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エピソード31 子泣き爺

31子泣き爺

その名の通り、本来の姿は老人だが、夜道で赤ん坊の
ような産声をあげる。
見つけた人が捨て子でもいるのか、と憐れんで抱き上
げようものなら体重が次第に重くなり、手放そうとし
てもしがみついて離れず、遂には抱き上げた者の命ま
でも奪ってしまう場合があると言われる。

ゴギャー、ゴギャーと泣くことから「ごぎゃ泣き」と
いう異名もある。

「ゲゲゲの鬼太郎」にて鬼太郎の仲間妖怪としての
活躍が有名になり、メディアへの露出も多くなった。

近年の研究により、この妖怪にはモデルとなったよう
な実在の人物も存在するらしき事が明らかにされた。

赤子の泣き真似が得意な老人で、山中を意味もなく
徘徊していた事から「悪い事をするとあの爺に攫われ
てしまうぞ」と脅しに使われたのが発展して妖怪の
伝承になったとの事であるが、これも一説でありそれ
以前から徳島では目撃伝承があったとも言われている
つまり子泣き爺は実在した風習から派生したという
説もある。


31子泣き爺 オリジナルストーリー

山の中から赤ん坊の泣き声がしている。
それを聞きつけて旅の僧が鳴き声のあたりにやって
来た。

子泣:
しめしめまたワシの泣き声に騙されて誰かやって来た
わい。ワシを赤ん坊だと思って抱き上げた奴がジジイ
だとびっくりし、さらに大岩のように重くなって気絶
させてやるんだ。

よしよし、来たぞ来たぞ、こいつも驚かせてやる。
フフフ

僧:
おやおや、かわいそうにこんな山の中に一人置いて
行かれてしまったのかい。よしよし、大丈夫だよ
私が里まで連れて行ってあげるからな。
私にはお前さんの顔は見えぬが、鳴き声からして
とっても可愛い顔をしておるのじゃろう。
これもみほとけのおぼしめしじゃ安心しなさい。

子泣:
なんじゃこの坊主目が見えぬのか?これでは本当に
ワシが里までずっとだましたままになってしまう。
それではさすがにワシの心も痛んでくる。
ど~れ重くなれば、びっくりしてワシを投げ出して
逃げていくじゃろう。           

子泣き爺は赤ん坊の重さから大きな漬物石くらいに
重くなった。

僧:
おや、どうなっとる急に重くなってきたぞ? 
どうやら私が思っていたよりかなり大きな赤ん坊
だったようじゃな。
でも大丈夫じゃ、私は寺でも一番の力持ち、大きな
寺の鐘も一人で運んだもんじゃ。
ちゃんと約束通り里まで連れて行くからのう。

子泣き:
なんてことだ、この坊主こんなに重くなってもビクと
もしない。いよいよ困ったぞ。このままだと本当に里
に連れていかれて里の人達の見世物になってしまう。
どうしたらいいものだか...。          

子泣き爺が冷や汗をかきながら悩んでいると
森の大木の裏から何かが現れた...大きな熊である。
この年は木の実が不作であったため、この熊は腹をす
かして通りすがりの人を襲いに来たのであった。

熊のうなり声にびっくりしてこの僧は倒れてしまった

子泣き:
やっと坊主から離れられた、しかしこの坊主をこのま
ま放っておくわけにはいかんな。...しかたない。 

こう言うと子泣き爺は熊に飛び乗り大岩のように重く
なった。さすがにびっくりした熊は子泣き爺を振り落
として森の中に逃げて行った。

子泣き:
いててて、熊のやつめワシを振り落としやがって、
したたか腰を打ったわい。
まあ何とか坊主も食われずにすんだし、よしとしよう
おい坊主、ワシは里の者からは子泣き爺と呼ばれる
妖怪だ、怖い目に会いたくなかったらさっさと逃げて
ゆくんだな。
...ん、どうした坊主?

子泣き爺が振り返ると、先ほど僧が倒れた場所には誰
もおらず、そこには古びたお地蔵さまがたたずんでい
た。

子泣き:
まさか、ワシが里の者や旅人に悪さをしているのを見
ていて、ワシを改心させるために坊主に化けていたの
か?...こりゃ参った!

わかったよもう悪さはしない。
これからは仲間を見つけて悪い妖怪を改心させるよう
に行いを変えていくよ。
...あ~どこかにワシの相棒になってくれるババアで
もいないかな?

道のかたわらのお地蔵様の顔がほほ笑んでいるように
見えた子泣き爺であった。

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