中学生、算数・理科は世界5位以内…「勉強楽しい」割合も過去最高【読売新聞

新聞社によって注目するところが違うため見出しがバラバラです。

実際のところどのような結果になっているのでしょうか?

1. そもそも「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)」とは

主催:国際教育到達度評価学会(IEA)

目的:児童生徒の教育上の諸要因との関係を明らかにするため

調査実施年:1965年から実施。1995年からは4年に1度

対象:小学4年生、中学2年生

ちなみに同様の調査として、国際学習到達度調査(PISA)があります。OPISAの主催は経済協力開発機構(OECD)。目的は義務教育修了段階(15歳)において、これまでに身に付けてきた知識や技能を、実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかを測るため。調査実施年は2000年から3年に1度。対象は高校1年相当。

2.TIMSSの問題構成

TIMSSの問題は「内容領域」と「認知領域」の2つの領域で構成されています

【算数・数学】

内容領域:学校の算数・数学で学ぶ内容(小学校4年生:数、測定と図形、資料の表現 中学校2年生:数、代数、図形、資料と確からしさ)
認知的領域:児童生徒が算数・数学の内容に取り組んでいす時に示すと期待される行動(知識:巣学的な事実、概念、道具、手順を基にした知識に関すること 応用:知識や概念的理解を問題場面に応用すること 推論:見慣れない場面の問題や複雑な文脈の問題や多段階の問題を解くこと)

【理科】

内容領域:学校の理科で学ぶ内容(小学校4年生:物理・化学、生物、地学 中学校2年生:物理、化学、生物、地学)
認知的領域:児童生徒が理科の内容に取り組んでいる時に示すと期待される行動(知識:科学的な事実、概念、情報、道具、手続きなどと言った基盤となる知識に関すること 応用:知識や理解している事柄を問題場面に直接応用して、科学的概念や元利に関する情報を解釈したり科学的説明をすること 推論:科学的根拠から結論を導くために科学的概念や原理を適用して推論すること)

3.平均点の推移

小中ともに理科の順位が前回調査から1つ下がりましたが、中2数学では1位上がりました。小4算数では変動がありませんでした。

日本は07年から全教科5位以内で推移しており、文科省は小学校・中学校ともに国際的に見ても引き続き高い水準を維持しているとの見解を示しています。 

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文部科学省より引用】

4.算数・数学の勉強は楽しい」、「理科の勉強は楽しい」と答えた児童生徒の割合の推移

小学生で「理科の勉強は楽しい」と回答する生徒は毎回、国際平均よりも約3ポイント上回っていましたが、今回の調査では過去最高の6ポイントを上回りました。

「算数・数学の勉強は楽しい」と思う小・中学生、「理科の勉強は楽しい」と思う中学生は依然として国際平均よりも少ないのですが、年々数は増えており、着実に国際平均に近づいていっています。

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文部科学省より引用】

5.成績分布

TIMSSは得点を5段階に区分し、成績分布も示しています。

日本が4位だった中2数学では、一番上の区分の「625点以上」が37%、上から2番目の「550点以上」が34%でした。

一方、トップのシンガポールは「625点以上」が51%、「550点以上」は28%と、最高得点層で日本を引き離しました。2位の台湾も「625点以上」で49%を占めています。

中2理科でみると、「625点以上」は日本は22%なのに対し、シンガポールは48%と、他の教科でも同じ傾向がみられました。最高得点層がさらに増えなければ、日本は今の水準以上に順位を上げるのは難しいとみられます。

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文部科学省より引用 上:算数・数学 下:理科】

6.なぜシンガポールは全科目トップなのか

シンガポールは全科目トップの成績を収めています。

これにはシンガポールが教育を常に政策上の優先課題にしており、教育費を国家予算の16%も占めるなど多くの予算が投じられていることが影響していると文科省総合教育政策局学力調査室長の浅原寛子氏は指摘しています。

ちなみに日本における教育費の国家予算は約5%となっています。

7.国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)の調査結果に対する文科省のコメント

文部科学省としては、児童生徒の学力・学習意欲の更なる向上を図るため、
 ・ 新学習指導要領の着実な実施により、主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善や、言語能力、情報活用能力育成のための指導の充実
 ・ 学校における働き方改革の推進、GIGAスクール構想の実現や少人数によるきめ細かな指導体制の計画的な整備の検討など、新しい時代の学びの環境の整備
等の取組を学校、教育委員会等の関係者と連携・協力して推進してまいります。(文科省

8.TIMSS、次回からはCBT受験に

TIMSSは今回から、従来の筆記式に加え、コンピューターで解答する方式(CBT)を選択できるようになりました。

シンガポールや韓国、台湾など日本と学力水準が近いアジア諸国を含め、小学校は参加58カ国・地域のうち30、中学校は39カ国・地域のうち22がCBTを選びましたが、日本は筆記を選択しました

その理由について文科省は「コンピューターの扱いに慣れていない子どもがおり、端末やネットワークなどハード面の整備という点でも万全とは言えなかった」と説明しています。

国際的な学力調査では、経済協力開発機構(OECD)の国際学習到達度調査(PISA)が2015年からCBTになり、TIMSSも次回の23年調査から全面移行する予定です。

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