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outer wildsの世界はすべてが美しい(徐々にネタバレあり)
サムネイルの絵に関しては以下を引用する。
Alex Beachum, creator of Outer Wilds, CC BY-SA 3.0 https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0, via Wikimedia Commons
ネタバレレベル 弱
旅行が趣味な人は多い。200年後の未来は宇宙旅行が趣味の人にあふれているのだろうか。これはだいぶ怪しいと思う。単に旅行が好きといっても旅行に対して期待するものは人によってまちまちだからだ。旅行先での食事に舌鼓を打ったり、旅行先で出会って人と交流したり、有名な観光地で写真を撮ったり…。少なくとも現在の宇宙には食事処はないし、宇宙人は見つかっていないし、観光地も存在しない。
もしもあなたが旅行に求めているのが誰も見たこともない景色であるならば、広い広い宇宙を旅行するのだって趣味になりうるはずだ。
そしてそんな人にこそ本作「Outer Wilds」をお勧めしたい。
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ゲームオブザイヤー2019のBest Game Directionにノミネートされた本作は終わりのないタイムループに囚われた恒星系で繰り広げられるオープンワールドアドベンチャーゲームだ。主人公の所属する Outer Wilds Ventures という探検隊の一員としてあなたが宇宙へ旅立つところから本作は始まる。
非常に異質なゲームだ。探索の目的がゲーム内で明示されないため、プレイヤーはどこに行けばいいかはもちろん、何を目標として行動すればいいかもわからない。宇宙船の操縦はシビアだし、宇宙人のコミュニケーションの形跡は断片的でわからない部分が多いし、タイムループの制限時間もある。
ゲーム制作者から全プレイヤーに告げられるのは「さあ、あなたの好奇心に従って行動しなさい」というメッセージだけだ。
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多くのウェブサイトでは本作は攻略などは見ずにプレイすべきだと語っているが、私は逆の意見をもっている。忙しい現代人にとって、ひたすら宇宙を探索するだけの時間はないだろう。それにゲーム内の謎の難易度も高い。だからあえて言おう。
好奇心に従って宇宙をさまよおう。3時間さまよってどこに行けばいいかわからないのであれば以下のヒントを参照しよう。
ネタバレレベル 中
本作の世界は驚くほど美しく設計されている。ゲームの舞台となる小さな太陽系はそれぞれが独自の特徴を持つ惑星で構成されている。砂の双子星は刻々と変化する砂の流れによってまるで巨大な砂時計のようだ。
そう、遠くから見る分には美しい。
近づけば漫画「ワンピース」の新世界編のように過酷な自然環境や生物が牙を剥く。冒頭の砂の双子星で死んだ回数は数えきれない。何度砂に生き埋めにあったことか!
Outer Wildsの世界は美しいだけでなく非常に危険だ。各惑星には、プレイヤーを脅かす様々な自然現象が存在する。
高重力、サボテン(!?)、幽霊物質、危険な生物など脅威がプレイヤーを待ち受けている。序盤は幽霊物質とサボテンが鬱陶しすぎて、後半になればサボテンや幽霊物質を除外できる便利なアイテムを手に入れるだろうかと考えていた。
安心してほしい。答えを授けよう。
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そんな便利なアイテムなど存在しない。
主人公のできることは本作では増えないし、体力ゲージが増えることもなければ酸素ボンベの総量が増えることもない。己の身一つで、己の技術と知恵によってのみ本作は突破可能だ。
あなたが宇宙船に乗った最初の瞬間から、あなたは本作の中でできることをすべてできる。
おっと、一つだけ途中で追加される要素があった。知らない人は巨人の大海へ行ってみよう。
ネタバレレベル 強
Outer Wildsは、プレイヤーに本物の宇宙飛行士になったかのような体験を提供してくれる。宇宙船を操縦し、未知の惑星に着陸し、危険な環境を探索する過程は我々一般人が夢想する宇宙飛行士の仕事そのものだ。
この体験は宇宙を旅できる高揚感と同時に常に死の危険と隣り合わせであることを実感させてくる。宇宙空間での酸素切れ、惑星表面での着陸事故、圧倒的強者による捕食、予期せぬ自然現象による死など様々な形で命を落とす可能性がある。
巨人の大海に初めて降り立った際には強い重力と、ありえないほどの竜巻が大量発生しているのを見てこの世の終わりかと思った。重力なんて関係ないと思うだろう。私は操作ミスって海に落ちたら陸に戻ってこれなくなって半泣きになった。
そして、私が恐れたのはもう一つある。
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この電気クラゲどもだ(画像はイメージです)。
初めに深海に潜った際には私は探査艇の存在に気付かず、「へー、きれいやなー。リトルスカウトを打ってみるか。おっ、電流ではじかれるやんけ!?」となってそのまま脱出した。
物語が進んで、再度探索する際に電気クラゲたちと向き合う羽目になった。まさか生身でクラゲの中に入らないといけないとは…。操作性がシビアで感電死しかかけた。あと、ほかの方法ないかな~?とリトルスカウトを核表面に発射したら、表面で弾かれたリトルスカウトが私の顔面に直撃して宇宙服のヘルメット部分が割れた。
まるで自分が宇宙飛行士になったかのような高揚感と死への恐怖の両方を味わったのは本作が初めてだ。
ネタバレレベル Max
ちなみに、私が恐れたものはクラゲだけではなくもう一つある。勘のいい読者であればアレと気づくだろう。
そう。
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アンコウである。
私は素直にゲームを進めていたので、アンコウの攻略法そのものは頭では理解していた。ただ、実際に闇のイバラを探索する際には酸素切れを恐れて宇宙船に乗って初めのほうは突撃していたのだ。
何が言いたいかといえば、宇宙船ごとかみ砕かれたってことさ(2敗)。その後、宇宙服で突貫してから酸素切れと戦いつつ探索を敢行した。
ゲームを通じて、プレイヤーは好奇心に導かれて宇宙の謎を解き明かしていく。ゲームの終わり際も「宇宙の眼に到着すれば太陽の超新星爆発を止めつつこの無限のループから脱出できるのだろうか」と疑問がわいた。
ゲーム内で出会う他の宇宙飛行士たちとの交流も感慨深い。初めは彼らのことを職場の同僚程度に考えていた。が、彼らは宇宙を探索するという目的意識を共有した同志なのだ、焚火に当たってマシュマロを共に食べた仲間なのだと考え直した。
最後に手元に残ったのは宇宙探索の喜びと、喜びを分かち合う仲間だった、私は最終局面を見せつけられてそう解釈した。
カマキリのような外見の宇宙人たちが焚火を囲み、リトルスカウトが残っているのを見るに、Herrthian(ハーシアン)たちの足跡は次世代に継承されたわけであり、得も言われぬ喜びと充足感が全身を駆け巡った。
本作は素晴らしく美しく、それでいてシンプルな作品だ。プレイできたことに感謝したい。