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島崎藤村「破戒」

島崎藤村の『破戒』は、日本文学の名作のひとつであり、特に「差別」というテーマを正面から扱った作品として知られています。この小説は藤村のデビュー作でありながら、主人公が背負う「穢多(えた)」という被差別階級への苦悩を描き、明治期に生きた人々の視点から差別の問題を浮き彫りにしています。私も彼の晩年の名作『夜明け前』を読んだ後に改めてこの作品に触れ、その奥深さに感銘を受けました。

『破戒』は、登場人物の会話が多く、リズミカルに進んでいくため、意外に読みやすいのが特徴です。しかし、『夜明け前』に比べると、描写や考証の細かさに少し物足りなさを感じることも事実です。差別を取り巻く描写に関しても、明治期のリアルな視点からもう少し踏み込んでほしいという期待もありましたが、初期作品らしい素朴な表現に藤村の葛藤が滲んでいます。

この小説を通して改めて考えさせられるのは、「なぜ人間は差別をしてしまうのか?」という問いです。実は、差別はどの社会でも歴史的に見られる現象であり、集団生活を営む人間にとって自然に発生してしまう側面もあるのかもしれません。「差別は悪い」と教えられ、現代の私たちはその意識が強いですが、だからこそ「差別」に関する議論や考察を避けてしまいがちです。

しかし、子育てや職場など、人生のどこかで「差別」について向き合わざるを得ない場面が訪れることもあります。私たちが子どもにこの問題をどう教えるか、あるいは自分自身がどう向き合っていくか――それは私たち一人ひとりが考えるべき課題です。

『破戒』を読みながら、藤村が見つめた「人間らしさ」とその弱さに触れることで、私たちはよりよい未来を考えるための一歩を踏み出せるのではないでしょうか。

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