エピソード53 鎌鼬(かまいたち)
53かまいたち
鎌鼬(かまいたち)は、日本に伝わる妖怪、もしくは
それが起こすとされた怪異である。
つむじ風に乗って現われて人を切りつける。
これに出遭った人は刃物で切られたような鋭い傷を受
けるが、痛みはなく、傷からは血も出ないともされる
人を切って傷つけると考えられた風は、中部・近畿地
方など全国に伝えられており、特に雪深い地方にその
言い伝えが多い。
各地に伝承される鎌鼬は、現象自体は同じだが正体に
ついても説明は一様ではなく、また、つむじ風そのも
のを「かまいたち」と呼ぶ地方も数多くある。
美濃や飛騨の山岳部では鎌鼬は三人の神のようなもの
だと考えられていて、初めの神がぶつかって転ばせ、
二番目の神が切りつけ、三番目の神が薬をつける、
だから痛みが無いのだという。
53 鎌鼬 オリジナルストーリー
飛騨の谷間の道を二人の子供が歩いている、二人は何
やら重そうな風呂敷を背負っていた。
勘太:
おい、風太もう帰ろうよ。ひとっこ一人いないからな
んだかおいら怖くなってきちゃったよ。
風太:
情けないな~勘太は。この間オラの父ちゃんがこの辺
で鎌鼬にあって右の足をケガしたんだ。
それだけじゃない、このところオラたちの里のみんな
が何人もこの道で足をケガしてるんだ。
傷の大きさの割にたいして血も出ないから大けがには
なってないけど、今日こそは鎌鼬を捕まえてもう悪さ
しないようにしてやるんだ。
行くぞ勘太。
勘太:
待ってよ~。
二人が谷間の道のちょうど真ん中の大きな杉の木の前
に来た時だった。
前から一陣の風が吹いてきた。
風太:
きっとこの風だ!
勘太いまだ持ってきたスイカを転がせ!
言われるがままに勘太は風呂敷に入れてきた大きな
スイカを前に転がした。
前を転がって行ったスイカは風に当たった瞬間舞い
上がり、真っ二つに切れた!
そしてきれいに地面に落ちてきた。
勘太:
風太、みてみて!
包丁で切ったよりきれいに切れてるよ!
うーんおいしそう、我慢できないいただきます!
何だこの味スイカの上になんか塗ってある!苦い~
風太:
やっぱり。
良薬は口に苦しって言うだろ。
言い伝え道理だ、鎌鼬は最初のが転ばせ、二番目が
切りつけ、三番目が薬を塗るんだ。
ついついいつもの癖でスイカにまで薬塗っちゃった
んだろう。
よしわかったぞ、さあ来てみろ!
そう言っているとまた前から風が吹いてきた。
今度は風太が風呂敷から何かを転がした。
それは大きな大きなこんにゃく玉だった。
また風が当たるとこんにゃく玉は宙に舞い上がった
が、今度はこんにゃく玉は切れずに落ちてきた。
よく見ると前足が鎌になっているイタチがこんにゃ
く玉と一緒に倒れている。
そしてその横に二匹のイタチが唖然として立ってい
た。
三代:
大丈夫、二次兄ちゃん! くそ~人間たちめ~。
一:
待て三代。二次がいなくては人間には勝てない。
俺はこの鎌鼬の長男ではじめだ、お前達たのむ
弟の二次を殺さないでくれ。
風太:
大丈夫だ別にお前達を殺そうなんて思っちゃいない
よ。ただ、なんで最近里のみんなを襲ったのか聞き
たいんだ。
なんか訳があるんだろ?
一:
昔は里の人達も森の動物たちも、みんな仲良くやっ
てたんだ、でもこの数年里の奴らこの森をどんどん
切り開いて動物たちの住処を奪って行くんだ。
そこで俺達が動物たち皆の代わりに森を切り開く奴
らを脅して追い返してたんだ。
俺達だって無駄に人を傷つけたくないんだ。
風太:
わかったよ。オラが里のみんなに訳を話して必要以
上に森の木を切るのをやめさせるよ。
だからお前達も里のみんなを傷つけないでくれよ。
一:
ありがとう、俺達の願いを聞いてくれて、本当に
ありがとう。
約束のお礼ってわけでは無いのだが三代が持ってい
る秘伝の薬壷をあげるよ。
この薬はどんな切り傷やけどもすぐに直してしまう
優れものなんだ、大事に使ってくれよ。
じゃあな約束守ってくれよ。
二次の鎌をこんにゃくから引き抜いて、三匹は森の
中に帰っていった。
勘太:
よかったな風太。
もう里のみんなもケガしないで済みそうだな。
しかもお土産までもらっちゃったし、でも、、、、
これスイカには合わないよな~。
風太:
勘太お前話、聞いてなかったのか?
こうして里の人々も必要なだけしか森の木を切らず
ケガをする者もいなくなったという。
勘太:
スイカはダメだけど、キュウリならいけるかな~。
風太:
だから勘太、傷薬だって。