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そうだ、ヒッチハイク、しよう⑧ 香川編 後編
ロッポニカと高松観光
ヒッチハイク生活12日目。
これから一緒に四国を回ろうと約束した二日酔いでしんどそうな家出さんは、出発前に所用を済ませる為に一時離脱。私はその隙間時間を使って昨日の成人映画館ロッポニカにリベンジに向かう。
館内には私の他に、おかっぱのウィッグにセーラー服の先輩女装さんが一人。私が到着するや否や男性客がざわつき始める気配を感じる。これこれ、この為に映画館に来ているようなものだ。
映画館の客層は女装も男性も年配が多く、私のような若輩者が行くとまるでお姫様のように「喉乾いてない?ジュース飲む?」とあちこちからお声がかかり、ちやほやしてもらえる。これが気持ち良くて私は熊本の映画館には何度か足を運んだものだ。
面白い女装スポット情報を求めて店主やセーラー先輩と雑談を交わすも、愛媛は松山にもう一軒成人映画館があるが(そして四国にはロッポニカとそこの二館しかないらしい)、そこはあまりいい所ではないという情報しか手に入らず。やはり屋内でゆっくりできる女装スペースというのは都会にしかないのだろう。
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せっかく映画館に来たのだから映画も観よう、ということで「女教師 秘密」という日活のロマンポルノを鑑賞することに。
館内の公共スペースから暗いスクリーンの方へ移動すると、それまで執拗に私にアタックし続けて来ていた男性もついて来たのだが、脚を触らせる以上の事は許さない。今日の私は別に映画館に「遊びに」来ているわけではないので。
映画は流石に古くって、欲情こそしなかったのだが一本の映画として普通に観れた。
主演の山口美也子をずっと、百恵ちゃんにちょっと似てるな〜と思いつつ観ていたら、劇中で山口百恵の曲もかかったので思わず吹き出してしまった。やっぱ意識してたんだな。
サブヒロインの原悦子はポルノ業界では当時はまだ珍しいアイドル売りされてた女の子で、現代の感性で観てもやっぱり可愛いと思える。
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用事を終えて映画館まで迎えに来てくれた家出さんと合流。連れて行かれた先は駅に隣接した高級ホテル。無職二人でこんな高いところに泊まってどうするの、と思ったが「この17階から高松を一望できる景色を見せてあげたくってね」と家出さん。ブルジョワァ!
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一旦ホテルの部屋に荷物を置いて食事をしに再び街へ繰り出す。
今後毎回書くのも鬱陶しいと思うのでここで予め書いておくが、この日に家出さんと合流してから徳島で彼と別れるその日まで、私は自分の財布を一度も出していない。全ての食費、宿泊費、観光にかかる入場料などは家出さんが出してくれた。
私が知り合う無職は何故かみんなお金を持っているので、無職こそ最強の職なのではと今でも思っている。
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食事の後は腹ごなしも兼ねて歩いて高松城跡を見に行く。家出さんはその際に香川や高松についての雑学や地理歴史知識をちりばめた濃厚な解説をしてくれるので、観光ガイドとかそういう仕事をしていたんですか?と聞いてみたが、本人は「ただブラタモリが好きなだけだよ」と謙遜して譲らない。絶対向いてるだろうに。
そんなこんなでこの日は終了。ホテルから高松の夜景を眺めながらはしゃいでみたり、夜中にこっそりホテルを二人で抜け出してマックに行き、この時間に食べるジャンクフードの味に罪悪感を覚えてみたり、奇妙なことにお互いの本名も知らないままに学生時代の友人みたいな楽しみ方をして過ごしたのである。
いざ、屋島観光
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13日目の朝。ホテルをチェックアウトし、近くのカフェで軽めの朝食を摂ったら向かうは屋島。家出さんの運転でおよそ30分弱、到着したのは四国八十八ヶ所巡礼のうちの一つ、第八十四番目の屋島寺だ。
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屋島寺には屋島に古くから伝わる化狸、太三郎狸が祀られている。なんでもその昔死にかけのところを平重盛に救われた狸が、以来平家の守護として忠誠を誓い、その子孫が太三郎狸なんだとか。
他にも屋島寺には、源氏軍が血のついた刀を洗って水が赤く染まったことから名付けられた血の池と呼ばれる名所もあり、屋島は源平ゆかりの地として彼らの痕跡を多く現代に語り継いでいる。
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四国と言えばやっぱりお遍路。これは県外国外の人間のみならず四国民にとっても同様で、コンビニに行けばお遍路さん用の休憩スペースが当たり前のように設置してあるし、お遍路さんには親切にするという文化が四国にはかなり強く根付いているように見受けられる。
今旅中に八十八ヶ所を回ることはまず不可能だから、また四国を旅する機会があれば今度はヒッチハイクでお遍路をしてみるのもいいかもなあ、と半ば冗談で言ってみたら、「お遍路ってのは程度の差こそあれど自分の力で、自分の時間と労力を使って回ることに意味があるのだから、ヒッチハイクとは相容れないんじゃないかな」と家出さんが呟くのを聞こえないフリをした。
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巡礼を終えたらお次は水族館。
屋島にある新屋島水族館は山の上にあるちょっと珍しい水族館。何度も閉館の危機に遭いながらもギリギリ存続している限界水族館らしく、手作りのPOPなど地道に頑張っている様子が伝わってきて応援したくなる。
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その応援したい気持ちをカタチにすべく、ペンギンの餌やり体験を敢行。まあ餌をあげたのは私でも、実際の援助をしたのは家出さんの財布なわけだが。
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香川での二食目のうどんを堪能した後は一度高松市内まで戻って、今度は栗林公園を散策。同じ大名庭園としては、日本三名園として名高い岡山の後楽園、金沢の兼六園、水戸の偕楽園が有名であるが、それらに引けを取らない美しい日本庭園であることは実際にこれら三名園全てと栗林公園を訪れたこの私が保証する。
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今回の移動と各県雑感
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高松-屋島-栗林公園 ヒッチハイク
香川県 (県庁所在地 高松市)
四国最初の県はうどん県香川。高松において今後の四国旅を大きく揺るがす運命的な出会いをしたが為に、四国において最も好きな県として輝くと共に一生忘れられない思い出となった。
堪能した名物 瀬戸大橋、骨付鶏、四国健康村、丸亀競艇、うどん、ロッポニカ、高松城跡(玉藻公園)、屋島寺、新屋島水族館、ざいごうどん、栗林公園