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2024年よかったマンガまとめ

お久しぶりのnoteです。

早いもので2024年ももう大晦日ですか。
遅ればせながら今年の良かったものをまとめていきたいと思います。

毎年自分でも一年の振り返りの意味を込めて買ってよかったもの記事を書くようにしてるんですが、今年は趣向を変えてよかった○○という感じでいろいろなジャンルでやっていきたいと思います。

今回はマンガ編。

挙げていくとキリがないので、今年単行本の第一巻が出たものに絞ってやっていきたいと思います。


イズミと竜の図鑑 / 凪水そう

コミックフラッパーで連載中のファンタジー作品。連載開始は2023年なんですが1巻の発売が2月だったのでこの枠で。

というかこのマンガは本当にすごいので絶対にどこかで感想文を書きたかったんですよ。メイドインアビスやダンジョン飯みたいなファンタジーの傑作、個人的にはそれらに並ぶんじゃないかと思ってます

主人公の一人のイズミは編集者。
タイトル通りこの世界に住まう竜について取材して図鑑を編纂する、つまり世界を取材して回るというのが話の大筋。

このマンガの中の一番すごいところが、竜の描き方。
社会に竜という不可思議かつ超常的な生き物が存在したらどうなるか?というシミュレーションがマジでうまい。

冒険者にとっては竜は仕留めれば一攫千金の憧れの存在である一方、ある村では人間たちと奇妙な共生関係を築いていたり、ある国では政治における重要存在だったり……

そしてこれらは同時に我々の現代社会をどこか反映したような目線も含まれているようなところがあるんですよね。眼差しに批評性がある。親近感を覚えつつ胸が痛みつつという……とにかくすごいことをやってるマンガだと思います。

あとは主人公チームは冒険こそするけれどもあくまでメディアなのがいいんですよね。

なぜなら世界の取材が主人公の目的=読者が作中世界の理解度を上げることと目線が合うんですよ。ファンタジーの面白さの一端は知らない世界を理解することだと思うのでうまいやり方、見せ方だと思うし、先述した批評性にも納得感が増す。

それだけ作りこまれてる一方でマンガ自体がすごく読みやすくて、なんというかUIがいいんですよね。マンガに対して適切な表現かわかんないですけど。
絵がうまいだけでなく(めちゃくちゃうまいんですけど)、時折差し込まれるモノローグでもナレーションでもないプロンプト、あれをマンガで表現するの発明だと思う。映像作品のテロップみたいな気持ちよさがあるんですよね。

とにかくあらゆる点ですごくクオリティの高いファンタジーだと思います。ガツンと売れてほしい。

せせせせ!~目指せ初H!童貞女子のときめき大作戦~ / たばよう

ポップでかわいい表紙とタイトルにつられて読むとすごく落ち込むマンガです。

人生がなーんにもうまくいっていなかった男(童貞)がある日突然中学生に戻りなぜか性別まで女の子に変わってしまうという、おいおいエロコメか?となるあらすじ。

さらにはこの童貞、思い切りが良すぎてよくわかんないけど女子中学生だったら今までできなかったセックスが簡単にできるかもしれない!と片っ端からヤれそうな男にアプローチしていくんですけど……

これがぜーんぶうまくいかない。

ちょっとオタクそうな男の子にはドン引きされ、不良っぽいやつにはむしろたしなめられ……

もともと他人との距離感のはかり方とかコミュニケーションが上手ではなかった人間が、性別や属性が変わっただけでうまくいくかというとそんなわけはなく。
女子中学生となったことでむしろその弱みがものすごく強くあぶり出されてしまうという、すごくきっついマンガです。
セックスって対人コミュニケーションの究極みたいなものだし……

ただきっついながらもこれがこの先どんな話になっていくのか全然わからないという引力があって読み進めたくなってしまう恐ろしいマンガです。期待と不安でいうと不安の方がデカいんですが……


たばよう先生は『あゎ菜ちゃんは今日もしあわせ』という新作も今年出ていて、こちらもものすごい。

社会生活がちょっと苦手なコンビニバイトのあゎ菜ちゃん。
特技は「理性を捨てること」。

こっちはこっちで不安がすごいんですが、でもあゎ菜ちゃんはかわいいしきっとしあわせになってほしいと心から思います。

くびしょい勇者 / ツナミノユウ

ツナミノユウ先生の作品はどれも大好きなんですが、今作はとにかく第1話がよかった。

最初連載が告知されたときにまた変なタイトルだなあと思ったんですが、まさかこんなかっこよくタイトルの意味が明らかになるとは思わなかったですね。あれは本当に気持ちい。
今までのツナミノユウ先生で味わったことのないタイプの快感でした。

あんまりあらすじを述べるとその快楽が減っちゃうのでさっぱり目の紹介になっちゃいますが、勇者が魔王を倒したその後の話という昨今定番化しつつあるジャンルもツナミノユウ先生の手にかかるとこうも歪むのか(いい意味で)という気持ちよさがあります。


ツナミノユウ先生の新作といえばもう一作、『女甲冑騎士さんとぼく』も今年単行本発売でしたね。

こちらは青井タイルさんが原作ですが、元々はコミティアなどで発表された同人誌がオリジンです。

自分は同人誌版の頃から大好きだった作品なので、作画がツナミノユウ先生と知って「その手があったか!」と。これ以上ない組み合わせ。

インターネットをし過ぎている人たちはみんな女甲冑騎士さんのまっすぐさと眩さに焼かれていきましょう。

探鉱ドワーフめしをくう。 / 四方井ぬい

2024年はもちづきさんや先述したあゎ菜ちゃんなど強烈な飯マンガがありましたが、こちらはファンタジー飯マンガ。

主人公のルチルはタイトル通り探鉱労働者で、見つければ願いが叶うという天然魔石を掘り当てるために日々頑張っているのですが、作業中の主食はなんと土。要は貧民層です。

ルチルが暮らす街も治安はかなり悪く、ドワーフということもあって鉱山に潜っている方がマシというくらい。おいしい食事とは縁遠い生活です。

それがある時世話になっている「監督」から奢ってもらったおにぎり定食があまりにもおいしくて、初めてといっていいくらい食とおいしさに対して興味を持つことになります。いっぱい稼げばもっとおいしいものが一杯食えるぞと。

……あらすじを追ってみると、かわいい絵柄でマイルドにはなっているものの結構世知辛い話なんですよね。探鉱労働だって命懸けだし、見つかるかわからない魔石を探し続ける将来の見えない若者の話だし。
そしてその境遇ゆえに食マンガにも関わらず主人公の食への興味と理解度が本物のゼロからのスタートという。

でもご飯のおいしさに素直な反応を示すルチルの純粋さや、食事を通じて少しずつ世界に対して希望を見出していく様がとても暖かく、しんどさの中に優しさを感じる作品です。

あとは出てくるファンタジー飯もいいですよね。
3話に出てくる貝殻パスタはこれ実際に食べてみたいけど現実ではできなさそう!のやつです。今読み返しながら腹減ってきた。

1巻で一応話として区切りがついていますが、連載継続ということで続刊が予定されているみたいなので続きが楽しみです。

知恵ある恋人 / 中野でいち

中野でいち先生のマンガはずっと好きなんですが、今作はかなりエポックメイキングというか、確実に今までの中でも特異点になる作品なんじゃないかと思っています。

主人公の二人、牛留くんと白樺さんはクラスの成績優秀な学級委員。
放課後は教室の戸締りを兼ねて二人きりの勉強会をするという、周りから見ればもう付き合う寸前の二人。

ところがそこはお堅い学級委員。
恋愛にうつつを抜かすのは学生の本分ではない!まして生徒の模範たる学級委員ならなおのこと!!

……とまあハチャメチャにお互い意識をしまくってるにもかかわらず立場と建前のせいでなかなか一歩が踏み出せずにいるというラブコメ展開。

だったんですが。

ある日からふとしたきっかけで「これは勉強の休憩の効率を上げるための合理的な行動」と理由をつけて、スキンシップが始まってしまいます。

最初は手を握るだけ。
それが徐々にエスカレートして……

真面目な学級委員をやってきたはずなのにお互いのことが気になってあれやこれやと煩悩にまみれてるうちに勉強にも手がつかなくなって……という自分のあるべき姿となりたい関係性に苦悩する男女が描かれる作品です。

中野でいち作品の頻出テーマとして欲望、特に性欲との向き合い方というのがあり、今作もその流れを汲んでいます。

ただ湿度が段違いに高い。

これまでの作品だともう少し遠巻きというか、ある程度客観的だったり少し距離感を持って描かれていたと思うんですけど、言ってしまえば今作はすごくえっちなんです。

絵的にもカメラの位置がより人物に近いんじゃないかと思います。成人向けマンガみたいな距離感。中野先生連載媒体を快楽天と間違えてませんか?(楽園 Le ParadisのWeb増刊で連載中)

もともとコミティア向け同人誌として発表された短編がベースなのもあって、あとがきでもこの後どうなるか未知数と語られている二人の関係性がどこまでエスカレートしてしまうのか。今ものすごく続きが気になっている作品です。

ラブ・バレット / inee

このマンガの絵がめちゃくちゃ好き2024。

いやもう絵が最高にいいです。
すばらしい。

恋を知る前に死んでしまった子たちが恋のキューピッドとして蘇り、人間たちの恋を成就させていくというお話なんですが、現代のキューピッドの得物は弓矢ではなく銃器
しかも恋愛をいっぱい成就させてポイントをためれば人間として蘇ることができるという特典付き。
つまり誰が最も恋を成就させられるかを争う銃撃戦が繰り広げられるマンガというわけです。

ガンアクションマンガでありながらすごくかわいくて切ない話を繰り広げるというこのギャップ感がたまらない。

そして繰り返しになるんですけど本当に絵がいい。
キューピッドたちのかわいさだけでなく、銃撃戦など戦闘のアクションシーンがしっかり迫力満点。

そして銃で打ち抜く=恋愛成就の瞬間でもあるわけで、アクションの爽快感と恋が成ることの幸福感が同時に発生する。これが本当に気持ちい。
連載の元となった読切改め第0話の見開きがまさにこれで、自分は完全に撃ち抜かれました。

ちなみに今作の作者のinee先生はなんとアメリカ在住。翻訳周りは出版社側がバックアップしているらしいのですが、それでも全く違和感なく日本のマンガとして読めちゃうからすごい。
この辺りの作者のバックグラウンドや制作の背景はこちらのインタビューが詳しいです。

おまけ(完結作品)

本当は完結巻が出た作品についても書きたかったんですけど思いのほか文字数が多くなったのでさくっと一言感想だけまとめます。

よふかしのうた / コトヤマ

万感の最終回。コトヤマ先生は簡単にキャラ同士の恋愛を成立させてくれないからひどい。ずるい。ありがとう。

好きな子がめがねを忘れた / 藤近小梅

こんなにも単行本読むたびに息切れするラブコメは今作以外なかった。最終巻も読み終わるまで5回くらい休憩が必要だった。本当によかった。

あだち勉物語 ~あだち充を漫画家にした男~ /ありま猛

陳腐な感想で申し訳ないけどもうボロ泣きしました。これはありま猛先生以外には絶対に描けなかったマンガ。昭和マンガ史の一部分を切り抜いたという面でも意義ある作品だったと思う。

僕のヒーローアカデミア / 堀越 耕平

ヒロアカの第1話は未だにジャンプで一番おもしろい第1話だと思っていて、あとがきで堀越先生自身がそれをいかに超えていくかに苦悩し続けたと語ってて、そのプレッシャーの中見事に最後まで描き上げてくれて心から感謝。ヒーローの功罪への明確な回答って存在しない、というか考え続けなきゃいけないことだと思うんだけど、今作はその偉大なヒントの一つたりうる作品になったのではないかと思う。

レッツゴー怪奇組 /ビュー

新プロジェクトの続報、待ってます。まだまだメチャ子に会いたいよ。


以上です。
全部これくらいコンパクトでもよかったかも。

来年もいろいろマンガを読みたいですね。では。

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