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ACE HOTEL KYOTO - エースホテル京都【京都の新しいホテル】
エースホテル京都は、旧京都中央電話局を再開発した商業施設 新風館 をさらにリニューアルした際に、その中心的な施設として2020年6月に開業したホテルです。私は2020年9月に宿泊し、その後2022年にも何度か利用しました。
旧京都中央電話局は1983年に京都市登録有形文化財の第1号として指定された建造物です。
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烏丸通りと姉小路通りの交差点の東南側にある新風館は、写真の手前側が旧京都中央電話局です。赤いレンガの外観が印象的で、これが保存棟になります。奥に見える7階建ての建物が新築棟です。
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写真は新風館を烏丸通りの南側から撮りました。陽が当たっている新風館の手前から開放的な通路があり反対側の東洞院通りへ抜けることができます。1階の中庭や通路の周りに衣料品店や飲食店があり、地下1階には映画館アップリンク京都もあります。
エースホテル京都のフロント、ロビーは新築棟1階の北側、姉小路通りに面した位置にあります。
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烏丸通りと姉小路通りの交差点で信号待ちしているとレンガの壁にかかっているプレートに気がつきます。
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風雨にさらされて読みにくくなっていますが、「近畿電気通信局管内自動式電話交換創始ゆかりの地」と書かれています。ここが旧京都中央電話局である証しのようです。
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新風館の南側はNTT京都支局です。烏丸通りの反対側、東洞院通り沿いに「京都電信電話発祥の地」という碑がありました。このあたり一帯が京都の電信電話の拠点だったようです。
ホテルに入ってみます
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北側の姉小路通りに面したホテルのエントランスを入ると、すぐ目の前に丸いデスクがあります。ホテルのフロントです。写真はロビー側から撮ったもので、写真左側がエントランスになります。写真右側壁にかかっているのはファブリックアート。これはエントランスから入ると斜め右上に大きなアートとなって、目に入ってきます。鹿児島にある障害者支援のライフサポートセンター『しょうぶ学園』の人たちがさまざまな布に刺繍してつなぎ合わせた作品でした。
写真の左側手前には長いテーブルと応接セットがあり、おしゃべりをしている人たちやパソコンに何かを打ち込んでいる人たちもいます。自由に利用できるパブリックスペースのようです。
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ロビーに面して スタンプタウン・コーヒー・ロースターズ(STUMPTOWN COFFEE ROASTERS)がありました。アメリカ・オレゴン州のポートランドを拠点とするコーヒー店で、海外進出はここ京都店が初めてということです。
ロビーで過ごしている人たちはここでコーヒーを買って楽しんでいるようです。ホテルのエントランス外側にもテーブルセットが置いてあり、コーヒー片手にのんびりしている人たちもいました。
スタンプタウン店内には洒落たカウンターがあり、このカフェで過ごしてもかまいません。窓側のカーテンも綺麗ですし、照明も独特です。私はテイクアウトにしてもらい、部屋で楽しみました。
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階段の下はアート作品の展示場になっています。ガラスを隔てて中庭が見える比較的明るい場所です。期間限定で作品を入れ替えており、ここに来るたびに新しい作品に出会えます。2020年9月に宿泊したこの時は滋賀県甲賀市の『やまなみ工房』に所属する田村拓也さんによるマーカーを使ったカラフルな作品でした。
ホテルから中庭への通路を戻りました
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中庭に面してショップもあります。メゾン・キツネにはカフェ・キツネも併設されています。いろいろなところでコーヒーを楽しめます。
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角にはビームスもありました。
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お店の前の中庭には草木の中に緩やかな坂の通路が設けられています。階段が不都合な場合はこちらを利用するのがいいようです。現代アートの 名和晃平 さんがディレクターを務める Sandwich Inc. がこの中庭のデザインを手掛けたということでした。写真左側の縦に長い作品は名和晃平さん自身の ETHER(OCTAGON) で、Sandwich のウェブサイトには「生命力の永遠性を象徴する作品」という説明がありました。
宿泊した部屋を紹介します
ヒストリックキング
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旧京都中央電話局の保存棟にある広さ54㎡のヒストリックキングです。2020年9月に宿泊した部屋です。
ドアを開けて入ると、正面に柚木沙弥郎さんのアートピースが出迎えてくれます。
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ベッドルームはコーナールームになっていて、烏丸通りと姉小路通りに面しています。はす向かいのNHK京都放送局も良く見えます。ここにも柚木沙弥郎さんの作品がありました。
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壁側のデスクは窓寄りがミニバーを兼ねていて、お茶やコーヒー、バルミューダのケトルが用意されていました。デスク真ん中、電話の隣にあるライトブルーのものは紙パックのミネラルウォーターでした。部屋にギターが置かれているのもエースホテルの特徴のようです。
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コーナーの壁にはテレビが掛けられており、その下にレコードプレーヤーとアンプ、それにレコードが数枚用意されています。自由に音楽を楽しんでいいようです。レコードはフロントで別のレコードと交換してもらえるということでした。
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洗面台が2つありました。鏡の下、中央の戸を横に開くと歯ブラシなどが置かれています。
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石鹸置きはロビーに飾られていたファブリック・アートと同じく 鹿児島のしょうぶ学園の人たちによるデザインです。左側にあるような動物を描いたものがよく紹介されているようですが、私は右側の数字の羅列もおもしろいと思って写真を撮ってみました。
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バスルームは海外によくある、床にバスタブを置くスタイルです。窓は烏丸通りに面して、淡い光が差し込んできます。景色はぼやけて輪郭がほとんどわかりませんので大丈夫だとは思いますが、私は少し抵抗がありました。夜は自動車のぼけたヘッドライトが横に動いていきます。写真左奥に独立したシャワールームがありました。
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部屋のドアを内側から撮ってみました。壁から出ているコート掛けは背の高い人だと目の高さになりますので、ちょっと気になるかもしれません。靴ベラと並べてある手帚きには「NOT NOW」と書かれています。いまじゃないよ、いまはやめてくれ、という意味になるのでしょうか。室内でゆっくりしたい時はこれをドアの外側に掛けておくと、ホテルの人に対して DON'T DISTURB (起こさないで、邪魔しないで)と同じ意思表示になるということでした。
デラックスキング
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デラックスキングは新築棟高層階にある広さ30㎡の部屋です。2022年に何度か利用しました。やはり、柚木沙弥郎さんの掛け軸がこの部屋の中心にあります。
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デスクの右横で灯りがついているのがミニバーでお茶、コーヒー、ケトルが用意されていました。2022年の写真ですが、このころ、ミネラルウォーターは瓶詰めに変わっていました。また、紙袋に入っているのはスタンプタウン・コーヒー・ロースターズのウェルカムクッキーでした。
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バスルームにシャワーが設置されています。ガラスドアで閉めることができるので、水はじきを考えると、こちらのほうが使いやすいかも…
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洗面台は1つだけになります。この部屋でも鏡の下に歯ブラシなどがありました。
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窓側のベンチにレコードプレーヤーがありました。この部屋にはギターはありませんでした。
ホテルの中には他にも柚木沙弥郎さんのデザインが…
柚木沙弥郎さんのデザインが他にもありました。
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部屋の壁掛けにはもう一つのデザインがありました。
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フロア廊下のところどころに掛けられている 部屋の方向の案内板 には柚木沙弥郎さんによるフォントが使われていました。
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エレベーターホールにある案内板も…
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2階の案内板はこうなっていました。
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そして、スタンプタウン・コーヒー・ロースターズのポットを描いた看板も柚木沙弥郎さんの作品でした。
ルームカードキー
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ルームカードキーの写真を2つ並べました。左側がオープン当時のカードです。2022年5月に宿泊した時には、カードが変わっていました。それが右側の木製のカードです。私はどちらも、それぞれの良さがあっていいなと思っています。
レストラン
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2020年9月に宿泊した時は、ホテルの外で外食できるところが限られていたので、ホテルのイタリアンレストランで済ますことにしました。3階の Mr. Maurice’s Rooftop Bar(ミスター・モーリスズ・ルーフトップバー)です。中庭側に空間が広がっています。
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そして翌日の朝食会場も同じレストランでした。オムレツのアメリカンブレックファーストです。
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ルーフトップバーの端まで行って、中庭方向を撮ってみました。下の木々が植えられているのが中庭で、それを囲むように建っている3階建てが旧京都中央電話局の保存棟。右側の建物は新築棟で、木を組んで支えている様子に隈研吾さんによる設計監修であることがうかがえます。そして、空を見上げると隣の建物がのぞいています。左側の塔はNHK京都放送局で、いろいろなアンテナが設置されていました。
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2022年1月に宿泊したときは、結婚式などにも使われるバンケットルームが開放され、そこでの朝食となりました。メニューも充実しており、私はエッグベネディクトにしてみました。
アクセス
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新風館は京都市地下鉄の烏丸御池駅に直結しています。京都駅から地下鉄烏丸線で3つ目の駅で、京都駅方向の改札から新風館に入ることができます。
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そして、これが地下鉄の改札フロアと直結する連絡口です。新風館側は地下2階になります。この先にあるエスカレーターを2つ上ってください。地上1階、中庭の近くに出ます。ビームスの横をメゾン・キツネの方向に進むと、スタンプタウン・コーヒー・ロースターズの中庭側出入口が階段の先にあります。その手前右側がホテルへの連絡通路になっています。
2022年にエースホテル京都を何度か利用しています。ホテル自体の使い良さもありますが、もう一つの大きな理由が 交通の便利さ でした。地下鉄との接続がいいのです。新幹線で京都駅に到着した時に雨が降っていても、濡れずにホテルの部屋までたどり着けます。飛行機利用で大阪伊丹空港からだと大阪モノレール、阪急線、京都市地下鉄と乗り継ぎは大変ですが、それでも濡れずに済むのです。それに烏丸御池駅は地下鉄の烏丸線と南北線の乗換駅で東西南北のどこへ行くにしてもすぐに移動できるというメリットもあります。
烏丸御池駅周辺をちょっと紹介します
エースホテル京都に泊まると、時間を見つけては烏丸御池駅周辺を散歩しました。そのいくつかを紹介します。
中京郵便局
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新風館の通路を通って東洞院通りに出ると、向かい側に中京郵便局があります。郵便局は改築され、その時も南側の旧庁舎は外壁と屋根が保存されました。その保存された部分が京都市の登録文化財に指定されています。
旧日本銀行京都支店(京都文化博物館別館)
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中京郵便局の南側は三条通りです。東に進むと次の角にも歴史的な建造物があります。現在は京都文化博物館別館となっている煉瓦造りの旧日本銀行京都支店です。この建物は国の重要文化財です。
パティスリー・サダハル・アオキ・パリ
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新風館を東洞院通りに出て、北に向かって御池通りの交差点を渡るとザロイヤルパークホテルがあります。建物の中、フロントの手前にあるのが パティスリー・サダハル・アオキ・パリの烏丸御池店です。お店が開いていれば道路に立て看板が置かれるのですぐわかると思います。
東京にも何店舗かありますが、ここでは京都らしいものを扱っているということです。この時は店員さんに京都の柚子を使ったチョコレートを勧められ、おみやげに購入しました。
夏はここでシューアイスクリームを買って部屋で食べるのも楽しみの一つでした。帰り道に寄って買っていくのですが、夕立ちに会うと、地下鉄駅の通路を通ってきたとしても、そこからこのお店まで雨を遮るものがほとんどなく、あきらめてしまっていました。残念でした。
イノダコーヒ本店
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さきほどの旧日本銀行京都支店からさらに東側へ1ブロック進み、南側に曲がるとイノダコーヒ本店があります。朝7時に開店しますので、その時間を目安に散歩がてらにやってきますと、(当時は)並ばずに店内に入ることができました。
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私の朝食メニューです。コーヒーの定番「アラビアの真珠」とサンドイッチ、それにマッシュルームスープです。京都駅にもお店があって新幹線に乗る前に持ち帰りにしてもらうことがあるのですが、マッシュルームスープはテイクアウトメニューにはなく、あきらめていました。そんなこともあり、店内で食事できるときはこのスープを頼んでいます。サンドイッチはその時の気分で選び、食べきれなかったら包んでもらっています。この時はタマゴのサンドイッチでした。
京都国際マンガミュージアム
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烏丸御池駅から北へ数分歩くと、京都国際マンガミュージアムがあります。最近は廃校した小学校をホテルとして活用する例がありますが、ここは旧龍池小学校の校舎を利用したミュージアムです。マンガの歴史を学べるうえに、何よりたくさんのマンガが用意されているのがうれしいです。ゆっくりと読書時間を取れるといいのですが、旅行中はそれほど時間を確保できないので次の機会に、となってしまいます。次の機会をいつにするかは考え中です。現在、荒俣宏さんが館長を務められているということです。
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(2023年7月15日)
【京都の新しいホテル】を9つ紹介しました
2023年4月から始めた【京都の新しいホテル】は今回の エースホテル京都で、考えていた9か所をすべて紹介したことになります。私がビジネス利用したうち、オープンしてから5年以内のホテルです。
9つのホテルの位置と、最寄り駅は次のようになります。
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「新しい」という条件として、当初、私が宿泊した時点でオープンから5年以内と考えていましたが、どうにか掲載した時点でも5年以内に収めることができました。
この投稿が2023年7月ですので、すべて2018年7月以降にオープンしたホテルです。2020年の東京オリンピックを控えて、東京だけでなく京都でもホテル建設が進んでいた時期になります。結局、オリンピックは2021年に延期され、それも無観客となってしまったため、思惑は外れてしまうのですが、現在ではインバウンド需要(外国人による日本旅行の需要)が旺盛で、予約を取りづらくなっているようです。
2019年9月から11月にかけて、ラグビーワールドカップが日本で開催されました。試合会場が無い京都でも、試合観戦のため次のスタジアムへ移動する途中で京都に立ち寄る人たちもいたと聞きます。実際に屈強な男たちが、でかいスーツケースを引っ張って歩いている姿を見かけたこともありました。この時期も京都のホテルは予約がなかなか取れませんでした。2018年から2019年初めにオープンできたホテルはこの需要を取り込むことができたようですが、その後の新型コロナウイルス感染拡大はやはり大変だったようです。
例えば、河原町三条のクロスホテル京都は、私が京阪三条駅近くのブックオフや河原町通りの丸善本店へ足を運んだ際に、その前を通るのですが、長い間休業していました。
今回取り上げたエースホテル京都は当初、2020年4月開業で、私は早い段階で予約していたのですが、開業延期が理由とはいえ、ホテル側から予約キャンセルの連絡が来るという初めての経験をしました。その後、2か月遅れでオープンし、私はその後で予約し直しました。
「新しいホテル」の基準をオープンから5年以内としたのは、そのぐらいであれば、設備などの不具合も少ないという経験からでした。
料理家の 山脇りこ さんが最近出版した『50歳からのごきげんひとり旅』の中に、次のことが書いてありました。
ひとり旅のホテルで譲れないと思う要素は「清潔さ」、「安全性」、「良い立地」の3つで、その中でも 清潔さ は絶対にはずせない条件で「比較的新しい、オープンから1、2年、せめて5年以内のホテルを探すようにしています」とありました。オープンの中には新築だけでなくリノベーションも含まれますが、それは全館リノベ、フルリノベとも書いてありました。運営主体が変わってホテル名を変更するのにあわせて外装をきれいにしても、部屋の中身がほとんど変わってなかったところもあるという私の経験とも一致すると思います。
5年という区切りのよい期間を閾にしてもいいのだろうかという不安があったのですが、5月のゴールデンウィークに nol kyoto sanjo を書き上げた直後にこの本に出合って、何か応援してもらえたような気持ちになったことも思い出しました。
また、老舗ホテルについても山脇さんは「掃除が隅々まで行き届いているとわかり、手がかけられている美しさを感じることがあります。でも、やはりそれは稀なこと」とありました。これも共感できます。ここで紹介した9つのホテルには今後、稀な方のホテルになってほしいと願っています。
この本、タイトルが「50歳から」となっていますが、年齢に関係なく参考になりそうです。【京都の新しいホテル】シリーズでは取り上げなかった別の京都のホテルも紹介されていましたので、これからの京都旅行の参考にしたいと思っています。
当初、1週間ごとにアップしようと思っていた【京都の新しいホテル】シリーズですが、私自身のスケジュールの都合だったり、別の投稿を更新したりとあって、9つを紹介するのに3か月を要してしまいました。次に何を書こうかはまだ決めていないのですが、1か月単位で何かをアップできればいいかなと思っています。それくらいの気持ちでいれば1か月に2本か3本を投稿できるかもしれませんので…。(そう言っておきながら、すぐ何か思いつくかもしれませんが…)
それでは、これからもよろしくお願いします。
2023年7月15日
和泉 佑里
(参考文献)
『50歳からのごきげんひとり旅』山脇りこ 大和書房
ホテル選びで大事な3つの要素
宿泊におすすめのエリアと歩き方ーー京都その2
【京都の新しいホテル】で紹介したnoteのページ
GOOD NATURE HOTEL KYOTO
梅小路ポテル京都
クロスホテル京都
nol kyoto sanjo
三井ガーデンホテル京都河原町浄教寺
THE THOUSAND KYOTO
ザ・ゲートホテル京都高瀬川 by HULIC
MOGANA
ACE HOTEL KYOTO