教室における安心感が求められる時代に教師ができることは何か。
今回の内容は「教室における安心感」をもとに考えていこうと思います。というのも、最近よく「自己調整学習」「自由進度学習」などの輝かしい「言葉」を目にする機会が増えました。もちろん、私自身はそのような傾向には大きく賛同で、子どもたちが自己決定をもとに自信の自律性を高めながら学習を進めていくのは、これからの日本社会において必須のことだと感じています。特に私は教師の管理主義的なビリーフやそれに伴う指導行動には大きな疑問を抱いており、半ばその逆をいく現在の教育の方向性には大きな期待を抱いています。今回はそんな中で、改めて教室の中で求められるものは何かを考えていこうと思います。
①ゼロ段階はどこなのか?
例えば個別最適化・協働的な学習などそれに派生して色々な学習形態が提唱されています。しかし、考えておかなくてはいけないことがあります。このような概念は比較的学級において「高次」と呼ばれる次元になる考え方だということです。例えば教師になって間もない先生が、「個別最適化・協働的な学習」という言葉に踊らされて、先行実践をそのまま追試することには大きな問題があります。その問題は学級がその教師の要求に対応できる「素地」が養われていないということです。また、比較的落ち着いた学校から困難さを抱える学校に赴任した場合にも同じことが言えます。これはレベル3程度の要求をしていても、そもそもレベル0のところに学級が存在していることが要因の1つとして挙げられます。つまり、実態とやっていることがマッチしていないのです。そこをはきちがえて行う実践は返って学級を混乱させ、子どもたちをネガティブな状況に追いやってしまうこともあるのではないでしょうか。自分の学級におけるゼロ段階がクリアされているのかどうか、まずはそこに拘るべきだと思います。
②土台をつくる
土台は子どもたちが抱く安心感だと私は考えます。例えば安心感が感じられない状況でどれだけ学びの工夫が行われても限界があるのではないでしょうか。どんな最先端の授業実践を行っていても、周りの人から陰口を言われ、嫌なことをされるかもしれないという懸念を抱いたままで学習は進めることができるのでしょうか。到底無理な話だと思います。つまり、まずは子どもたちが教室内で抱く「安心感を醸成」することが必要なのです。話はそこからです。それができていないながらに様々な実践をすることは返って教室における安心感を脅かすことにつながりかねないのです。
③子ども同士をつなげること
では何をしていけばよいのでしょうか。それはまず「子ども同士をつなげていくこと」が1つのキーワードになってきます。一昔前であれば子どもは自然につながることができました。休み時間などには子ども同士で勝手に誘い合って遊びに行き、そしてケンカもしながら仲良くなっていきました。しかし、残念ながら今は違います。子どもたちは「つながる工夫」を受けなければつながれないことが増えました。これは子どもの責任ではなく、社会の変化によるところが大きいでしょう。核家族化がすすみ、地域との交流も少なくなってきている。情報化が進み、面と向かって会わなくても交流ができる。そんな社会の中では子ども同士がリアルにつながることは難しいのです。そのつながりの薄さが安心感の低下を生みます。つながりが無いことは、現状維持ではなく、低下を招いていくのです。ですから、教師は子どもたちを正しく「つながらせる」ような努力をしなければいけません。それが今の教師のスタートラインに求められる力なのです。そもそも学習は1人では限界があり、仲間と支え合いながら展開されていくべきものですから、学級の子どもたちをつなげ、安心感を醸成できるかどうかはこれからの教師に求められる大きな資質・能力になってくるのではないかと思うのです。
④終わりに
さて、今回は安心感をテーマに記事を書いていきました。みなさんが担任しているクラスに安心感はありますか。子ども同士をつなげる働きかけは行っていますか。もちろん、目先の教育実践を追究していくことは大切ですが、時には立ち止まって子どもたちの関係性を重視していくことも必要なのではないかと考えます。そのような1つの視点がこれからの教育を支える大きなポイントになってくるのではないでしょうか。