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"へたでいい":映画「モリのいる場所」より
映画「モリのいる場所」のワンシーン。
息子が描いた絵を見てくれ、と知り合いから言われたモリは「へただな」と答えます。そして、その後に続くセリフが以下。
へたでいい
へたも絵のうち
うまいと先がみえてしまう
モリが朴訥とつぶやくこのシーンが、私は一番心に残っています。
とてもシンプルだけれど、強く心に響くこのことば。
うまいとか、へたとか、人それぞれの表現、受け取った人の感想は千差万別のはずなのに、いつの間にか評価や点数がつけられ、上下や優劣が決まってしまう窮屈な世界。
よく考えるとおかしな価値観にどっぷりハマって、身動きが取れないでいたけれど、このシンプルなことばたちが本質をはっと気づかせてくれます。
「へたも絵のうち」で、ぎゅっと抱きしめてくれ、さらに「うまいと先がみえてしまう」で、背中を押してくれる。なんて優しくて強い表現だろう。
この映画は、画家の熊谷守一を主人公に、晩年のある一日をフィクションで描いた作品です。
至宝の俳優ふたり(山﨑努と樹木希林)が夫婦役という、もうそれだけで間違いない映画なのですが、熊谷守一なのか、山﨑努なのか分からないくらいの彼の憑依っぷりと、樹木希林も地なのか素なのか分からない彼女の演技と、でもそんなことどうでもよいと思えるくらい、このふたりの空気がつくる世界が暖かくて引き込まれてしまいます。
※熊谷さんは山﨑さんのアイドルだそうです(なんだか納得!)
円熟の夫婦と、小さな庭、呼んでもないのにそこに集う人々。何気ない一日の中に、たくさんの豊かさと愛情がつまっている、とても素敵な映画です。
映画公式サイト「モリのいる場所」
守谷さんのこの本もおすすめです!
ほぼ日での山崎さんのインタビューも一読の価値あり!