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NY観劇レポート"Power Strip"@Lincoln Center Theater (The Claire Tow)10/24/2019

リンカーンセンターのThe Claire Tow Theaterというオフブロードウェイにあたる劇場で舞台を見ました。

舞台はトルコの対岸にあるギリシャのレスボス島、2016年。偶然にも先日見たSoft Powerの2016年と設定が同じ年。レスボス島にはシリアやイラクからの難民キャンプがあります。多くはトルコから船でやってくるのですが、ここまで来ると、EUなので、その先のドイツやスウェーデンまで行けるそうです。しかし、2016年3月にバルカン諸国がこれ以上難民を通せないということで国境が封鎖されました。私はシリア内戦のこと、あまり詳しく知らずにいたのですが、調べていると今でも悲惨な状況が続いているようでショックでした。この舞台を見ていなかったら無知のままだった。

主人公のシリア人女性Yasmin(ヤスミン)もこの難民キャンプからドイツを目指していました。話は彼女の縄張り?といえるような、砂漠のような場所で進みます。電力不足で、延長コードを何本もつなげて自分専用のPower Strip=電源タップを使えるようにしています。それを使って暖をとったり、携帯電話を充電したり。

そこへやってくる別のシリア人男性Khaled(カレード?読み方忘れました)と知り合います。初めは彼女のストーブを盗むため(彼の母親は病気で凍えている)に来たのですが、お互いの事情を知るうちに二人は惹かれあいます。所々のフラッシュバックでヤスミンがここへ来たいきさつが描かれます。シリアに婚約者がいたが、反政府デモに参加する兄を心配するあまり、婚約者の家族、特に父親に嫌がられ、婚約打ち切りとなります。結婚の日程、招待状まで準備していたヤスミンはここで自分の価値を見失います。ヤスミンをかわいがっていた父親の態度も一変。

この舞台ではイスラム圏の女性がどのように扱われてきたか、そして戦地や難民キャンプでの女性被害も焦点になっています。主人公のヤスミンは、「子供のころは結婚することが夢だった」と言います。生まれてすぐ母親がなくなり、父親(舞台には登場しません)はヤスミンのことを目に入れても痛くないほどかわいがり、お嫁に行く時がお前を一番誇りに思う、と言っていた。婚約者には、自分の家族の面目が大事だから、と問題になりそうな彼女は婚約破棄をされます。キャンプで出会ったカレードを信用し、期待を抱くのですが、最後は男性の所有物になることを断ち切るため、過去と別れるための選択をします。ヤスミンは自分の体を売って、ドイツへ逃げるためのトラック代を稼ぎます。それ以前にもレイプにあったと言います。終演後、劇作家によるトークバックがありました。この作品を書くのにはかなりのリサーチをしたそうです。

作家のSylvia Khouryはニューヨーク生まれの、レバノンとフランス家系。いくつかの作品がオフブロードウェイで上演されています。コロンビア大教育学部、のちNew Schoof for DramaにてMFA美術学修士を取り、現在はメディカルスクールに在籍中!多才です。

印象的だったのは幕開けで、ヤスミンが猛スピードで歯を磨いているところ。周りへの警戒心と緊張感があふれていました。最前列で見られたこともあり舞台との距離が近く、生の舞台の空気が伝わります。オフブロードウェイはブロードウェイほど劇場が大きくないので、観客と舞台が近く、上演される演目も新しいもの、社会問題を扱ったのものが多いので私は好きです。見に行こうと誘ってくれた友人に感謝!



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