「あ」のめも帳

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感想文:「ストーリーが世界を滅ぼす――物語があなたの脳を操作する」The Story Paradox

ここのところ巷にあふれるイデオロギーについて、人々も関心を持つ機会が増えたのではないだろうか。拙者はこれまでなにかと政治に疎い人生を送ってきたのだが、動乱の時代にはいり、そうもいかなくなったことに気づいたのがつい最近である。なんともお粗末な話である。 「人新世」が「Anthropocene」(アントロポセン)の日本が訳だと知ったのもつい最近である。「アントロポセン。。。なんだよそれ。深海魚か。食べられるの?」と思いつく始末。 ダボス会議の『「グレート・ナラティブ 「グレート

    • 関連性理論を読み解く(2):論点のまとめおよび関連性理論の概観

      はじめに 関連性理論の基本構造はいたってシンプルである。関連性理論とは、「発話がいかに理解されるかということに関する理論」、つまり人々(定型発達者)の理解過程へ着目した研究である。そして理論の中核となる「関連性」とは何かといえば、ある想定がある文脈中で何らかの文脈効果をもつとき、そしてそのときに限りその想定はその文脈中で関連性をもつということである。 もし関連性理論に関するもっと簡易な要約がほしいという人がいれば、筆者を含めた他の研究者の研究ノートをあさるよりも、スペルベル

      • 関連性理論を読み解く(1):臨床の場で感じるざらっとした感情を説明するために

        1はじめに:なぜ私は彼らに共感できないのか ”仕事をするのにどうして仲間になる必要があるのでしょうか” ”他者と協力して働くという意味がわかりません” ”『人のために動きなさい』と言われて腹がたちました” 自閉スペクトラム症の就労支援の臨床の場にいると、これらの言葉に出会うことは決してまれではない。筆者も最近は少し慣れてきたが、当初目の前でこのような発言に遭遇するとぎょっとしたものだった。”えっ、そこから感覚がちがうのか………“。とっさのことでどう返したよいのか思いつかな

        • 役割距離の典型性と規範性:状況システムから読み解く「自己呈示」

          ”私は物事の成り行きに逆らわないで、それについていく。しかし、同時に、私がその情勢にすっかり包み込まれていないことだけは、知っておいていただきたい(Goffman 1961=1985: 147)。”   前稿でも前置きしたが、ゴフマンの役割距離概念は状況場面における自己呈示との関連のなかで考えられた概念である。そのためこれまで役割距離概念は行為と表出のジレンマや社会的アイデンティティとからめて論じられること多い。またゴフマン論文『出会い』における「役割距離」に関する記述にお

          役割を遂行するとはいかなる営みなのか:役割論からみるアスペルガー者の逸脱とは

          1.問題提起:役割論の理論形成過程を振り返って 本稿の目的は社会学における役割概念に基づいて、状況場面に焦点をあてた役割分析概念を、アスペルガー者(Aspergar's disorder 以下AS者)の役割遂行逸脱事例から検討することにある。H.プレスナーは役割を「自我に関するあらゆる観念を具体化することのできるある構造」と位置づけ、個人と社会をつなぐ重要な概念だと指摘しているように、社会学および人類学のなかで役割論は発展してきた。そして今日、社会学における役割論は、二つの

          役割を遂行するとはいかなる営みなのか:役割論からみるアスペルガー者の逸脱とは