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しあわせの黄色いコーンマヨ軍艦
今日も、えびアボカドが食べたくて、新幹線と在来線が交差する駅の回転すし屋にやってきた。みんな幸せそうにお寿司を食べている中、私は、ファミリー席に一番近いカウンター席に案内された。おもむろに、粉茶に湯を注ぎ、目を閉じて、ゆっくりと喉をうるおした。この瞬間が最高に幸せだ。目を開くと、せっかくのえびアボカドが、はるか左手に消えて行ってしまった。
どうせなら、運試しをしてみよう。目をつむり、ゆっくりとお茶を飲む。そして、目を開いた時、えびアボカドだったら取る。違えば、流して、また、目をつむる。これがルールだ。
1回目。せーので、ぱっ。
「コーンマヨ軍艦。」
えびアボカドは人気だから、当たる確率は高いはずだが、コーンマヨ軍艦だ。また、目をつむる。
もう一回、ぱっ。
「またもや、コーンマヨ軍艦。」
今日は、ファミリー客が多いのか。お子様に人気のメニューだから仕方ないか。また、目をつむる。
今度こそ、ぱっ。
「おめでとうございます。コーンマヨ軍艦の3連発。」
いい加減にしろ。
もう、目をつむるのは、やめた。
レーンを見渡すと、驚いたことに、コーンマヨ軍艦しか流れていない。コーンマヨ軍艦は、5、6皿連なって流れているが、ファミリー席に着くたび、すぐに姿を消していった。
レーンを挟んで向かいのファミリー席に男の子がいた。そいつが、ニヤッと笑いながら、私に向かって、コーンをひと粒ぷいっと飛ばしてきた。
「何をする、やめろ。」
と言うが早いか、隣のファミリー席からは、兄と妹が並んで首を出し、せいので、コーンを吹きかけてくる。カウンター席の分厚いくちびるをした女性からは口紅のついたセクシーなコーンが飛んでくる。はす向かいのお父さんとお母さんに至っては、わざわざ立ち上がり、レーンを越えてコーンを浴びせかけてきた。
「やめてくれ。」
頭をふせながら、手前のレーンを見ると、今度は、5、6隻で隊列を組んだコーンマヨ軍艦から、私に向けて一斉に、コーン砲が発射されてきた。
私は、たまらなくなり、タブレットでえびアボカドを注文することにした。注文が通るやいなや、頭の上から、キッーという列車のブレーキ音が聞こえ、ドカーンという大きな音がしたかと思うと、天井が破れ、新幹線の長い鼻が飛び出してきた。ドアが開き、運転手が何かを持って近づいてきた。
「はい、お待ち。コーンマヨ軍艦1つ。」
「そんなの、頼んでないよ。」
了
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