屋上で空を#5
墨汁を水で薄めたような空だった
中学生の時の習字の時間
墨汁が足りないという人に
誰かが墨汁の入った小さな容器を
投げ渡したけど結構な距離だった
僕の席は飛ぶ容器の軌道上にあって
座ったまま背伸びして手を伸ばし
その墨汁の容器をブロックした
ほんの冗談のつもりだったけど
容器は隣の席の女の子の制服に命中
容器の蓋が緩かったのだと思うけど
墨汁が少し漏れて
白い夏の制服に黒い染みを作った
いっつもいらんことするんやから!
彼女の言葉は僕の人生に一石を投じ
その後いらんことは極端に減った