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ジョニ・ミッチェル「ア・ケース・オブ・ユー」の和訳

 お久しぶりです。今回は曲の和訳。

 最近どハマりしているジョニ・ミッチェルのアルバム「ブルー」から、彼女の中でも名曲と名高い「ア・ケース・オブ・ユー」を選んでみた。

 内容は、この当時破局したばかりだった恋人、グレハム・ナッシュ(ミュージシャン。バンド、クロスビー、スティルス&ナッシュのメンバー)とのことを歌っていると言われている(ちなみに当のグレハム・ナッシュは相当このことで落ち込んでいたらしく、それを見かねた音楽仲間のニール・ヤングに「オンリー・ラブ・キャン・ブレイク・ユア・ハート」という曲を贈られている)。

 彼女の弾くダルシマーに、心地よく絡んでいくギターはジェームス・テイラーのもの。彼らしい小回りの効く繊細なギターが、この曲をさらに味わい深いものにしている。
 また、このアルバムの楽曲は、同じく私が最近ヘビロテしているテイラー・スウィフトの「フォークロア」の世界観に近しいものを感じるのだけど、みんなはいかがですか。

Just before our love got lost you said
"I am as constant as a northern star"
And I said "Constantly in the darkness
Where's that at?
If you want me I'll be in the bar" 

私たちの恋が終わる少し前 あなたは言った
「俺は北極星のように揺るぎない」と
私は訊いた「暗闇の中で揺るぎないものなど
どこにあるというの?」と
「私に会いたいのなら バーにでもいるわ」

On the back of a cartoon coaster
In the blue TV screen light
I drew a map of Canada
Oh Canada
With your face sketched on it twice

漫画のイラストが入った コースターの裏に
テレビの灯りを頼りに カナダの地図を描いた…①
ああカナダ その横にはあなたの似顔絵
あなたの顔を 二回描いたの

Oh you're in my blood like holy wine
You taste so bitter and so sweet
Oh I could drink a case of you darling
Still I'd be on my feet
oh I would still be on my feet

ああ あなたは私の血の中に
まるで聖なるワインのように 流れている
それはとても苦く とても甘い
私はきっと あなたを一瓶飲み干せるし…②
そうした後も 決して酔ったりはしない

Oh I am a lonely painter
I live in a box of paints
I'm frightened by the devil
And I'm drawn to those ones that ain't afraid 

そう 私は孤独な絵描き
絵の具箱の中で 暮らしているの
私は悪魔を恐れるからこそ
それを恐れない人に惹かれるの

I remember that time you told me you said
"Love is touching souls"
Surely you touched mine
'Cause part of you pours out of me
In these lines from time to time

思い出す あなたが私に言ったことを
「愛とは 魂の触れ合いだ」と
確かに あなたは私のそれに触れていた
なぜなら あなたの一部が
私の中から 溢れ出ていくから 
そんなことが 時々あるの…③

Oh, you're in my blood like holy wine
You taste so bitter and so sweet
Oh I could drink a case of you darling
And I would still be on my feet
I would still be on my feet

ああ あなたは私の血の中に
まるで聖なるワインのように 流れている
それはとても苦く とても甘い
私はきっと あなたを一瓶飲み干せるし
そうした後も 決して酔ったりはしない

I met a woman
She had a mouth like yours
She knew your life
She knew your devils and your deeds
And she said
"Go to him, stay with him if you can
But be prepared to bleed"

ある女の人に会ったの
口の形があなたによく似ていて
あなたの全てを、良いところも悪いところも
知っていると言い張るの 彼女は言った
「彼と付き合ってみたら良いわ もしそうしたいのなら
でも傷つくことに 予め準備しておくことよ」と

Oh but you are in my blood
You're my holy wine
You're so bitter, bitter and so sweet
Oh, I could drink a case of you darling
Still I'd be on my feet
I would still be on my feet

でも もう既に あなたは私の血の中に…④
まるで聖なるワインのように 流れている
それはとても苦く とても甘い
私はきっと あなたを一瓶飲み干せるし
そうした後も 決して酔ったりはしない

①…カナダはジョニ・ミッチェルの出身地。離れた故郷の地図とその横に彼の似顔絵を、部屋の灯りではなくテレビの灯りで書くという、、、。情景と複雑な心境を一気に感じることができる、個人的にお気に入りの一行(二行?)だ。

②…原文の雰囲気を大切にしてこう訳したけど、解釈的には「(あなたというワインも)一瓶飲み干せるし」ていう感じなんですかね。

③…一番どう訳せば良いのか分からなかった部分。誰かアイディア下さい。

④…最後だけ、サビの頭に「でも(but)」が入っていて、前の連で登場する「彼をよく知るという女性」に反論する形を取っているの、なかなかにくいなー。


 彼女の歌声や詩、サウンドなど、全てが本当に美しい曲で、この文章を書いている間にもなんども惚れ惚れとしてしまった。

 また、第二ヴァースの「私は孤独な絵描き 絵の具箱の中で暮らしている」という部分を読むと、アーティスト同士のカップルの部屋はアトリエのような様相を呈していたのかな、とか考えてしまう。

 一番印象的なサビの部分では、元彼でありながらそれを「私の一部」と認め、最後に「それを全て飲み干しても 酔うことはない」と締める。この対比が、彼女の優しさと強さがうまく共存している部分のように感じる。こういったマインドの持ち方は恋愛だけでなく、様々な場面に置き換えられるのではないかと思う(失敗しても、それも自分の要素の一つで、その失敗だけで自分が壊れることはない、的なね)。ので、私はまだこの曲に慰められることになりそうだ。

 個人的な話になるけど、ジョニ・ミッチェルは、この曲と同じ「ブルー」に入っている「カリフォルニア」という曲や、初期の代表曲「ビッグ・イエロー・タクシー」などから、少し皮肉っぽい歌詞を書く人、という印象があった。
 しかし、この曲はかなりストレートで、彼女の身内なら誰しも「ああ、あのこと歌ってんな」と思われそうな潔さ。

 彼女はグレハム・ナッシュを始め、当時のロサンゼルスの音楽家界隈でかなりモテていたみたいだけど、こういった精神面・表現面での緩急や、それを曲として生み出せるその才能に、みんな虜になっていったんかな、と書きながら勝手に思った。

 寺尾紗穂さんが日本語で歌ってた!


じゃあね。


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