そうだ、ヒッチハイク、しよう④ 山口編 後編
ヒッチハイク3台目 山口市内から周南へ
温泉を出たら山口駅へ向かって再び歩き始める。皆が皆、山口市には何もないと口を揃えて言うのだが、熊本なら熊本駅と同格であるはずの山口駅の小ささを見てその言葉を意味を理解する。
駅近くには商店街があり、お腹も空いていたのでgoogleマップで手頃な店を検索してみると、個人でやっているタイ料理のレストランを発見。店主の人柄を褒めるレビューも散見され、コミュニケーションの下心があった私はこの旅はもちろんのこと、タイ旅行の思い出話なんかも披露できるんじゃないかと淡い期待を抱いて店まで歩いたのだが、残念ながらclosed。
15時という微妙な時間帯だったせいか、ほとんどの店が準備中という看板を出していて驚いた。ここらでは昼飯時を逃すと、食べ物にありつけないのかも知れない。仕方ないので諦めてネカフェを目指して歩き始める。
今回泊まるのは快活クラブ。快活は寝やすいしポテトは美味しいしで最高。この時はまだ知らないが、これから先、全国に存在する快活クラブには待機所兼宿泊所としてずっとお世話になりっぱなしになるのである。
そんな訳で今夜の仕事が決定。今回のお相手がなんと偶然にも次の私の目的地である周南方面から山口市内へ来るというので、迎えに来てもらった後にそのまま周南へ引き返し、そっちのホテルで出来ないだろうかとお願いしたところ、快諾してもらえた。うんうん、これもまたヒッチハイクだね。
仕事が終わってから来るというのでお迎えは夜中になり、周南へたどり着いたのは草木も眠る丑三つ時。少しオタクっぽい見た目と中身に反して、仕事はバーテンダーであるらしい。それでもって本人も女装をして遊んでいた経験があるとのことで、移動中の車内は深夜であっても会話の絶えることはなかった。
向かったホテルは熊本の田舎にもあった戸建型の民家のような古びたラブホ。熊本でも人数が多くてもバレにくいという理由で複数用として使ってたようなやつだ。安いしホテル感もあまりないのだが、周南まで乗せてくれた上に翌日は私が周南を目指した理由である競艇場まで送ってくれるというのだから、不満などあろうはずもない。
お互いに気をやって疲れ果てて眠っていた私。ゴソゴソという物音に目を覚ますとそこには先ほどまで普通にオタクっぽい男性だったはずの彼が初音ミクのコスプレをして立っているではないか。(これにより以下、彼のことをミクちゃんと呼称する)
いや、確かに以前女装していたとは聞いていたが、今回もその準備をしてきているとは聞いていない。ていうか、準備してるなら最初から出しなさいよ!
ミクちゃんの恥ずかしがる姿は不意に可愛くて、普段は滅多にない二回戦に突入するのだった。南無。
全都道府県巡りと、全競艇場巡りと。
そして迎えたヒッチハイク生活4日目。昼前にはミクちゃんに競艇場まで送ってもらったのだが、この日の徳山は思ったより早くからレースが始まっており、到着した時点でもう前半戦が終了しようとしていた。
ボートには疎いという人の為に簡単に説明すると、全国にある競艇場は1日に行うレース数は12と決まっているものの、その開始時間はバラバラで、朝からやっているところもあれば夕方から夜までやっているナイター専門の競艇場もあるのだ。
さて、競艇場に果たして何用で訪れているのかと問われれば、そりゃ勿論競艇をやりに来たのであるが、何を隠そう私は結構な博打好きで、その昔オンラインポーカーにどっぷりハマっていたのを皮切りに、パチスロやら競馬、競艇と大体のギャンブルは好きである。東京にいた頃には府中の競馬場によく通っていたのだが、熊本に戻ってからは競馬が少し遠のいてしまい、代わりにハマっていたのが競艇だった。熊本には競艇はないのだが、近いところで福岡には競艇場が三つもあり、同じく競艇好きの友人らと福岡競艇場まで現地観戦に行った事もある。
東京・大阪などの主要都市付近に固まりがちな中央競馬と違って、競艇場は南は長崎から北は群馬まで全国あちこちに点在しており、平日もやっている。せっかく全国を巡るなら、ついでに全国の競艇場も巡ってやろうじゃないか!という目論見なのである。
もちろん、あくまで「ついで」といった感じなので、無理してまで周るつもりはない。旅のスケジュールと開催日程の巡り合わせ次第、行ける範囲で行こうといった程度の緩い目標だ。(下関にも下関競艇場があるのだが、運悪く滞在中は開催期間が被らなかった)
ちなみに、ここまで私が訪れたことのある競艇場は、人生初の競艇で行った埼玉の戸田競艇、福岡競艇、そしてこの日訪れた山口の徳山競艇場の三つである。
入場を終え、荷物を預けるコインロッカーを見つけるのに一苦労し、やっと落ち着けた頃には前半の最終戦である第6レースの投票の締め切りが迫っていた為、急いで適当な舟券を購入したのだが、このあまり深く考えていない舟券がなんと96倍の穴的中。100円がいきなり1万近くに化けたのである。
そのまま調子に乗りたかったが、この日はそれ以降的中は無し。それでも一日を通して8000円以上のプラスになったのでホクホクで競艇場を後にする。
夜はお仕事。岩国からわざわざ来てくれるというおじさんは約束をした後、ガス欠で二時間ほど遅れたり、高速の降り口を間違えたとかで散々待たされたので本当に来るのか怪しかったのだが、さすがにいいスーツに身を包んでいい車に乗っているだけあって昨日とは比べ物にならないくらい綺麗なホテルに泊まることが出来た。
5日目の朝。早起きして駅前に向かうのは、競艇場までの無料タクシーに乗る為だ。最寄りの駅から送迎の無料バスを走らせている競艇場は多いが、タクシーを用意してくれているというのはなかなか珍しい。その時の係員が私の大きなリュックを見て、「どこから来たの?」と尋ねてくれた。私がずっと求めてきたコミュニケーションの第一歩がまさかこんなところでなんて。
熊本からヒッチハイクで、と笑顔で返すとやはり驚いていたのだが、反応をもっと楽しむ前にタクシーはすんなりと出発してしまった。
到着したのは昨日と同じ徳山競艇場。夜にミクちゃんと再び仕事が決まっていた私はいつもより大胆な金額で賭け続けるのだが、一向に当たらない。馬券も舟券も、考えれば考えるほど当たらなくなるのだ。そんな中でミクちゃんから今夜は仕事で行けなくなったという、私を絶望のどん底に突き落とすようなメールが舞い込む。まいったな。
半ばヤケクソのような気持ちで勝負に出た最終レースもやっぱりダメ。しかし、復帰後初の優勝をした大山千広選手のウイニングランを見ていると、舟券は外れても素直におめでとうを言いたい気持ちになれた。
ありがとう、そしてさようなら山口
6日目の朝、いよいよ山口を旅立つ目処が立ち、決意を新たに快活を出る。
ここで旅の目的をもう一度おさらいしておこう。
まず第一の主目的は沖縄を除く全都道府県を(通り過ぎるだけでなく)きちんと訪れること。
第二の目的が全国の競艇場を出来る限り回りつくすこと。
第三の目的が、全国各地にいるオンラインゲーム友達に会うこと。
PCでやるFPS(銃を撃ち合うようなゲーム)にもどっぷりハマっていた私には一緒にそのゲームをやるネットの友達が数人いる。どれくらいハマっていたかというと、わざわざそのゲームの世界大会を観にポーランドまで足を伸ばしたほどだ。この旅の事もいずれ文章にしたいが今回は閑話休題。
四国は愛媛まで会いに行く友人もそのゲームきっかけの友人の内の一人だし、大阪、東京、京都、栃木、北海道まで全国津々浦々に点在する。既に会ったことのある人もいるが、中には初めて会う人も。せっかく全国回るのだから、本来会えないような人にも会いたい。北海道とか特に。
昼過ぎに快活を出て徒歩で向かった先は、北斗亭という中華そば屋さん。これも先のゲーム友達の一人に教えてもらった山口名物だ。
メニューはただ一つ、中華そばのみ。選べるのは麺の量だけという無骨さ。ただ、それでいい。他を選ぶ必要などない。それほど美味しかった。
中華そばを堪能した後は再び30分ほど歩いて健康ランドへ。この後、夜から人に会う予定があるのでお風呂には入っておきたかったし、健康ランドならネカフェより安く時間を潰せる。
温泉に薬草サウナ、仮眠室までフルに活用して夜21時まで時計を進めた。そう、この後に会う人物こそ山口脱出の鍵となる人物。次回、今旅でも重要な県の一つとなる岡山編開始。乞うご期待。
おまけ 今回の移動と各県雑感
山口-周南 ヒッチハイク
周南-下松SA 電車+徒歩
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