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「宙に参る」をマジで読んでほしいという話
表紙がマジでクールで最高な助骨凹介先生の「宙に参る」の発売日になったけどみんなもう買った? https://t.co/HxAl590tnK pic.twitter.com/cOZO5V4fT7
— ud (@youdie) February 26, 2020
今日はトーチWebで連載中の「宙に参る」1巻の発売日です。
ついに出ました。肋骨凹介(あばらぼねへこすけ)先生の待望の単行本が、ついに。
なに知らない?ほら、いいから読め、読むんだよ。3話までなら公式で無料で読めるよ。
いやもう、このマンガ、ちょっと面白さが異常で、読むとなんだか脳みそが気持ちよくなるというすごい体験ができます。やばい。
尖ったセンスとゆるい生活感(と緊張感)
公式のあらすじ引用。
機械やプログラミングに妙に長けている主婦・鵯(ひよどり)ソラは、
病気で亡くなった夫の遺骨を義母に届けるため宇宙へと旅立った。
道中のお供は人工知能を搭載したロボットである息子の宙二郎(ちゅうじろう)。
長期渡航を目的として作られた巨大宇宙船、経由するコロニーやテラフォーミングされた星、
いつか訪れそうな宇宙時代への期待が膨らむ、近未来サイエンス・フィクション。
主婦が病死した夫の遺骨を地球の実家に届けに行くというストーリーなんですが、もう1話のしょっぱなから掴みがものすごい。
葬式の場で誰がどう見てもロボットな物体が息子・喪主を名乗る光景。喪服の夫人(主人公のソラさん)とお坊さんとのギャップがやばい。BONE IN SPACE。
さらにこれ以降のページでは、椅子の上に参列者が表示されたタブレットが並び、それらを頭につけてお焼香を上げるロボットが登場する遠隔葬儀が粛々と行われます。未来すぎる。
そしてそんなロボットたちを作ったのが先述のご夫人・ソラさん。
ソラさんをディスプレイ表示する宙二郎くん。なにこの親子。
こんな具合でSFという武器を振り回す凹介先生のセンスが爆走しており、「なぜそんなの思いつく?!」ってネタが、んもーーーーわんさか出てきます。SFの根源的な楽しさにあふれてる。
個人的に好きなのが、3話「永世中立棋星」で、ソラさんがふとしたきっかけで史上最強の将棋AIをハッキングする時の流れ(何その流れ)
「ぱそぱそ」いいながら古き良きインターネットすぎるチャットシステムを一瞬で構築し、しかもノってくる最強AI。未来なんだか平成なんだか。良すぎる。
そしてすっごい細かいんだけど、この後AIとVR空間で対話するために宙二郎くんがヘッドマウントディスプレイになるんですけど、その時の、この書き文字。
「Calibraッtion」って”ッ”が入ってちょっとローディングが引っかかってる感じ、わかる?すごく良くない?そもそもヘッドマウントディスプレイになる息子ってなに?
このへんのコマが出てくる3話「永世中立棋星」は、単品で非常によくできたSFショートとして読めてヤバいです。マジでヤバイ。ヤバすぎてなんと単行本が出るより先に年刊日本SF傑作選に収録されている。
この話以外もひたすらに新鮮かつ気持ちいいマンガ表現が続々出てくるので、読みながら脳ミソの今まで使ってなかったところが光ってるみたいな感覚になります。斬新な概念を絵と演出で理解させる力が高すぎる。
一方でそんなエッジが利いた表現とは対照的に、ストーリーからぷんぷん香る生活感のギャップよ。
そもそものメインストーリーが「主婦と息子が夫の遺骨を義母に届けに行く話」だし。
他にもやたらおでん屋が出てきたり、ソラさんが元同僚と飲み会してたり、なんかおっさんが飲み会してたり、基本的にすっごいゆるゆるしているんですよね。
久住昌之マンガの主人公か?(このおっさんも割と重要キャラだったりする)
いろいろと型破りなのに、肝心のお話からは溢れ出るものすごい生活感。この尖り具合とゆるゆるした親しみやすさの行き来で読みながらクラクラします。凹介ワールドの気持ちよさに身をゆだねろ。
ただストーリーの方もまったりしているかと思いきや、徐々にソラさんが只の主婦ではないことが示唆され始め、1巻の後半では「おいおいおい」と唸ってしまう展開が待っていたりします。油断できない。
他にもタイトルに込められた意味とかサブタイトルの遊び心だったりとか、とにかく語りたくなる点が本当に尽きない。奥行きがものすごいんですよ。
肋骨凹介先生について
作者の肋骨凹介先生についてもちょっとだけ。
今まで各種インターネットやコミティアでマンガを発表してきた方で、「宙に参る」が商業デビュー作。
この方、使うワードも表現も(先述の通り)とにかくセンスが良く、良すぎて、「センスがいいーーーー!!」と唸らざるを得ないオモシロがそりゃもうポンポン飛び出します。
代表作の一つ「知らないタイプの人」ではまさにそのオモシロセンスがはじけまくってます。
文字通りガチでいろんなことを「知らない」タイプの女性が、いろいろに知らない人特有のリアクションをするシュールな1コママンガです。なんと200本とちょっとある。
知らないタイプの人 その119 pic.twitter.com/9mx8gF6ZWO
— 肋骨凹介@1巻 2/27発売 (@hekosuke) November 8, 2015
カメラは知らなくてもグラタンは知ってる。何も知らないわけじゃないのがミソ。
この作品、1コママンガといいつつ途中からストーリーが発生し、読み終わるときにはちょっとホロリとくるすごいマンガです。小ネタで翻弄してロングスパンでぶっこんでくるスタイルはこのころから確立していたのかもしれない。少しネタバレすると結婚して子供ができて神が出てきます(?)
そうそう。
これは凹介作品で一番大事なことなんですが、知らないタイプの人しかり、ソラさんしかり、ヒロインが主婦かつかわいいというのがあります。
上記以外にもたびたび何とも言えない雰囲気の主婦マンガをツイッターにあげていて、これはおそらく凹介先生の癖(へき)なのではないかと思っています。
ビンのフタをあけるバイトをする主婦 pic.twitter.com/xodJTYKP6X
— 肋骨凹介@1巻 2/27発売 (@hekosuke) May 21, 2017
旦那に内緒で雑誌を縛るバイトをする主婦 pic.twitter.com/6r501jaCWW
— 肋骨凹介@1巻 2/27発売 (@hekosuke) August 27, 2018
謎のいかがわしさがある。
なんだか紹介が最後の最後で変な方向性に行きましたがそれはさておき。
とにもかくにも「宙に参る」、ものすごい面白スコアを叩き出しているマンガなので、みんな今すぐ読むべき。マジで。