そうだ、ヒッチハイク、しよう⑮ 青森編 後編
アクティブ・ハート
ヒッチハイク生活23日目の朝を迎える。
昨晩から社宅に泊めてくれた男性がそのまま朝は遺跡まで送ってくれ、さらに朝ごはん代にでもしてよ、とお小遣いをくれた。
そういう心遣いがその千円分以上に高感度を上げるということを学ぶ。ええ人や。
三内丸山遺跡の近くには青森県立美術館があり、たまたまそこで庵野秀明展をやっていたのでふらっと吸い寄せられてしまった。
エヴァも良いけど、私のお気に入りはやっぱりトップをねらえ!。ロボットと熱血スポ根の奇跡のハーモニー。
私にはスポーツを本気で頑張るという人生経験がないが(野球部に入ったことはあるが、練習キツいのが嫌ですぐにマネージャーに転向したくらいだ)、故にそれを満たしてくれるスポ根ものに涙腺が弱い。
「お姉さま、『アレ』を使うわ」
「ええ、よくってよ」
このシーンカッコ良すぎて3万回は観た。
それにしても庵野展は観るものが多すぎて2時間でも足りない。
この後に遺跡も控えているので、常設展も奈良美智とか気になるものが多数あったが足早に駆け抜けて県美を後にする。
続いてはお待ちかねの三内丸山遺跡。
縄文時代前期〜中期の頃の大規模集落跡で、何でもこの地に遺跡があることは江戸時代から既に知られていたんだとか。
確かに歴史的史料としてはすごいのかもしれないが、この為に奈良美智をじっくり観るのを我慢したのかと思うとちょっと期待はずれかも。
縄文まで行っちゃうと時代が古すぎて、歴史的な繋がりを感じにくいというのもある。
そんなこんなで観光を終えて市内に戻ったのがお昼過ぎ。
本日遅めの昼食として頂くのは、青森名物の味噌カレー牛乳ラーメン。
なんじゃそら、と思われるかもしれないが実際にあるのだ。
現物をご覧頂こう。
ちゃんと味噌の味もカレーの味も牛乳の味もして、不思議な感じ。べらぼうに美味い!とは言わないが、名前から想像されるようなゲテモノ感のある味ではなく普通に美味しい為、ちょっとネタにもし難い。ご馳走様でした。
因みにこのラーメン屋はまちなか温泉のすぐそばにあるので、食事の後は温泉へ。
温泉でしっかり汗を流して、青森を発つ前に最後にもう一つだけ寄るところがあった。
Fly me to the moon
それが今旅でも屈指のアングラスポット、古川貸間である。
ある程度界隈の知識のある九州の女装民にわかりやすく説明すると、ネカフェ+P3といった感じ。要はネカフェ発展場である。
ソファやテレビのある共有スペースを中心に、パソコンやマットレスの置いてある個室が数部屋。女装さんは個室を借りる料金を払って鍵を受け取ると、そこで着替えを済ませて共有スペースでお喋りを楽しんだり、個室で発展したりする。
P3は個室の料金ではなく入場料を払うのでどちらかと言えば大阪の小町に似たシステムではあるが、週末だと言うのに人気はあまりない。
少なくとも私が入室した時にはご覧のように誰もいなかったし、着替えや化粧を終えて個室を出た時点でも、共有スペースのソファに一人おじさんが座っていたくらいで青森の女装さんとの交流を期待していた私としては結構がっかり。
仕方ないので普通にネット掲示板で仕事を募集して貸間に来てもらい、発展場にいるのにわざわざ外出してホテルへ行くという無駄骨。ちょっと衛生面とか気になるし。
お仕事に現れたのは元バスの運転手だという穏やかなおじさん。
熊本で地震を体験した私と、ここ東北で東日本を体験したおじさんとで被災体験談が盛り上がる。一番大変だったのは食料よりもタバコの入手だったという話を聞いて、なるほどなと思う。私の時はどうだったかな、買い溜めしてた時期だったからかあんまり困った記憶はない。
仕事を終えて再び貸間に戻ってくると、別のおじさんが共有スペースのソファでAVを観ながら自身を一生懸命シゴいている現場に遭遇。
何もしなくていい、ただ軽く触らせてくれるだけで良いと懇願されるも、仕事を終えて賢者モードの私はそんな菩薩のような優しさは持ち合わせておらず、丁重にお断りして自身の鍵付き個室に篭り、備え付けのPCでValorant(PCゲーム)の大会を観戦。60000人を超える視聴者がいても、まさか発展場のPCで観戦してるのなんて私だけだろう。
しばらくそうやって放置していると、そのおじさんも諦めて帰ってしまったので店内には私一人。
しかもこの古川貸間は、始発が動き始める早朝まで営業しているP3や小町と違って深夜3時に営業を終了する。そんな時間に放り出されて一体どうしろというのか。
明日は北海道に向かうフェリーに乗り込む予定だったので、その時間までは結局どこかで時間を潰さねばならない。
さてどうしたものか、と考えているうちに階段を登ってくる足音。間も無く閉業時間だというのに、こんな時間から新しいお客さんだろうか、と思ったが、見覚えがある顔。二階で受付に座っていたおじさんだ。
店主は一人になって共有スペースのソファを独り占めしていた私の隣にドサっと座ると、雑談もそこそこに何かにつけて私に触ろうとしてくる。
ははーん、さてはこうやって女装が一人になると日常的に手を出してるんだな。
今となっては、この古川貸間の二階で今生会という胡散臭い会がやっている、運動・瞑想・記憶術・催眠術の指導をこの店主が兼任しているのか、他にもこの貸間の成り立ちなんかも尋ねたら面白い話が聞けたかもしれないので、あんなに冷たくあしらわなくても良かったかなと思わなくもないが、如何せん賢者だったもので少し早めに貸間を出てフェリー乗り場から一番近い快活へと歩き出したのだった。
ブルーウォーター
ヒッチハイク生活24日目。
少しだけ仮眠をとって、朝からフェリー乗り場へ歩いて行った。
いよいよ北海道だ。北海道まで辿り着けたなら、この旅も一つ節目を迎える。
乗り込むのは青森と函館を結ぶ津軽海峡フェリー。
船内はこんな感じ。もうちょっとお金を払えば個室やらちょっと豪華なところにグレードアップ出来たのだろうが、これは貧乏旅であるからもちろん一番安い自由席。乗客も座ってお喋りしていたり、横になって仮眠をとっていたりと思い思いに過ごしている。
ひょっとしてこの船内にいるうちに、車を伴ってフェリーに乗っている人相手にヒッチハイク出来るんじゃないだろうかとも考えたのだが、まあせっかくなら函館も観光したいのでやめておいた。
そしたら下船の際に徒歩で乗ってた人の人数確認を行っていたので、結果的にしなくて良かったことに。
そんな訳で、夕方由美子は無事に人生初の北海道の地へ降り立ったのである。
おまけ 今回の移動まとめと各県雑感
青森-函館(北海道) フェリー