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平場の月

よかったです。


なぜかサスペンス系の小説だと勘違いしていて読み始めたらなかなか事件的な展開にならず、恋愛の話でびっくりしました。なぜ勘違いしていたのかは謎ですが、偶然この物語に出会えてよかったです。

平たく言ってしまえばおじさんとおばさんの恋愛の話、ラストには悲しみが待っていることを知っていて読むかたちのストーリーです。ゆるゆると日常の中で深まっていく関係が、ひとによっては退屈かもしれませんが、妙なリアリティがあって好きでした。特徴的なのは、ヒロインのキャラクターが恋愛小説にあまりないタイプだというところ。おもしろかったです。読み終わるとタイトルがじわじわきます。

久々にしっかり恋愛の話を読んだ気がしました。

恋愛にしろ友情にしろ、ひとがひとを想うのはいいなあと改めて思いました。悲しいお話でもあるのですが、なぜか、良い余韻の方が残ったのが不思議。

恋愛もなんでも、結局有限なんだけど、離れて見ると美しいんですよね。さなかにいると苦しいのに。そういうことを思いました。あと、言い尽くされてることだけど、失う前の、一瞬一瞬のすべてが本当に貴重で、当たり前と思ってる日常が実は宝物みたいな時間だということ。わかってても忘れるし、実際いちいちそんなふうに考えて生きてたらそれはそれで疲れるんですけど。

心動かされたり、考えさせられたり、思い出すきっかけになったり、現実逃避できたり、落ち着けたり、小説はやっぱりいいな。またなにか読みます。

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