そうだ、ヒッチハイク、しよう⑥ 岡山編 後編
レッツ岡山観光
快活での仮眠から目覚めたのがお昼前。そこからバスに乗って岡山駅へ到着後、駅のコインロッカーに荷物を預けて岡山観光開始。
ここに来る以前にいた場所が山口市や周南だったこともあって岡山があり得ないくらい都会に思える。
桃太郎大通りを通っていざ岡山城へ。
かの熊本城を有する熊本県民として、並大抵のお城じゃあ感動できないだろうなどと高を括っていた私を一発でノックアウトしたこの圧倒的な存在感の城が岡山城である。
現地で観ていたその瞬間には知らなかったのだが、どうやら令和の大改修と呼ばれる大型補修・補強を経て生まれ変わったばかりだったらしく、岡山を訪れたタイミングも完璧。どうりでこんなに綺麗な訳だ。
お城の近くには日本三名園のひとつ、後楽園もある。普段の私であればわざわざ入場料を払って庭を歩いて見て回るなんて、考えただけでも渋い顔をしそうなものなのだが、この時の私はまず間違いな生き生きとした顔をしていた。楽しい!
あれ? 岡山って思ってたよりかなり素敵かも!
後楽園の散策からの帰りがけ、たまたま見つけた県立美術館で和田誠展をやっているのを発見し、吸い込まれるようにして館内へ。
私にとっての和田誠と言えば、SF小説の表紙絵でよく見てたなあ、と言った印象でしかなかったのだが、いざこうして作品群を目にするともっと身の回りの色んなものが彼の作品であった事に気付かされる。
例えば、ゴールデン洋画劇場のオープニング。他にも、タバコのハイライトのパッケージも彼によるものであるらしい。ここまで来るともう、日本人で和田誠の絵に触れたことのない人なんて存在しないんじゃなかろうか?
お城を見に行き、庭園を散策して、美術館で芸術に触れ、なんと文化的に充実した一日だったことか!
トドメはロッカーに入れた荷物を取りに戻った岡山駅で買った吉備だんご。これがまた美味い!!もはや止まる所を知らない岡山への愛。
帰る場所ができました
快活で吉備だんごを頬張りながらお仕事の募集をしたらば、約束が出来たのが二人。一人目は奥手なおじさん。特に印象に残るような出来事もなく、普通に迎えに来てもらった後ホテルで過ごし、終了後はまた快活付近まで送ってもらった。
次の約束のお相手はホテルではなく自宅で遊びたいとのことで、そのまま家に泊めてもらうことまで決定していたので快活はチェックアウト済みだ。
こうしてお呼ばれしたおじさんのマンション。よくまだ会ったことない人を家に呼べるなあ、なんて思っていたけれど、おじさんは単身赴任で岡山に来ているらしく、なるほど、一時的な住まいであれば確かに何か問題が起きても簡単に引き払えるし割り切ってこういう遊びにも使える訳だ。
おじさんは岡山に来る以前の単身赴任先でも女装子を(言い方は悪いが)飼っていたことがあるらしく、彼のようにお金に余裕のあるおじさんがお金に余裕のない若い女装子を囲うというのも、私にとってもよく身に覚えのあるパターンであるから、逆に安心してその優しさに甘えることが出来る。
岡山県への愛情とお世話になったおじさんへの感謝の気持ちを込め、以下おじさんを岡山さんと呼ぶ。
ヒッチハイク生活も8日目を迎える。眠い眼を擦りつつ昼過ぎにのそのそと起きてみれば、既に岡山さんは合鍵を置いて仕事に出かけていた。
観光は既に十分堪能できていたので、今日は次の県への出発に向けて仕事をこなしつつ、夜は界隈でも有名なミックスバーへ。そして明日は四国へ渡る前に児島へ移動するつもりでいる。という計画を昨夜のうちに岡山さんには話してあるのだが、それなら明日までこのマンションで自由に過ごしてもらっていいし、夜はバーへの送迎まで買って出てくれた。なんていい人だろう。
とは言え流石に男性の一人暮らしの家にトリートメントはなかなか置いてないので、ホテルで会うというのを前提に仕事を探す。この長い髪で仕事はもちろんヒッチハイクもこなしている訳だから、髪のケアは命綱のケアも同義なのだ。
待ち合わせ場所はマンションから近い神社で、そこへ現れたのはわりと若い男性。
もう定番となっている「ヒッチハイクでここまで来た」という話をしながらホテルへ向かい、ひと仕事終えた所で男性が「ホテル代の手持ちが無かったから下ろしに行きたい」と言う。プレイ終わりで気の抜けていた私はうっかり二つ返事で了承してしまい、そそくさとホテルの部屋から出ていく男性を見送ったところで即後悔。
やっちまった。これは帰ってこないパターンだ。
仕事の一万も入ってこない上にホテル代も自腹かぁ、と腹を括ったのだが、なんと若い男性は律儀に帰ってきてくれた。これはきっと私の岡山県への愛が通じたのだと一人になったラブホテルの部屋でしみじみと感動するのだった。
心のどこかで人間の性善説を信じ切れていなかった自分を反省しつつ、ゆっくり風呂に漬かり髪の手入れも済ませる。
ちょうど良いタイミングで岡山さんから仕事が終わったとメールが入ったので、そのままホテルまで迎えに来てもらい、晩ご飯におすすめの町中華へ連れてってもらう。生憎写真を撮り損ねてしまったので紹介することが出来ないのだが、野菜が信じられないくらい美味しくて、もし将来岡山に住むなら絶対行きつけにしたいほど絶品だった。
小雨の降り頻る中、岡山さんの運転でミックスバー、プラネットへ向かう。
バーにも同行するよう誘ったのだが、翌日も朝から仕事だからお酒は我慢しないと
いけないのでやめておく、気にせず楽しんできて、とのこと。それでも「終わったら電話してくれれば迎えに行くから」と言ってくれるその背中には後光が射しているようにも見えた。
いよいよ店内へ。一人で知らないバーに入るのはなかなか勇気がいる。
界隈に馴染みのない人の為に説明すると、ミックスバーとは男性女性女装男装を問わずにジェンダーオールフリーで誰でも気軽に楽しめるバーのことだ。
もちろん、そういう性的多様性に関して寛容でいられない人はお断りされるのだが、純女完全お断りのこともある女装バーやゲイバーなどに対して、ミックスバーはわりとオープンな雰囲気で女性の一人飲みなども多い。
今回もカウンター内には女性、女装でお客さんにも女装、女性、男性と多種多様。これぞミックスバーと言った感じの雰囲気。
本来なら初めてお店に来た女装というだけでも一晩でも二晩でも語り尽くせるほどの話題であるのに、この女装はそれもヒッチハイクでここまで来たと言うのだから、そんな美味しいネタに食いつかない人はまずいない。
特に店長の女性は色々と気にかけてくれたり励ましてくれたりで、これから日本一周しに行くのだという私に対して、絶対帰りにもまた寄って無事に帰ってきたという報告をして欲しいと言ってくれた。
必ず帰ってきます、と約束をする。旅の途中に帰る場所が出来たという事は孤独な旅の中で精神的な支えとして大きかった。と、同時に途中で挫折することは出来ないな、と気を引き締める。
閉店時間になり店を出た後、岡山さんに迎えに来てもらう前に一件仕事をこなしに行く。今回のお相手は軽トラで颯爽と現れた矢沢永吉マニアの男。YAZAWAのオールナイトライブに参加した話は面白かったし、競艇も好きだということで意気投合。これから私が行く児島競艇場ではカレーが美味しいという話を教えてもらった。
岡山最終日
昨晩は日が昇り始める頃に帰宅。岡山さんは午前中だけ仕事があるので、自分が帰って来るまで仮眠しておけという言葉に甘えて一眠り。朝マックと共に帰宅してきた岡山さんは食事の後で最寄り駅まで送ってくれた。プラネットだけでなく、岡山さんの存在もまた私が岡山に戻ってくる理由の一つなのは言うまでもない。
ジーンズストリートを擁する町、児島は国産デニム児島ジーンズで有名な聖地。
しかし私が児島を訪れたのは勿論ジーンズが目的ではない。
そう、競艇をやりに来たのだ。
満を持してやってきた割には呆気なく全敗して、特に何も書くこともなく競艇は終了。
私は全てが終わった後でこの旅の記事を書く為に、旅行中ずっと簡易的な日記を書きながら過ごしていたのだが、この日のメモにはただ「一つも当たらん。マジでクソ」とだけ記してあった。察し。
とぼとぼと駅へ戻って快活クラブへ。手痛い敗北に傷心の私は仕事をする気にもなれず、昨日頑張ったことを言い訳にして岡山最終日をのんべんだらりと過ごしたのだった。
次回、いよいよ激動の四国上陸編。乞うご期待。
おまけ 今回の移動と各県雑感
北長瀬駅(岡山)-児島駅(岡山) 電車
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