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エピソード55 かまど神

55 かまど神

火の神であると同様に農業や家畜、家族を守る守護神
ともされる。
一般にはかまどや炉のそばの神棚に祀るが、祀り方の
形態は地方によって様々である。

日本の仏教における尊像・三宝荒神は、かまど神とし
て祀られることで知られる。
これは、清浄を尊んで不浄を排する神ということから
火の神に繋がったと考えられている。
また近畿地方や中国地方では、陰陽道の神・土公神
(どこうしん)がかまど神として祀られ、季節ごとに
春はかまど、夏は門、秋は井戸、冬は庭へ移動すると
考えられている。
竈三柱神は(かまどみはしらしん)オキツヒコ
(奥津日子神)・オキツヒメ(奥津比売命)
カグツチ(軻遇突智、火産霊)とされ。
オキツヒコ・オキツヒメが竈の神で、カグツチが
火の神である。


55かまど神 オリジナルストーリー

健一は悩んでいた。祖父の代から続く中華料理店の三
代目だがこのところ客足が減ってきていた。
なんとか新しい看板メニューを作ろうと試行錯誤して
いたが満足のいく料理ができずにいた。

健一:
ダメだ! 新しいメニューを創作しようとしても思っ
た味にならない。   どうしたらいいんだ!

次の日も、その次の日も店が閉店してから深夜まで新
作料理にチャレンジしていたが成果は出なかった。

そんなある日の晩、疲れ果てた健一が厨房で椅子に座
りうたたねしていると、誰かが声をかけてきた。

かまど神:
おい、おいお前、
そんなところで寝ていると風邪ひくぞ。

健一:
だ、だれだ? え!お前はじいさんの頃からある
かまど神のお面じゃないか。

かまど神:
そうじゃ、この店の厨房にかけられて50年ずっとこ
の店を見てきたかまど神じゃ。
どうやらお前料理に行き詰っているようじゃな。

健一:
ああ、じいさんの代から続くこの店の味、絶対に旨い
それは自信がある。しかし同じ味を真似てるだけでは
進歩がない、最近あきられてしまったのかお客さんが
減ってきているんだ。ここは何とかうちの新しい看板
メニューを作って挽回したいんだ。

かまど神:
なるほどな、しかしお前さん本当に親父さんやお爺さ
んがやってきた料理がきちんと再現できていると思う
か?
ワシが見る限り二人は鉄人と言われるくらいの中華の
達人だった。
中華料理は炎との格闘だ、火加減、温度、時間どれか
一つが悪かったら料理がダメになってしまうんじゃ。

健一:
わかったよ、かまど神。教えてもらう親父もじいさん
もいない、たのむ俺に中華料理の炎の神髄を教えてく
れ。     お願いします!

かまど神:
よく言った!よしそれなら今日は徹夜で特訓だ弱音を
吐くなよ、健一!

こうして健一とかまど神の特訓は朝まで続いた。
そして中華料理の基本とされるチャーハンと代々の看
板メニューのエビのチリソースが出来上がった。

健一:
う、うまい! いままで作れていたと思っていた親父
やじいさんの味には到達できていなかったんだ。
かまど神ありがとう、目が覚めたよ!

妻:
あなた、起きて、風邪ひくわよ。

健一:
え、俺本当に寝ていたのか? でも、、、、
ちゃんとチャーハンとエビチリは出来ている。
夢じゃなかったんだ。

こうして健一の中華料理店は徐々に客足が戻ってきて
繁盛するようになっていった。 
店の厨房のかまど神のお面はあの晩以来しゃべらいが
健一には少し微笑んだ顔になった気がしていた。

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