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生理は人生のパートナーと言うけれど

  ヤーズの服用を再開すべきなのかなと思った。


  私は母親からの遺伝の関係も(おそらく)あって、月経に伴う症状が生活に支障をきたすレベルの女性だ。そんな私の身体のこの症状には『月経困難症』という名前がついている。月経困難症かどうかは「月経に伴う症状(生理痛、倦怠感、眠気、情緒の乱れなど)が生活に支障をきたすレベル」という判断基準らしい。私は生理の度に、脂汗の出る程の激しい腹痛、腰痛、太腿の筋肉の炎症による筋肉痛、抗えないレベルの眠気、普段の自分と比べた時に異常なまでの精神不安定などによって、学校を休むことが何度もあった。中学までは、家が近かったこともあり、早退や遅刻などが多く、欠席は特に多くはなかったのだけれども、高校では校風に馴染めなかったストレスと家から遠かったことで、一気に欠席数が減った。24日間に1回、平均して5日連続で寝込む日々が続いた。それが登校日に被れば、もちろん学校を欠席する他なかった。
  高校では精神的なストレスがとても大きく、それに伴う体調不良によって、生理以外の日も休みが多かった。生理中も、頑張って学校に行って、たどり着く前に動けなくなってしまったらと考えると、無理して学校へ向かうことが出来なかった。実際に、学校へ向かうバスの中でだんだんと体調が悪くなり、学校に着いたらそのまま保健室に向かって、2時間休んで何も授業を受けずに帰ったこともある。まぁそんなこんなで、ついに高校2年生の時に、出席日数が足りなくて進級出来ないかもしれないと言われた。我が家は母子家庭で当時はまだ非課税世帯だったので、高校は奨学金を借りながら通っていた。そのため、卒業出来ないのはいけないということで、踏ん切りがついて地元のレディースクリニックを受診した。

  そこのレディースクリニックを受診したのは、実はその時が初めてではない。小学6年生の時、アメリカに姉妹都市交流でホームステイする際に、夏だったので向こうで生理が来てしまったらプールや海に入れないことや、何よりも慣れない環境での生理というのは何かと怖いということで、渡米期間生理を止めるために母が受診させてくれた。しかしそれから約6年の年月が経っていた。当時は産婦人科という名目だった医院も、レディースクリニックと名前を変え、当時の診察券はもう使えないと、新しく作り替えさせられた。小学生当時もあまりよくは分かっていなかったが、高校生の私はその「よく分からない」ということがとても恐怖だった。それに、自分の月経に伴う症状を「病気」と銘打ってしまうことが、なんとなく不安だった。そんな私の不安を他所に、当時の担当医は問診であっさりと私を「月経困難症」と診断し、ヤーズを処方してくれた。
  ヤーズとは正式には「ヤーズフレックス配合薬」と言う低容量ピルの一種で、避妊用に用いられる低容量ピルよりもさらに容量の少ない、言うなれば「超低用量ピル」と言ったところだ。超低用量とは言え、仕組みは避妊用の低容量ピルと何ら変わらない。ピルを用いて卵胞ホルモンと黄体ホルモン、すなわち女性ホルモンを体外的に投入することで、身体を妊娠時と同じ状態にし排卵を抑えるというシステムになっている。(と、当時の担当医から説明を受けた。)排卵を抑えることで、子宮内膜(胎盤(経血として月経時に剥がれ落ちるもの)の一部になる部分)が分厚くなるのを防いで、様々な症状を抑えるというものだ。(ここで書いたのは私の記憶と、ササッと調べた程度の知識でしかないので、正しくは産婦人科医の先生に聞くか、ご自身で調べてください。)排卵を抑える以上、避妊効果もあるし、もちろん生理も来ない。ただ避妊用の薬では無いので、避妊目的での服用なら控えるようにと言われた。
  さて、自分の話に戻ろう。あまりにもあっさりと月経困難症と診断されてしまったので、私は面食らっていた。だが、先生曰く「あなたは完全に月経困難症だね」とのこと。どうやら症状が相当酷かったらしい。ここまででなくとも、月経に伴う症状によって、普段と同じ生活が出来なくなる状態の女性は皆、月経困難症であるらしい。月経困難症の他に、生理前の症状が酷いタイプの月経前症候群であったり、子宮内膜の炎症によって激しい生理痛を引き起こしている子宮内膜症など、日本人の多くの女性は月経に関する何かしらの病気に罹っているらしい。みんな我慢しているんだからと自分も頑張ってきていたが、とても馬鹿らしい。みんなだいぶヤバい状況だったということだ。みんな我慢しているから自分も我慢しようじゃなくて、みんな我慢しているからみんなで受診しよう。割と生活が楽になる人は多いだろうし、病気の早期発見に繋がるので、女性の皆さんはぜひ。

  ええ。それで私は、ヤーズの服用を開始した。私は28日周期のものを服用していた。(気がする。)24日間本当に成分のある薬を飲み、残りの4日間はただのデンプンの塊である偽薬を飲む。(一般的な28日周期のピルは偽薬は7日分と書かれていることが多いが、何故か私が処方されていたのは偽薬が4日分のものだった。)これは、毎日決まった時間に服用する習慣を定着させるためだと母が言っていた。(母も私が幼い頃には低容量ピルを服用していたので、私のヤーズ服用に際してとても協力してくれた。)で、まぁ私は、毎晩夕食後に飲んでいました。
  ヤーズを服用し始めて、確かに生理は(排卵が起きていないので正確には月経とは違うが)規則的になったし、痛みや倦怠感や情緒も安定したような気はする。もう1年以上経つので、あまり感覚は覚えていない。確かにだいぶ楽になったし、偽薬を服用する休薬期間は予め出血することが分かっているので、下着を汚すこともなく、その点とても扱いやすかったことは確かだ。

  しかし、それでも私は高校卒業を期にヤーズの服用を終わりにした。
  高校を卒業した2019年の3月は、ちょうどヤーズ服用から1年の月だった。私の通っていた医院では、低容量ピルの服用者には半年に一回の血液検査と、子宮頸癌検査が義務付けられていた。ピルの副作用として、血液をドロドロにするというのがあり、血栓が出来ていないかを調べるために血液検査はする。子宮頸癌に関しては、治療のためとは言えピルを飲み始めると、コンドームをせずに性交渉する人が増え、低容量ピル服用者の子宮頸癌発症率が高まるからだ。子宮頸癌検査は、子宮の内壁から削り取った細胞を調べる。この削り取る作業が怖いし、痛い。私はコンドームをしないで性交渉なんてことはしないから、子宮頸癌になんてかかるわけがなかったのだけれど、医院の決まりだったからしょうがなかった。当時服用を辞めた時は、迫り来る子宮頸癌検査が嫌すぎてヤーズを飲むのを辞めたいと駄々を捏ねる私に、母が「嫌なら辞めれば良いじゃん」と言ったのが理由だった。元々出席日数のために飲み始めたので、卒業してしまえばもう必要ないんだと思って、勢いで辞めてしまった。しかし、それ以外にもヤーズの服用に消極的になった理由がある。
  1つ目。先にも書いた通り、ピルには血をドロドロにする副作用がある。それがどういうことかと言うと、脳梗塞や心筋梗塞、肺塞栓などの命に関わる血栓症を引き起こす可能性を孕んでいるということだ。過去には実際に死亡例もある。私は元々血管が細く、詰まりやすいと言われていたために、とても神経質になったし、「血栓が出来たら最悪死ぬ」という事実がとても怖かったです。また血がドロドロになることで血行が悪くなり、ただでさえ浮腫みやすい体質なのにさらに浮腫みやすくなるということもあって、身体のメンテナンスにとても気を使った。2つ目に、ヤーズを飲んだところで、別に症状は楽にならなかったからだ。確かに症状自体は、数字で表せば9くらいは下がった。服用前を10とすると、服用後は1くらいまで落ち着いた気がする。ただ体感としては、10,000が9,991に下がったくらいの体感だった。いやもうここまで来たら大して変わらん。変わらずしんどかった。そして3つ目は、純粋に毎日決まった時間に飲むの大変。そもそもが習慣的に何かをコツコツやるのが苦手な人間なのに、薬を毎日同じ時間になんて飲めるわけがない。ピルは基本、1日までだったら飲み忘れても取り返すことが出来る。が、本当はあまり良くない。また、休薬期間が目で見て分かる以上、それ以外の時に出血すると不正出血と言われ、担当医の先生が顔色を変えるので、何か重い病気なのかもしれないと不安になった。
  とにかく、負担が大きかったのだ。精神的な負担がとても増えたのに、身体的負担はあまり減らなかったのだ。だから辞めた。


  元々私は、体調悪い時に頑張って何かをするために薬を服用することに抵抗がある。体調が悪い時は休むべきだし、身体を労るべきだから体調が悪くなっているわけだし、とにかくそういう日本人の社畜精神があまり受け入れられない。休息する上で、症状を楽にするために薬を飲むならまだしも、しんどい時に頑張るなよ。休めや。それにそもそも、何かしらの症状を薬で抑えるのもあまり好きではない。これは私の母の教育方針の影響も大いにあるが、症状は自然治癒を第一に考える。何故なら、自分の生活と体内は全て繋がっていて、体調が崩れるということは生活の中の何かが身体にとって良くないということで、身体はその原因となる「何か」を改善させるために症状を起こしてるのに、それを薬で治めてしまってはなんの解決にもなっていない。それに、その「症状」は体内の防衛本能が必死に戦っている証だからだ。症状を薬で抑えることで、その防衛本能の働きが万全に行われなくなるということがあるような気がするのだ。(あくまで気がするだけで、あくまで私の感性、主義なだけで、それを強制する旨の文ではないので悪しからず。)
  だから、頑張って身体をこき使うために薬を使うのは、なんだかネガティブな生き方じゃないかと思って、私はもっと、ポジティブに生きたいと思って、服用を辞めたのだ。発展した医療や科学は、自分の身体や人生を追い込むためではなく、より良くするために活用したい。だから、薬を飲まないと動けないような時は動かない。そういう生き方がしたいのだ。社会人になれば、出席日数など気にしなくて良い。ある程度自分の休日を自分で管理することが出来る。だから、ヤーズを飲むことなんて辞めてしまえ。そう思って辞めた。

  それを最近また、服用を再開した方が良いのかなと考え始めた。何故なら、単純に、仕事がしづらいからだ。予めルナルナで生理日を予想して、その周辺を避けて仕事を入れることは出来る。でも、稽古となればそうはいかないし、もっと自分が1人の俳優として求められ始めた時、それではやって行けなくなる。それに、私が生理で休んでる期間、他の同業者たちは現場に出て仕事をしている。毎月休まなきゃいけない期間を持つことは、圧倒的に不利になる。迷惑をかけることにもなるかもしれない。それだったらまたヤーズを飲んだ方が良いのではと思う。
  そこまで考えて思い留まる。いや、だから、体調不良でも無理しなきゃいけない社会がおかしいんじゃないの??生理なんて女性はみんな一定期間で来るのに、それによって不利になる社会がおかしいんじゃないの???それを変えていかなきゃいけないんじゃないの????そのために自分から動き始めなきゃいけないんじゃないの?????そう思い直すんです。でも、そんな社会がおかしいからなんだって言うんだ。それでも私はその「社会」で生きていかなきゃいけないし、その「社会」の基準で私は評価されるんだ。だったら社会がおかしいとか、そんなこと言ってられないんじゃないか。自分含め、誰かの生きやすさを得ることよりも、自分の評価だけが落ちることが怖い。自他の得より、自分の損の方が怖い。やっぱり私だって人間だし、まだたったの19歳だし、そんな人生達観できてないし、そんな勇敢なことを出来るほど強くはない。だけども、そうやって自分の心身の声に耳を傾けないで生きることは、自分を蔑ろにしているような気がして嫌なんだ。私は私を大事に生きていきたいんだ。だけどそれはとても難しい。
  月経に伴う症状は、改善の予知がある。月経困難症完治とまではいかないかもしれないが、身体を温めたり血行を良くしたり、普段からしっかり睡眠をとったり、自分の心との向き合い方を学んだり。体質改善とかでだいぶ変化はある。実際に、高校を卒業して精神的ストレスが軽減したためか、今年度は生理がだいぶ軽くなった。だからきっと、頑張れば、もっと楽に、症状を軽くすることが出来るのかもしれない。でもそれにはお金がかかる。労力がいる。とても大変だ。やっぱり仕事出来る時間は減るだろうし、自分の趣味も制限される。(誰にだって我慢しているものくらいあるのだろうが、)なんで私だけこんな苦労をしなくちゃいけないんだと、被害者意識を抱いてしまう。私がこんな体質じゃなければ、女の子に生まれなければ...。そうやってたらればを考えて、絶望感に浸ってしまう。そんなことしてたって何も解決しないから、ひたすらにちょっとずつやっていくしかない。それでも疲れた時にふと、被害者になろうとしてしまう自分がいる。

  「生理は人生のパートナー」だなんて、前に何かの記事で読んだけれど、こんなにも自分の足を引っ張る厄介なもの。そう思ってしまうことが悲しい。私の身体も思考も感情も、全て私のためにあって、全て私自身で、全て私の一部で、だからこの「月経困難症」だって自分の一部なのに、それを疎ましく思ってしまう事実がとても悲しい。そんなことを言ったって、私はこの状況で生きていかなきゃいけないんだから、どうにかするしかないんだけど、それでも、考え続けるのは大変だし、人生をより良くしようとし続けるのはなかなかに疲れる。きっと妥協をすることが大事なんだ。人生ってものは。だけども私は、ここでは妥協をしたくない。だから考える。どうするのが自分にとって一番快適か。ちゃんと生活を見直して、楽しく楽に健康になっていけるように、まだまだ頑張る。
  ヤーズを再開することに関しては、やっぱり今はまだ積極的にはなれないから、まずは体質改善、生活改善。脳みそと、無意識と、意識と高意識と仲良くなって、もっと楽に生きていこう。生理は人生のパートナーと言うけれど、パートナーなんかではなく、自分自身の一要素なのだから、切っても切り離せないし、自分を変えることでしかどうにもならない。とりあえずしばらくは、身体は頑張らずに頑張って、自分との付き合い方を模索することが第一かな。

  うん。どうすれば良いのか分からなくて書き始めたけど、書いてたらなんか、答えが出ちゃった。
  とりあえず、やってみよ。


伊波悠希

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