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HIFU(ハイフ)は危険なのか? 科学的に考えてみた 〜前編〜

①HIFU(ハイフ)とは?

「あんまりよく分からないけどなんとなく胡散臭そうなもの」をしっかり掘り下げて考えてみようシリーズ、記念すべき第一弾は、

HIFU(ハイフ)

です。

実は最近初めて知りました。
と言うか男性で知ってる人はほとんどいないんじゃないでしょうか。

HIFUというのは、

"High Intensity Focused Ultrasound"

の略で、そのまま訳すと「めちゃくちゃ強くてかつ集中させた超音波」ということで何のこっちゃですが、一言で言うと、肌のたるみを取るための治療法のことで、美容に関する言葉です。

要するに、治療に使う技術の名前が治療そのものを表すようになったってことですね(ちょっとニュアンスが違いますが、携帯電話のことを「ケータイ」と略して読んでるのと似たような感じです)。

しかしこういう新しい技術あるあるですが、ネット上で検索すると大体見つかる関連記事は以下の2パターンです。

①:いかにも効果がありそうな感じに書いてあるものの、科学的な解説が薄く根拠が不明なもの(得体の知れないクリニックの宣伝記事など)

②:医学、生物学、化学、物理学等の観点から細かく分析されて書かれた記事や学術論文など

①では情報が少な過ぎて(そもそもその情報が合ってるのかどうかもよく分からない)判断できない、かと言って②は難し過ぎて何言ってるのか訳が分からない、という感じで、ちょうど良いものが中々見つからないんですよね。

情報の溢れている世の中ですが、意外と同じようなことで困っている方が沢山いらっしゃるんじゃないかと思います。科学に興味をもって工学部でそれなりに勉強してきた人間として、その間を狙ったちょうど良い感じのものを書いてみたいと思います。

②ハイフの原理

シンプルに書くとこんな感じです。

  1. 超音波で筋膜(筋肉の表面にある膜のようなもの)を振動させて摩擦熱を発生させる

  2. 筋膜の温度を上げ、組織の主な構成要素であるタンパク質(コラーゲン等)を変性させる

  3. 変性した筋膜のタンパク質が収縮することで肌が持ち上がる

「1」は原理としては比較的単純なもので、波の重ね合わせの原理を応用したものです。波は一つ一つが小さくても、沢山集まれば大きくなる性質があります。

ハイフの場合は、色んな角度から超音波をある1点を目掛けて照射することで、その1点に波(=エネルギー)を集中させ、大きな摩擦熱を発生させています。体の奥の部分を表面からじわじわと温めようとすると、当たり前ですが皮膚が火傷してしまいますよね。波の性質を使うことでこの問題を克服している訳です。

ちなみに波の重ね合わせの原理については、以下の記事がよくまとまっています。良ければ参考にしてみて下さい。

次に「変性」についてですが、要するにタンパク質が壊れることです。タンパク質の構造が熱などによって変わり、性質が変化することを「変性」と呼んでいます。

ではタンパク質とはそもそも何でしょうか。イメージし易いように一言でいうと、「アミノ酸が大量に繋がってふわっと折り畳まれたもの」がタンパク質です。

タンパク質が変性する、すなわち構造が変わるというのは、要するに「ふわっと折り畳まれていた、アミノ酸が繋がったもの」が、熱によって振動してぐちゃっとなって、折り畳まれ方が変わってしまう、ことです。そしてこれは一度折り畳まれ方が変わってしまうと、基本的には元の形に戻ることはありません。

タンパク質の変性には色々なものがありますが、身近なものだと以下のような例があります。

例1:肉を焼く
例2:卵を茹でる


両方共どうやっても元の生の状態には戻りませんよね。モノとしての性質も完全に変わってしまいます。

ちなみに肉を焼き続けていると焦げて黒くなりますが、これはタンパク質の変性とはまた別の現象です。ここでは詳しくは触れませんが、興味のある方は是非調べてみて下さい。

以上、説明が長くなりましたが、これで「2」の意味がなんとなく掴めたのではないでしょうか。「筋膜の温度を上げてタンパク質を変性させる」というのは、要するに肉に火を通して性質を変えているようなものです。しかも肉を焼いたり茹でたりすると縮みますよね。「3」については、同じように筋膜が縮むことで、肌が皮下組織ごと持ち上がってたるみが緩和される、というような至って単純な原理になっています。

参考までに、タンパク質とその変性、アミノ酸については以下の記事がシンプルで分かりやすいかと思います。

今回は長くなってきたのでこの辺りで一回区切りたいと思います。
次回「HIFU(ハイフ)は危険なのか? 科学的に考えてみた 〜後編〜」もお楽しみに!

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