【ゆうあいC 入居団体インタビュー④】 『一般社団法人 はるそら』
令和4年度、ゆうあいセンター貸事務所へ新規に入居いただいた8団体について、団体の使命や活動目的をインタビュー形式で、令和5年度にかけて紹介していきます。
今回は第4弾として、「一般社団法人 はるそら」代表理事の多田さん(写真右から2番目)にお話しを伺いました。
ゆうあいくん:多田さん、こんにちは!
さっそくですが、「一般社団法人 はるそら」について教えてください。
多田さん:ゆうあいくん、こんにちは。
はるそらは、認知症・若年性認知症のご本人やそのご家族が「一歩を踏み出す」ため、専門職や、いろんな人が集い語り合い、〝一歩を踏み出すための作戦会議 〟ができる場所です。また、はるそらには、若年性認知症の方やそのご家族など、一歩を踏み出しやすくする仲間や、地域の方とのつながりもあります。
ゆうあいくん:作戦会議というフレーズ。すてきな表現ですね。この「作戦会議の場としてのはるそら」が必要と思われたきっかけを聞かせてください。
多田さん:夫が若年性認知症と診断され、教育費や家のローンといった「お金」の心配、今、問題となっているヤングケアラー(子どもへの負担)のおそれなど、これからの生活に不安を感じていた私自身の「相談する先がわからない」、「サービスに繋がらない」といった経験からです。
ゆうあいくん:多田さんご自身の経験、若年性認知症の介護家族として、「当時、こんな場所があったらよかったのに」をカタチにされたんですね。
では次に、はるそらの活動内容を教えてください。
多田さん:はるそらでは、若年性認知症の方、またその家族の居場所づくりや、診断後の空白期間をなくすための継続的な支援を行っています。主な活動を一つずつ紹介していきます。
【はるそら広場】
・本人が中心となり、自由に話しをし、医療や福祉、介護や暮らしなどの「作戦会議」のできる場として月2回開催。〝ランチ&ボーリング大会〝を行うなど家族交流も深めています。
・多世代交流として、美作短期大学や就実大学での「出張・本人ミーテング」の開催。
【はるそらしゃべり場】
・認知症の本人を支える家族同士が自由に語り、ひとと繋がり、情報交換し、そして元気になる場として月2回開催。
【お出かけイベント】
・家族だけではなかなか行けない場所へ仲間と一緒に出かけ、楽しい時間を過ごす取り組みを行っています。
【はるそらゼミナール】
・認知症に関する情報や知識を専門職だけでなく、本人・家族も一緒に学ぶという取り組みです。これまでに、若年性認知症支援コーディネーター、薬剤師、医療福祉コーディネーターの方等に講師としてお話しいただきました。
【はるそらサロン】
週2日の開催。はるそらは岡山駅から徒歩約12分という便利で分かりやすい場所にあります。認知症のご本人同士の交流、一緒にお昼を食べたり、ゲームを楽しんだりしながら過ごしています。
【認知症ピアサポート事業】
岡山市の委託を受け、2021年12月にスタートした「岡山市認知症ピアサポート活動支援事業」です。認知症ピアサポートとは、本人同士が交流し、情報交換する活動で、ピアサポーター(当事者)が相談者の話しを聴き、自分の体験をもとに支援を行っています。
【講演会・啓発事業】
・認知症の理解促進に向けた啓発活動や講演会を行っています。
【アンケート調査】
2019年には、岡山市との共同事業「認知症の人と家族の支援ニーズに関するアンケート調査」を実施しました。
ゆうあいくん:さまざまな事業を展開されていますね。事業の企画や実施にあたって、はるそらではどんな工夫をされていますか。
多田さん:みんなが〝今、やりたい!〟ことを事業の企画段階から話し合い、知恵を出し合い、一緒に楽しみながら行っています。
例えば、お出かけイベントであれば、はるそら広場での話し合いのなかで「ここに行こう!」を企画して、「下見が必要だよね」って意見が出たら、はるそらメンバーと一緒に、トイレや休憩場所を探しに実際に行ってみます。
そうすることで、当事者の方から、おいしかった食事処や、「Aさんはココを歩くのはしんどいと思うから、別のルートを探したほうが良いよね」といった「気づき」も教えてもらうことができます。
ゆうあいくん:出かけてみたいけど、家族だけでは不安・大変。そんな時、はるそらのイベントに参加することで、家族や仲間と一緒に楽しむことができるんですね。
イベントへの参加も含め、相談したい、サードプレイスとして、定期的に繋がりたい・話しを聴いてもらいたい、想いを共有したいと思ったら、どうすればよいですか。
多田さん:お問合せや、相談ごとがございましたら、最後に記載のある【お問合せ先】にご連絡ください。
ほか、活動の内容は、はるそらホームページで確認いただけますし、イベント案内や活動の様子は、はるそらFacebookを見に来てください。
ゆうあいくん:まずは、気軽に問い合わせてみることができるんですね。
最後に「読者に伝えたいこと」、お願いします。
多田さん:まずは、認知症を正しく知ることが大切だと思います。認知症になると、何もわからなくなるといったマイナスのイメージがあると思いますが、出来ることはたくさんあります。
認知症と診断され、その理解がないままだと、自信を無くして引きこもる、怖くなる、失敗したくない、知られたくないといった思いが家族・地域からの孤立へとつながり、認知症が進みます。出来るだけ早い段階での仲間づくりや、本人にとって信頼できる人とつながることが大切で、家族にとっても、前を向ける話し合いの場、家族同士の交流の場、息抜きができる場が必要だと思います。
また、認知症は「あきらめた時」に進行します。はるそらは、本人に聞いて、本人と一緒に考える。少し背中を押してあげることによって、本人が決断をしやすくするためのサポートができます。
「ここにいても良いと思える、安心できる場所」「仲間と出会い、話すことで自分だけではないと感じた。また来たい!」「楽しいことを考えられて、それができる場所」「本人の笑顔が増えた」「認知症と診断され、使える制度のことを教えてもらえてよかった」。そうした声を励みに、これからも継続した活動としていきたいと思っています。
そして、これまでの活動のなかで私たちが確信したのは、交流の場ができることで認知症と診断されたご本人が元気を取り戻すことができ、家族も前向きになることができるということ。
若年性認知症のご本人が将来に希望を持ち、自分らしく暮らせる社会を実現するために、私たちは支援者の皆さんと一緒に、ご本人の未来への希望を応援していきたいと考えています。
ゆうあいくん:お話しを伺って、「認知症=あきらめ、助けてあげる対象」のマイナスイメージを少しずつ変えていく。人と人とが向き合うこと、語り合うこと、仲間同士で楽しむことの大切さを感じました。本日は貴重なお話しをいただき、ありがとうございました。
【お問合せ先】
一般社団法人 はるそら
住所:〒700-0807 岡山市北区南方2-13-1 きらめきプラザ2階
ゆうあいセンター内【事務所№8】(JR岡山駅から徒歩約12分)
TEL: 086-230-4834
MAIL: harusoraegao@gmail.com
はるそらホームページ
はるそらFacebook
《取材・編集協力、写真提供》
一般社団法人 はるそら [インタビュイー:代表理事 多田 美佳 氏]
《インタビュアー・テキスト》
岡山県ボランティア・NPO活動支援センター(ゆうあいセンター)